桜吹雪の舞う中、上野の文化会館へ。入口のパンダの写真だけ見て、(パンダを見に行く時間は無かった)大ホールへ向かった。今日は大きな余震は感じなかった。無事上演されてほっとした。
東京バレエ団「ラ・バヤデール」4月14日。
(良かったので、(余震が心配だけど)まだ、土日公演があるので、バレエ好きは、気が向いたら、どうぞお運びください。)
個人的には小出さんのニキヤが素敵だった。コールドにも前半、いちいち感動した。
ゲストのゼレンスキー、17日には、もっと調子を上げてくるのでは?と。
もしかして、無理目の日程を押して来てくれた?のかもしれない。
初日のゴールディングのような、若さの魅力はないけれど、今の若手に無い、元大バレエ団の大物スターの貫録を持ったダンサー。ゼレンスキーの,ソロのジャンプや回転技は、ただ体力だけの、技術だけの踊りと違い、バレエ芸術の底力を感じさせてくれるもの。
急な代役で、本領発揮には至らずとも、17日には、シムキンを筆頭とする今の若手にはない、昔のスターの威力を見せてくれるかも。(17日に行く人、まちがってたらごめんなさい)
小出・ゼレンスキー ペアは、パートナーシップはまあまあ。腰回す時、いまいち。
コールドは、2幕影の王国、上手だけど、音楽とアームスの使う間合いの合わせ方、踊り方を少し変えた方が、観客のインプレッションをもっと良く出来ると、惜しまれた。
田中さんも検討。花のある奈良さんの降板が惜しまれた。
ニキヤ:小出領子
ソロル:イーゴリ・ゼレンスキー
ガムザッティ:田中結子
ハイ・ブラーミン:柄本武尊
ラジャ:木村和夫
マグダヴェーヤ:松下裕次
ブロンズ像:井上良太
ジャンベの踊り:西村真由美/乾友子
第1ヴァリエーション:岸本夏未
第2ヴァリエーション:佐伯知香
第3ヴァリエーション:乾友子
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
(以下は、長い与太話。読みたい人だけつきあってください)
小出領子の清冽なニキヤに、感動した。
1幕、例えば火の傍で、長い腕を煽るように振る動き一つとっても美しく、かつ動きの中に思いが滲む。大げさな演技は無いが、(実生活ではすでに結婚しているせいか)、アダージョでの愛の喜びも、全身から自然に滲む。
以前観た時は、「天性の舞い手」と思った。観る者の脳にアルファ派を起こすような、舞踊の音楽性から踊る喜びを伝えられる踊り手、と思った。
だが、今回は、舞踊の音楽性以上に、動きからも演技からも、ニキヤの思いや人となりが伝わってくる、内面性のある演技と、「出」の素晴らしさ、3幕でゼレンスキーと同じ高さ・滞空時間のあるジャンプを複数跳ぶなど、技術の高さと、手抜きの無いディテールまで丁寧な踊りに、感服した。
1幕2場の悲しみのソロでは、涙した。私は小出さんに釘づけで、ゼレンスキーらを全く見られなかった。(オブジャニコフ指揮の、すすりなくような演奏が、劇的効果をあげたせいもある。)
最終幕での婚礼シーンに現れた、白いハーレムパンツ姿の、幻影のニキヤ。180度開脚の高く美しいグランジュテ。跳びながら、顔は一瞬、ソロルの方を振り返る。そのジャンプ姿と一瞥が、脳裏に焼きついた時、また涙が出た。
客席側からは、よく踊りこんで、役作りも万全に見えた。
色んなニキヤがあるけれど、小出さんのニキヤは、かなり巫女っぽい。1幕では、心清らかで、ずっと聖なる火を守る、俗世から離れた暮らしをしている女性に見えた。
そして3幕の最後のジュテでは、ソロルの心の中の世界では、妖精のような、小鳥のようなニキヤなのでは、と思った。穢れを知らない無垢さが、心に残った。
もっと女女したニキヤもいるし、恋愛劇としてもっと濃いのも良いけれど。色々なニキヤがあって面白い。
それと、小出さんは、登場の時の、空気の纏い方がとてもいい。
3幕で、婚礼の儀式に突如幻影として現れた時、はっとなった。役者、舞台アーティストにとって「出」ってのは、すごく大事なんだけど。そういう事が出来る人。
ただし、美人系じゃなく、フェニーフェイス系なので、顔が美人なプリマが好きな人むきじゃないかもだし、まだキャリア半ばで、スターのカリスマ性が凄くあるわけじゃないから。プリマの好みは好き好きなので、違う意見もあると思う。
主役として場数増えれば、さらに存在感が増すと思う。そうなる道筋で、怪我だけは注意して、貴重な才能を地道に飛躍させてほしいと思った。
また、直前に英国ロイヤルバレエ「バヤデール」で、同演目を観た為、前半は、東京バレエ団のソリスト・コールドの、クラシックバレエの水準が、ロイヤルより高いので、(意外に思う人もいると思うけど。実際に舞台見ると、どう見ても東京バレエ団の方が、技術的な水準は上だった。
てか、もう、体見れば分るって感じ。ロイヤルのコールドの人の体型って、胴が太いとか、脚の筋肉の付き方やラインとか、体つきが、さほどバレリーナっぽく見えない。ロイヤルは、純クラ専門のバレエ団でもないし、色々やるから、あれはあれでいいのではないかと。)
ロイヤルを見た後なせいか、まず、1幕2場の群舞の若手男性たちのイキのいいジャンプの高さが良く見えた。昔の某外来バレエなら、あの位跳んでも、驚かないんだけど。
女性たちも、脚上げキープの位置も高いし、基本的な所が、ロイヤルよりしっかりしてる。
(純クラとしては、東京バレエ団がレベル高いとかどうとかいうより、ロイヤルのコールドの水準が低いのだろうけど。私が日本の他バレエ団をくまなく見てるわけじゃないから、日本国内で見たらどうなのかは分らない。)
1幕2場、ガムザッティの田中さんは、バランスを見せてくれたし。
ロイヤルのマリアネラ・ヌュネスは、これはやってなかった。別にやらなくてもいいのかも?しれないけど。
東京バレエ団のコールドは、2幕影の王国の白いバレエの見せ場よりも、チュチュ以外のシーン、例えば3幕婚礼を祝うキャンドルダンスの前後とか、ハーレムパンツとかの衣装などでおこなう整列その他の何でもないような集団の動き、踊りに、ハッとするような所がある。
集団全体で何かを表してるような表現に向いてると思う。これは、ロイヤルにも、他のバレエ団でも、古典系バレエ団ではさほど感じない(ボリショイのスパルタクスとかロミジュリとかを除けば)特性で、やっぱ、ベジャールバレエとかをやってる影響かしら?と思った。
ちょっと興味持った。
公演全体は、途中までは良かったけど、小出・ゼレンスキーペアは急造で、或いはゼレ氏が時差でも残ってたのか、資質か、二人のデュエットに(仕方ない事だが)交流が無かった事、セレ氏の表現に愛が薄かった事、そして公演全体の勘所をちょっと外したかなと思う箇所があって、(影の王国の踊り方、曲と踊りのテンポとか)内容が良い割に、欲を言えば損してる所もあったと思う。
それでも、この余震の残る中、この舞台の上演に立ち会う事が出来て、良かった。その意味で満足の行く公演でした。
ブロンズ像の人、ジャンプ高く、ポーズがきれい。後半の回転でやや軸がずれたのは御愛嬌。
ガム役田中さん、居丈高すぎない、日本人女性らしいガムザッティで、1幕では、ニキヤとガムザッティの両方に、それなりに共感できた。衣装系について。3幕の婚礼時の金の被りものは、もっと見栄えの良いものに変えてあげた方がいいと思う。
田中さんは、3幕の表情がトーンダウンで、ソロルと二人、結婚式の頃にはもう冷めてるカップルみたいだった。2夜連続出演でよくがんばってた反面、仕方ない事だけど、降板した奈良さんは、特に3幕は、ここが彼女なら、もっと華が出せたと思い降板が惜しまれた。田中さんは1幕は良かったと思う。
ゼレンスキー。
1幕と3幕で、年齢が5歳は違って見えた。この人に関しては、14日より17日に観れば良かったと思う。くやしい。
この方は、インタビューで、前の仕事のすぐ後で、オファー受けるかどうか迷ったというから、スケジュール的に完調でなかったとか、そんな所かな?と思う。
1幕の印象:老けた。猫背。見かけも内面性も、青年に見えない。てか、「素」が見えすぎ。
この舞台に立ってて楽しくないのかな?と邪推したくなるような表情。踊りも抜いてる感じ。
(プロとして、体は大事だし、公演は成功だから、むしろこれでいいのだと思う。上演中にだんだんウォームアップして、調子を上げていった感じ。)気になったのは、サポートが・・えらく雑に見えた事。やっぱりコンディションの反映か?リフトでおろす時、1幕ではかなりNGだったけど、3幕では普通にちゃんとおろしてた。リフトそのものは、体に負担かからないように上げすぎずすぐおろす。
組んで踊るバレリーナは二人とも踊りにくそうに見えた。ゼレ氏の不調か、実力か。
ゼレンスキーの本領は、ソロらしい。かなり省エネな踊りだったけど。
中盤、後半、だんだん調子を上げてきて、ちょっと1つジャンプ跳んだだけでも、空間を支配するその存在感で、すぐに観客に自分を印象付けることができる。
振付と違うことやる(振りを抜く)踊り方が常態化してるダンサーだけど、その少ない踊りの、ピンポイントの技術だけで、大きく空間を支配する、その伸びやかな飛翔により、振付通り踊らなくても観客をわくわくさせたり、興奮させたりできる、得な人。
それと、振付通りでないなりに、ゼレンスキーなりのサービス?なのか、なんなのか、テクニックのヴァリエーションがいくつかある模様で、全3幕の中で、同じ技術でなく、違う技術を見せてくれた。同じジャンプでも、ディテール変えてたりとか。それなりに面白かった。
例えば影の王国のGPPD後半で、クベ・ジュテ・アントールナンをやってたし。逆に普通のマネージュは、低く跳んで、足は180度開脚で、長く宙に浮くとか。コーダの最後にニキヤの後を走りジャンプして消える時のジャンプは、後ろ足の角度のつけ方が、前と違うとか。
年齢考慮のピンポイント見せ踊りで、若い頃のようには踊れそうにないけど。
小出さんが好みじゃない人でも、ゼレンスキーの個人芸は、お金払う価値は、多分あると思う。
ただ、「プリマ食い」の資質のある人のようで、上手くないサポートで足を引っ張り、プリマと交互に行うグラン・パドドウのソロで、自分だけ次元の違う空間支配力のあるジャンプや回転技を見せつけるので、バレリーナにとっては、この人はどうかなあ…。
以前見た時、相手役が好きなバレリーナだったらしく、全くパートナーリングが違った為、ゼレンスキーにソロの個人芸以上の舞台を求めたいなら、彼の好みのきれいなバレリーナでないと、真のパートナーシップは見られない、とか?、と思った。
それとも、彼にとっての初日で、まだエンジン立ちあがってなかったかしら。
ソロルの表面的な演技内容を言えば、シンプル。そんなにガムザッティに心を動かされてないみたいで、あんまり3角関係っぽくない役作り。でも、1幕の田中さんの「憧れ~」の目線とか、小出さんとか、演技はゼレンスキーをみてるより、彼女たちを見てる方が面白かった。アップで表情観るより、踊りの爽快感を楽しみたいダンサー。ジャンプの着地であまり音しないのキープ。
あと、ゼレ氏はマリインスキーの出身だけに、完調でないなりに、さっとアームスを振り上げた時とか、田中さんより腕の動きがきれいで優雅で感心した。田中さんだって悪くないんだけど。((小出さんは、このゼレ氏にまけじと、影の王国のコーダで高速シェネで、切れ出してた。
競い合いっぽいパドドゥだった。これはこれで面白かった。)
ゼレンスキー持込みの、3幕の白い衣装は、良く似合っていて好印象。元々のこの版のソロルの衣装は、ゼレンスキーに似あいそうになかったから、持込みで良かった。
東京バレエ団「ラ・バヤデール」4月14日。
(良かったので、(余震が心配だけど)まだ、土日公演があるので、バレエ好きは、気が向いたら、どうぞお運びください。)
個人的には小出さんのニキヤが素敵だった。コールドにも前半、いちいち感動した。
ゲストのゼレンスキー、17日には、もっと調子を上げてくるのでは?と。
もしかして、無理目の日程を押して来てくれた?のかもしれない。
初日のゴールディングのような、若さの魅力はないけれど、今の若手に無い、元大バレエ団の大物スターの貫録を持ったダンサー。ゼレンスキーの,ソロのジャンプや回転技は、ただ体力だけの、技術だけの踊りと違い、バレエ芸術の底力を感じさせてくれるもの。
急な代役で、本領発揮には至らずとも、17日には、シムキンを筆頭とする今の若手にはない、昔のスターの威力を見せてくれるかも。(17日に行く人、まちがってたらごめんなさい)
小出・ゼレンスキー ペアは、パートナーシップはまあまあ。腰回す時、いまいち。
コールドは、2幕影の王国、上手だけど、音楽とアームスの使う間合いの合わせ方、踊り方を少し変えた方が、観客のインプレッションをもっと良く出来ると、惜しまれた。
田中さんも検討。花のある奈良さんの降板が惜しまれた。
ニキヤ:小出領子
ソロル:イーゴリ・ゼレンスキー
ガムザッティ:田中結子
ハイ・ブラーミン:柄本武尊
ラジャ:木村和夫
マグダヴェーヤ:松下裕次
ブロンズ像:井上良太
ジャンベの踊り:西村真由美/乾友子
第1ヴァリエーション:岸本夏未
第2ヴァリエーション:佐伯知香
第3ヴァリエーション:乾友子
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
(以下は、長い与太話。読みたい人だけつきあってください)
小出領子の清冽なニキヤに、感動した。
1幕、例えば火の傍で、長い腕を煽るように振る動き一つとっても美しく、かつ動きの中に思いが滲む。大げさな演技は無いが、(実生活ではすでに結婚しているせいか)、アダージョでの愛の喜びも、全身から自然に滲む。
以前観た時は、「天性の舞い手」と思った。観る者の脳にアルファ派を起こすような、舞踊の音楽性から踊る喜びを伝えられる踊り手、と思った。
だが、今回は、舞踊の音楽性以上に、動きからも演技からも、ニキヤの思いや人となりが伝わってくる、内面性のある演技と、「出」の素晴らしさ、3幕でゼレンスキーと同じ高さ・滞空時間のあるジャンプを複数跳ぶなど、技術の高さと、手抜きの無いディテールまで丁寧な踊りに、感服した。
1幕2場の悲しみのソロでは、涙した。私は小出さんに釘づけで、ゼレンスキーらを全く見られなかった。(オブジャニコフ指揮の、すすりなくような演奏が、劇的効果をあげたせいもある。)
最終幕での婚礼シーンに現れた、白いハーレムパンツ姿の、幻影のニキヤ。180度開脚の高く美しいグランジュテ。跳びながら、顔は一瞬、ソロルの方を振り返る。そのジャンプ姿と一瞥が、脳裏に焼きついた時、また涙が出た。
客席側からは、よく踊りこんで、役作りも万全に見えた。
色んなニキヤがあるけれど、小出さんのニキヤは、かなり巫女っぽい。1幕では、心清らかで、ずっと聖なる火を守る、俗世から離れた暮らしをしている女性に見えた。
そして3幕の最後のジュテでは、ソロルの心の中の世界では、妖精のような、小鳥のようなニキヤなのでは、と思った。穢れを知らない無垢さが、心に残った。
もっと女女したニキヤもいるし、恋愛劇としてもっと濃いのも良いけれど。色々なニキヤがあって面白い。
それと、小出さんは、登場の時の、空気の纏い方がとてもいい。
3幕で、婚礼の儀式に突如幻影として現れた時、はっとなった。役者、舞台アーティストにとって「出」ってのは、すごく大事なんだけど。そういう事が出来る人。
ただし、美人系じゃなく、フェニーフェイス系なので、顔が美人なプリマが好きな人むきじゃないかもだし、まだキャリア半ばで、スターのカリスマ性が凄くあるわけじゃないから。プリマの好みは好き好きなので、違う意見もあると思う。
主役として場数増えれば、さらに存在感が増すと思う。そうなる道筋で、怪我だけは注意して、貴重な才能を地道に飛躍させてほしいと思った。
また、直前に英国ロイヤルバレエ「バヤデール」で、同演目を観た為、前半は、東京バレエ団のソリスト・コールドの、クラシックバレエの水準が、ロイヤルより高いので、(意外に思う人もいると思うけど。実際に舞台見ると、どう見ても東京バレエ団の方が、技術的な水準は上だった。
てか、もう、体見れば分るって感じ。ロイヤルのコールドの人の体型って、胴が太いとか、脚の筋肉の付き方やラインとか、体つきが、さほどバレリーナっぽく見えない。ロイヤルは、純クラ専門のバレエ団でもないし、色々やるから、あれはあれでいいのではないかと。)
ロイヤルを見た後なせいか、まず、1幕2場の群舞の若手男性たちのイキのいいジャンプの高さが良く見えた。昔の某外来バレエなら、あの位跳んでも、驚かないんだけど。
女性たちも、脚上げキープの位置も高いし、基本的な所が、ロイヤルよりしっかりしてる。
(純クラとしては、東京バレエ団がレベル高いとかどうとかいうより、ロイヤルのコールドの水準が低いのだろうけど。私が日本の他バレエ団をくまなく見てるわけじゃないから、日本国内で見たらどうなのかは分らない。)
1幕2場、ガムザッティの田中さんは、バランスを見せてくれたし。
ロイヤルのマリアネラ・ヌュネスは、これはやってなかった。別にやらなくてもいいのかも?しれないけど。
東京バレエ団のコールドは、2幕影の王国の白いバレエの見せ場よりも、チュチュ以外のシーン、例えば3幕婚礼を祝うキャンドルダンスの前後とか、ハーレムパンツとかの衣装などでおこなう整列その他の何でもないような集団の動き、踊りに、ハッとするような所がある。
集団全体で何かを表してるような表現に向いてると思う。これは、ロイヤルにも、他のバレエ団でも、古典系バレエ団ではさほど感じない(ボリショイのスパルタクスとかロミジュリとかを除けば)特性で、やっぱ、ベジャールバレエとかをやってる影響かしら?と思った。
ちょっと興味持った。
公演全体は、途中までは良かったけど、小出・ゼレンスキーペアは急造で、或いはゼレ氏が時差でも残ってたのか、資質か、二人のデュエットに(仕方ない事だが)交流が無かった事、セレ氏の表現に愛が薄かった事、そして公演全体の勘所をちょっと外したかなと思う箇所があって、(影の王国の踊り方、曲と踊りのテンポとか)内容が良い割に、欲を言えば損してる所もあったと思う。
それでも、この余震の残る中、この舞台の上演に立ち会う事が出来て、良かった。その意味で満足の行く公演でした。
ブロンズ像の人、ジャンプ高く、ポーズがきれい。後半の回転でやや軸がずれたのは御愛嬌。
ガム役田中さん、居丈高すぎない、日本人女性らしいガムザッティで、1幕では、ニキヤとガムザッティの両方に、それなりに共感できた。衣装系について。3幕の婚礼時の金の被りものは、もっと見栄えの良いものに変えてあげた方がいいと思う。
田中さんは、3幕の表情がトーンダウンで、ソロルと二人、結婚式の頃にはもう冷めてるカップルみたいだった。2夜連続出演でよくがんばってた反面、仕方ない事だけど、降板した奈良さんは、特に3幕は、ここが彼女なら、もっと華が出せたと思い降板が惜しまれた。田中さんは1幕は良かったと思う。
ゼレンスキー。
1幕と3幕で、年齢が5歳は違って見えた。この人に関しては、14日より17日に観れば良かったと思う。くやしい。
この方は、インタビューで、前の仕事のすぐ後で、オファー受けるかどうか迷ったというから、スケジュール的に完調でなかったとか、そんな所かな?と思う。
1幕の印象:老けた。猫背。見かけも内面性も、青年に見えない。てか、「素」が見えすぎ。
この舞台に立ってて楽しくないのかな?と邪推したくなるような表情。踊りも抜いてる感じ。
(プロとして、体は大事だし、公演は成功だから、むしろこれでいいのだと思う。上演中にだんだんウォームアップして、調子を上げていった感じ。)気になったのは、サポートが・・えらく雑に見えた事。やっぱりコンディションの反映か?リフトでおろす時、1幕ではかなりNGだったけど、3幕では普通にちゃんとおろしてた。リフトそのものは、体に負担かからないように上げすぎずすぐおろす。
組んで踊るバレリーナは二人とも踊りにくそうに見えた。ゼレ氏の不調か、実力か。
ゼレンスキーの本領は、ソロらしい。かなり省エネな踊りだったけど。
中盤、後半、だんだん調子を上げてきて、ちょっと1つジャンプ跳んだだけでも、空間を支配するその存在感で、すぐに観客に自分を印象付けることができる。
振付と違うことやる(振りを抜く)踊り方が常態化してるダンサーだけど、その少ない踊りの、ピンポイントの技術だけで、大きく空間を支配する、その伸びやかな飛翔により、振付通り踊らなくても観客をわくわくさせたり、興奮させたりできる、得な人。
それと、振付通りでないなりに、ゼレンスキーなりのサービス?なのか、なんなのか、テクニックのヴァリエーションがいくつかある模様で、全3幕の中で、同じ技術でなく、違う技術を見せてくれた。同じジャンプでも、ディテール変えてたりとか。それなりに面白かった。
例えば影の王国のGPPD後半で、クベ・ジュテ・アントールナンをやってたし。逆に普通のマネージュは、低く跳んで、足は180度開脚で、長く宙に浮くとか。コーダの最後にニキヤの後を走りジャンプして消える時のジャンプは、後ろ足の角度のつけ方が、前と違うとか。
年齢考慮のピンポイント見せ踊りで、若い頃のようには踊れそうにないけど。
小出さんが好みじゃない人でも、ゼレンスキーの個人芸は、お金払う価値は、多分あると思う。
ただ、「プリマ食い」の資質のある人のようで、上手くないサポートで足を引っ張り、プリマと交互に行うグラン・パドドウのソロで、自分だけ次元の違う空間支配力のあるジャンプや回転技を見せつけるので、バレリーナにとっては、この人はどうかなあ…。
以前見た時、相手役が好きなバレリーナだったらしく、全くパートナーリングが違った為、ゼレンスキーにソロの個人芸以上の舞台を求めたいなら、彼の好みのきれいなバレリーナでないと、真のパートナーシップは見られない、とか?、と思った。
それとも、彼にとっての初日で、まだエンジン立ちあがってなかったかしら。
ソロルの表面的な演技内容を言えば、シンプル。そんなにガムザッティに心を動かされてないみたいで、あんまり3角関係っぽくない役作り。でも、1幕の田中さんの「憧れ~」の目線とか、小出さんとか、演技はゼレンスキーをみてるより、彼女たちを見てる方が面白かった。アップで表情観るより、踊りの爽快感を楽しみたいダンサー。ジャンプの着地であまり音しないのキープ。
あと、ゼレ氏はマリインスキーの出身だけに、完調でないなりに、さっとアームスを振り上げた時とか、田中さんより腕の動きがきれいで優雅で感心した。田中さんだって悪くないんだけど。((小出さんは、このゼレ氏にまけじと、影の王国のコーダで高速シェネで、切れ出してた。
競い合いっぽいパドドゥだった。これはこれで面白かった。)
ゼレンスキー持込みの、3幕の白い衣装は、良く似合っていて好印象。元々のこの版のソロルの衣装は、ゼレンスキーに似あいそうになかったから、持込みで良かった。