懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

雑感

2012-02-29 00:53:21 | バレエ
・移籍話が多いですね。又、誰か移るかな。

・マトヴィエンコが、キエフ・バレエの芸術監督就任だそうで、私も6月ニーナ公演のチケット買ってるので、ゲストどうなるのかと思ったら、ダンサーはやめないみたい。
キエフ・バレエは、かなり大変な状況と思うけど。

以前も、故郷のキエフ・バレエの都合(人手)で、新国立の出演予定をキャンセルしたことがあるから、祖国のバレエ団の状況をほっとけない性格?。以前サイン貰った時、情のありそうな感じはしたけど。今は皆、自分の利益でいっぱいなバレエ界だけど、彼はそうでもないのかしら。(まだ33歳だったんですね。)
バレエ界の風来坊も、やっとマリインカに定着したかと思ったら。又出る。彼らしい?。

・一方、ザハロワは、ナチョ・ドゥアト版「眠り」の振付を、僅かな期間で覚えるからと約束して、出演に取り付けたことが、ダンマガに出てた、受験勉強みたい。
以前彼女が、ドゥアト作品を日本で踊る予定があったのが、出産で流れたことがあり、私は惜しく思ってたから、又、彼女がドゥアトと仕事出来て、良かったです。

・他、ダンマガのインタビューで、サラファーノフが言いたい放題言ってくれて、ほっとしました。時間の事とか。

先日のTV放送「眠り」も、旧版より短縮したことを、異を唱える批評家はいるかもしれないけど、私は、改変には意味があるんだろうと思ってました。だから、先日の拙日記の感想は、些末事項中心で、改変を批判しなかった。
たぶん、現地ロシアの、ボリショイの客層向けに、一定ニーズがあるんだろう、と思うので。
私たちの為にあるわけではないから。お客様によっては、顧客ニーズ様々で、社交の場の機能も劇場にはあるし。がっつり芸術を見る人が、観客のすべてではないような気がする。

・ボリショイ2月日本公演、グリゴローヴィチは、来るつもりが体調不良とは聞いてたので、スパの日は、私も舞台見て、キャリアの長くない人中心のキャストと分って、1幕の初めに、「ああ、グリゴロさん、来たかったろうな!」と思って、手に汗握って応援モードで観てました。

(「観客に分るミスだけはしてくれるな」と思ってたけど、案外、主役も敵役も破綻なくしっかりしてて、昔のヴェトロフより段取りは安定してた。)

ダンマガで、グリ氏は風邪かなにかで耳不調みたいに書いてあったので、1時的なものなら、ほっとしました。

日本は原発問題で、来日キャンセルの芸術家が色々いるのに、ご高齢なのに来日するつもりでいた事を知って、ちょっぴり感激。やはり芸術職人。舞台への責任意識が高くって。

★この週末、日本もロシアも色んなニュースが出てて・・。

フィーリンが、リオープン記念公演でメドベージェフ大統領と写ってましたが、日本のTV局のニュースのロシアの政治報道見てると、この週末は、このまま呑気にボリショイ話引っ張っていいのか?と、ちょっと思ってしまいました。

エリツィン時代は混乱したロシアが、その後、経済安定して、ロシアバレエ好きとしては、ほっとしてた時期があったのですけど。短い春だった。

移籍も多いし、バレエ界の先もよく分りませんが、バンジャマン・ペッシュのインタビューでフォーサイスに言及し、”今は振付家は様子見で、もっと先、数年後に新しくいい振付家が出ると良い”、みたいなこと言ってて、ある意味、なるほどでした。確かに今、これはと思う人が、そんなにいないかも。私もコンテだろうと練習を見るような観劇は好きじゃないから、完成品の舞台を見たいと思ってます。

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BSプレミアム パリオペラ座 ロビンズ振付「イン・ザ・ナイト」他

2012-02-26 16:17:58 | バレエ
昨日深夜のTV放送。以下は、パリオペに詳しくない者の、軽い放送内容メモ程度です。このバレエ団に詳しい方向きの内容ではないので、ご注意を。
※<>内は、TV番組内の解説文。

2008年9月パリオペラ座バレエ公演の録画。没後10年の振付家、ジェローム・ロビンズへのオマージュ 4本の小品集。
①~③はロビンズ振付。指揮:コーエン・ケッセルス 管弦楽:パリ・オペラ座(いい感じ)
改めて、ロビンス振付の良さを楽しめるコンサートだった。さりげないようでいて、凡庸に非ず。こういうのを創るのが、なかなか難しいのでしょうけど。

①イン・G・メジャー 音楽:ラヴェル
マリ・アニエス・ジロ フロリアン・マニュネ &バレエ団

<3楽章からなる、ラヴェルの「ピアノ協奏曲」に振付た、3部構成のバレエ。海辺を思わせる背景の前で、軽快なダンスが展開する。>
コミカル、とか、ゆったり、とか3つの音楽のニュアンスを、振付もダンサーも良く掴んでいて感心。
背景の美術が、青い壁に、太陽と雲と海。一見子供の絵のようにシンプルだが、よく見ると、プロっぽいセンス。衣装も現代的で美術、ダンスとの統一感がいい感じ。

(装置、衣装がシンプルで、最初は簡素に見えたけど、見てるとセンスがいい。ジロとか、パリ・オペラ座やボリショイ、マリインスキーのダンサーは、単純に言うとプロポーションが良くて、脚が当然のように長くて見とれる。踊りの基礎がしっかりしてて、見やすい。あたりまえだけど。)

② イン・ザ・ナイト 音楽:フレデリック・フランソア・ショパン
アニエス・ルテステュ/ステファン・ビョルン
クレール・マリ・オスタ/バンジャマン・ペッシュ
デルフィーヌ・ムッサン/ニコラ・ル・リッシュ

一転して、夜の雰囲気?背景黒に星らしき小さなライト点在。
<ショパンのノクターンに振付たバレエ。3組の男女のカップルが、さまざまな男女の恋愛感情を表現している。>

最初の2組はさらっとしていて、感情表現より、女性のドレスや着こなしや舞踊に見とれた。
最後のベテラン二人、ムッサンとル・リッシュは、対照的に濃厚な演技。
どういう男女か説明がないので、勝手にこっちの想像でこの男女の状況を仮想して観れる。
このまま、椿姫に行っちゃってもよさげ、とか。

※そう言えば、以前日本のガラ公演で、ロシアンダンサーのカップル4組が、それぞれの愛の種種相を表す内容のバレエを踊ってた。もしや、この作品に触発されたのか?関係ないかしら?
そちらは、4組の男女の関係を、四季になぞらえてたけど。春は初々しいカップル、夏は熱愛、秋、冬は別れそうな、とか?冬を踊ったペアは御苦労さんでした。(笑)スター級では、チェルノブロフキナ夫妻(秋か冬だったかも?)と、グラチョーワと元夫のケルンさん(ラブラブの役)が踊ってた。グループ公演の小品の中では珍しい作風だったかも。


今回の振付は、3組各々だけでなく、最後に全員の絡みが入ってるのが新味。

ムッサン、ル・リッシュ組の濃密な男女の機微の表現は、ちゃんとみるとかなり楽しめる。短い中に男性も女性も、様々なニュアンスを込めて時に繊細。
まあ、素晴らしいです。ムッサン、昔は美人だ~と思った。今もいい女だけど。

でも、もっと若いダンサーも、TV的ビジュアル的にいいのかも。観客によってはベテラン以外を若手を見たい人もいると思うし、こういう年代層広めの組み合わせっていい感じ。中堅と若手とベテランを一緒の舞台に立たせるのは、それぞれに刺激になって、とてもいいはずでは。

③コンサート 音楽:ショパン
コミカル。お笑い系。現代的な衣装。割と長い。女性のおどけた表情がキュート。
私自身は、コミカルな小品バレエは、お金払って見るのは抵抗ある方なのですが・・。

<演奏会に訪れた人々の妄想をショパンの音楽に散りばめて描く、コミカルなバレエ。ロビンスの初期の代表作の一つ。>
ベッセラ・ベロフスカ
ドロテ・ジルベール
アレッシオ・カルボネ
エマニュエル・ティボー

④トライアド 音楽:ニコ・ミューリー 振付:バンジャマン・ミルピエ
<16歳の頃からロビンスに師事したミルピエが、ロビンスをオマージュしたバレエ。男女4人の関係性や、感情を表現している。>
マリ・アニエス・ジロ
レティシア・プジョル
オドリック・ベサール
マルク・モロー

劇場の内装の映像も豪華。内容的には、画像もきれいだし、良かったと思ってます。と言っても、私はパリ・オペラ座ファンでなく、詳しくない一般視聴者の感想ということで。

このバレエ団は、このTV番組で出ると総合力で充実して見えます。(じっさいに、ロシアもフランスも、現地に行って、事情知らずに観ると、いまいちな公演に当たった観光客の話は聞いたことがあるので、TV放送のは、良い内容をチョイスしているのかしら?と。

ただ、こういう作品は、私はTVで見ちゃう派。公演行くのは、グランドバレエか、もっと斬新系コンテだったりするのだけれど。今回のようなのは、2回観ると、もう一回観るかは分らない。
日本は古典好きと言われるけど、チケット代がお高いので、こってりしたのを好む、とか?

一方、前週放送された、ザハロワ主演のボリショイバレエ「眠り」全幕も、ああいうのも、機会があったらまた、放送してほしいですね。特にザハロワは、しばらく日本に来なさそう?なので。(って、番組あてにメールする根性がない。)私は彼女のファンではないけど。


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2/8「ライモンダ」アラシュ&ヴォルチコフ 第一幕

2012-02-25 18:42:04 | バレエ
2月8日、東京文化会館。

2003年の改訂版。振付・構成の骨子は、1幕の白い貴婦人の削除以外は、大きな改変は感じず。ただ、作品の意味する所は、印象変わった。夢の場の照明が'88年来日公演よりは明るくなっていた。

音楽:アレクサンドル・グラズノフ 原振付:M.プティパ/ゴルスキー 改定振付:Y.グリゴローヴィチ

ライモンダ姫:マリーヤ・アラシュ
婚約者ジャン・ド・ブリエンヌ:アレクサンドル・ヴォルチコフ
アブデラフマン:ユーリー・バラーノフ
指揮:パーヴェル・ソローキン 演奏:ボリショイ劇場管弦楽団

【第一幕】
幕が開くと、スパルタクスのアースカラーとは一転。白い舞台に明彩色のドレスの色彩美。

≪冒頭≫ 中世の貴族の男女十数名が、調和のある配列で優雅なポーズ。白と青や茶のアシメトリーの貴婦人のドレス、袖の裾、男性のマントが、白い舞台の床の上に、花を散らしたよう。一瞬の静止画。動き出すと、上体を傾ける角度、腕の動き、洗練され優雅で見とれる。ゆったりしたダンス。女性たちのプロポーションの良さ。

―わー、きれい!
ちょっと舞台の上が、名パティシエの作るスイーツみたい、とふっと思った。白い皿の上に、おいしそうなものが・・。
この幕開きの一瞬で、舞台に引き込まれた。

(第一幕:あらすじと流れ)

舞台は中世のフランス,ドリス伯爵夫人の城。
伯爵夫人の姪ライモンダと、その婚約者の騎士、ジャン・ド・ブリエンヌの物語。

1.城の大広間:十字軍の遠征で、ジャンは国王アントラーシュ2世に伴って出征する為、許婚のライモンダに別れを告げ、白いスカーフを渡して去ってゆく。一人残ったライモンダを、友人女性2名と、吟遊詩人の青年2名が、慰めて踊る。ライモンダは竪琴(リュート)を弾き、また、ジャンの渡したスカーフを持って舞う。

2.ライモンダの夢の場面:ここで白に紺の柄のチュチュのコールドが登場。バレリーナたちが一服の絵のように一瞬の静止を見せた時の美しさ。そして踊りだす。やや暗い青い照明の中、ひたひたと広がる静けさの中の躍動。これは、ライモンダの夢。

・恋人ジャンの幻影が現れて、姫と甘くロマンティックに踊る。
・友人二人のヴァリアジオンを踊り(現実のシーンとは別のバレリーナが踊っている)
・ライモンダのソロも導入。

⇒ジャンが去った後、舞台中央に、四角い黒い布の囲いから、見知らぬ異邦人が現れ、ライモンダの意識を脅かす。彼はライモンダに迫り、ライモンダは気絶して倒れる。⇒目が覚めたライモンダは、不吉な夢を見たと感じる。(何かの予兆?と、余韻を残して、幕。)

雑ですが、大まかに言って、こんな感じでした。

(客入り)まあまあ。
(観客)バレエに詳しい人や、今のボリショイ、主役のアラシュらを知ってそうなお客様が入ってる様子。1幕前半、舞台中央後方に、白騎士服,白マントに兜を被ったジャンが颯爽と登場すると、拍手。その後、ライモンダが舞台下手後方から登場し、ブーレで斜め前方に進むと、自然に拍手。といった調子で、安心して見ていられた。

(プリマ)褐色の肌に黒髪のアラシュは、フランスの姫の役より、中近東の姫でも通りそうな風貌。円熟期の発展を期待したが、それはなく、舞踊正味は、可もなく不可もなく。だが、リフト以外は終始笑顔。微笑ましかった。ディテールの繊細さは感じられなかったが、大崩れのない踊り。大バレエ団はコールドに認められた主役が入ることも大事で、その意味で今日の主役二人は良かった。年齢を重ねたチュチュ姿で、ウエスト僅かに緩め。リフトで笑顔が消えるのはそのせい?でも客席から見て、ヴォルチコフのリフトは、さほど不安定に見えず。

観劇中、私は不満はなかった。が、セメニャカの踊りを見ると、もっとクラシックのパが華麗に一つ一つくっきりと浮かび上がる。「ライモンダ」特有のポールド・ブラも、あまり印象に残らなかったが、これはこれで。

(ヴォルチコフ)踊りの光り方は、以前の合同ガラでの、ステパネンコとのパドドゥの方が印象上。だが全幕で、このスケジュールでよく頑張ってくれてた。ところでバレリーナが、ザハロワ等を除いて、他の人も、「リフトにはもう少し体重落とした方が」と思う体型なのは、なぜ?。

(アラシュ&ヴォルチコフ)大人のいい男といい女のコンビで、愛し合った雰囲気の演技は、自然。だが最初から大人の熱愛で、私のこの作品の理解(1幕の姫はもっとうぶ)とは異なった。とりあえず微笑ましい。嘘がなく安定した演技。ただ、はっとするような新鮮な演技ではない為、私は、ずっと表情を追う見方はせず。

(プリマと観客の呼吸)
要所要所を心得た拍手。満席ではないがいい雰囲気。いいお客さんが入り、1幕の途中で、今日の成功がほぼ見えた。途中でアラシュのソロがひとしきり入り、終わってお辞儀をすると、拍手。もう一回お辞儀すると、また、さざ波のように小さな拍手が入り、絶妙な呼吸。プリマのレべランスと、お客様の拍手で、いちいち挨拶してるみたい。かわいらしい。

(照明)アラシュの1幕チュチュは、ボディ:淡いブルーに、白スカート。これが、明るい照明から、やや暗めの幻想的な青い照明に変わると、私の席からは、プリマの衣装が全身白に変わったように見え、色の魔法みたいで素敵だった。(1階前方席では、こう見えないかも。)

<2幕以降は、次回に続く>

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更新

2012-02-24 01:03:51 | バレエ
アクセスが異様に多くなった為、ちょっと一服致します。桁違い。
(やっぱり、超メジャーの、ザハロワの「眠り」公演の話題がいけなかったのか?)

クローラの巡回を避けようと、ざっくり2月の日記を一部外してみました。

2000年代の公演感想、更新は、様子見てまた、そのうちに。

※追記:ニュースでグーグル社の情報の扱いが3/1以降改変になると報じていて、もしかして、その関係?かも。

私らには有難くない話ですが。このブログは、バレエマスコミベースにのらない、営業ベースでない話を、まったり載せる目的もあって使っているので、使えるうちは使って、様子見て、考えます。検索連動型も、行きすぎると面倒なのだけど。

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カメラワーク2

2012-02-20 17:14:33 | バレエ
バレエ公演、「ライモンダ」に行った後、昔のビデオ(DVDじゃないんです・・。)を探し出して、昔の「ライモンダ」公演の画像を見てみました。これは、一度はDVDは出てる筈と思うけど、現存するかは不詳。2本あって。

①1本は、ボリショイバレエ団、アメリカ公演の市販映像。1980年代後半頃か?
ライモンダ姫:R.セメニャーカ 騎士ジャン:I.ムハメードフ、敵役アブデラフマン:G.タランダ。3幕の、脇役の4人の騎士のヴァリのザンレール大会もなかなかのもの。

②もう1本は、バレエ団の'88年来日公演を、当時のNHKが収録したTV放送分。
姫:N.べスメルトノワ 騎士ジャン:Y.ヴァシュチェンコ アブデラフマン:タランダ

この2本を今回見て、両方取っておいてよかったと。
華やかなスター性だけなら、3人とも粒ぞろいなのは、①だけど、②は、タランダのアブデラフマン、フォーカス映像。

①と②の間に、タランダの演技にさらに磨きがかかったのか、はたまた、カメラワーク(時折アップで表情の演技を捉え、かと言って全身の表情を映し落とさないよう、舞踊に合わせて映し、時に空間を支配する踊りの迫力も、臨場感を落とさずに映しだしてる。)のプロの妙技なのか?
②の脇役フォーカス映像の方が、よりタランダの踊りにグッときます。

昔なので、今のNHKのスタッフの方とは違うかもしれませんが、これは、よくぞ、よくぞこんな風に撮ってくれた、と思います。
バレエ公演のTV放送は、あればあるだけでも有り難いものですが、日本人の仕事はきめ細かく、特に昔のバレエ番組の一部は、解説やインタビューも含めて、よく出来ていたと感心します。

(直近では、ニーナのラストジュリエット公演のTV放送も、撮った方、編集した方々腐心の成果を凄く感じました。細かい工夫が有り難かったです。)

今回のザハロワは、カメラ写りが良く、人気・実力安定していて、日本で見られないなら、TV放送で出てきても良いな、と思ってます。

さて。①もいいけど、②も意外と面白かったのは、一つの作品は、特にグリゴローヴィチ作品のような立体的な集団創造性の強い振付家のものは、別キャストで見ると、作品が多角的に見えて面白いかな、と。
自分は、好みで言えば、ベスメルトノワよりセメニャカ、ヴァシュチェンコよりムハメードフだったのですが。好き嫌いを別にすれば、べスメルの方がアダージョダンサーの才があり、タランダとの気持ちの共有が見えるとか。ヴァシュチェンコ、ソロの横跳び大技はできなくても、「自分は王子様なんだ!」と思ってるので笑えるというか、シャイなうぶな男性を演じるムハメドフとは異質で、アダージョも堂々としていて面白いとか。

どっちがいいとかより、Aもあれば,Bもある、という感覚で見れます。べスメルトノワは、もう少し若い時のを見た方がベターですが。

それにしても、タランダの②の画像は、圧巻で、見てしまってショック。

踊りの一瞬一瞬ほとんどの瞬間に気合いが入ってる。ジャンプなどの時の一挙手一頭足すべてに覇気を込めて踊ってる。ライモンダ姫を見る時の、目。憧れ焦がれる噴き出す想い。かと思うと、時に威圧的に振りあげられる両腕から、「危険な男」である事も表出することを忘れない。
主役を喰う悪役でなく、あくまでも敵役のポジションを守りながら、MAXで舞台を盛り上げてゆく。ムハメドフに比べ、ジャンプは異常な高さではなく、技術的に超絶技巧は入ってないけど、
踊り見てると迫力にぐいぐい引き込まれる。

男性としての魅力はいうまでもなく。

これを見る前に、来日公演を見て、本当に良かったです。でも、ドミトリチェンコが良かったとか聞くと、やっぱ観たかった・・・。懲りない性分。




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カメラワーク

2012-02-19 13:38:46 | バレエ
【ボリショイ劇場 リニューアル記念公演 バレエ「眠りの森の美女」全2幕 TV放送キャストと、ごく私的些末雑感】
かなりどうでもいい系の感想です。軽い気持ちで読んでちょ。

音楽:チャイコフスキー
原振付:プティパ
改訂振付:Y.グリゴローヴィチ
美術、照明、衣装が総じてロシア人以外の人々。イタリア系?
床にも模様がある舞台装置は、昔のラブロフスキー版「ロミジュリ」の、ださいダイス柄以来。
まあ、好きにしてって感じ。
指揮:シナイスキー(昔のボリショイのDVD「ライモンダ」の指揮者で出てた人みたい。たぶん、'84年頃の海外公演のもの。)

※'02年来日公演での「眠り」旧グリ版は、1幕の妖精美女軍団の踊りが、派手派手!で、主役の登場前に、ボリショイの踊らせまくり振付に、降参してしまう気持だった。今回は、そういうボリショイの強力なカラーが緩和され、世間一般、標準版の眠りに戻りつつあるような。今のダンサーのコミカルさが目に付いた。

※JAブログ経由で、この公演のゲネレポが出ていた。直前にグリゴロ氏が、マスコミを入れなかった、ダンサーたちの出来に怒ってた、と。その状況が、舞台見て、納得できた。本番前、マスコミの取材が、邪魔な時もあると思う。グリゴローヴィチに限らないけど、そういう舞台、への責任意識の高い人の関わる舞台を観たい。以前のアレクセイ・ファジェーチェフとかも、舞台への意識は高かった。前回のブルラーカも、そういう所はちょっとあったみたいだけど。

フィーリンの方向性の問題が、うちわでちょい話題になったけど、放送見た限り、バレエ団の変化を感じた。私もグリゴローヴィチの居る間は見るけど、その後はどうなるか分らないと思ってる。ベジャールのバレエ団は、ベジャールの死後、何かが変わった。そういうことには、注意を払いたい。

<出 演>
オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハロワ
(スターの貫録。この人の為のTV放送みたいな公演だが、あとでじっくりみて、と。先に2月の日本公演出演ダンサーの些末事項チェックをしてみた。)

デジレ王子:デヴィッド・ホールバーグ
リラの精:マリア・アラシュ (目線使いが昔と違う。紫のチュチュは、役にあってる)

以下、気づき事項、気分次第で。
1幕。
<あらすじ:城では祝宴が開かれる。妖精たちが招待されるが、式典長は、うかつにも悪の精カラボスを招待するのを忘れてしまった。・・>
★キャストの表示に、妖精たちの名が無い。以前の「優しさの精」とかと、今回の台本の設定が変わって無ければ、こんな感じかな?(2幕のディベルテスマン場面も、TV放送の字では、ダイヤの精、サファイヤの精、等の名が無かった。)

1番目:優しさの精 白いチュチュのファニーフェイス:ダーリヤ・コフロワ
2番目:無邪気の精 チナーラ・アリザーデ 目立たない。
3番目:元気の精 淡いグリーンのチュチュ 名不詳。優雅な感じの人
4番目:寛大の精:黄色チュチュ '02年に、この役をニーナ・カプツォーワが踊り、動きにも愛らしさを強調。対して、今回の若いダンサーは、愛らしさよりも、ファニーフェイスでいたずらっぽいキャラに見えた。

5番目:勇気の精 赤いチュチュ:エレーナ・アンドリエンコ きびきびした踊り。
この人だけは、「勇気の精」という名にあった踊り。(後の人は、あんまり役名と舞踊の質がリンクしないが、若いので、まあ、かわいいか。)さすがキャリアが長く、この人と、カラボスが出ると舞台が安定して、ほっとした。

・とにかく子役が可愛い。花のワルツの小さな女の子たち。あのかわいさは素なのか、アルカイックスマイルなのか?これを見るだけでも笑顔になる。

・悪の精カラボス:アレクセイ・ロパレーヴィチ
(舞台を引っ張る存在感で、分りやすく面白いが、恐くない。エンタメ系、女装カラボス。
そういえば、ロイヤルバレエの女性が演じるカラボスは、美人、グラマラスだが、女の嫌な面が見える役作りで、対照的だった。
なお、黒い手下たちの衣装・扮装が一人一人違う。珍しい。)

・国王:アンドレイ・シートニコフ
・王妃:クリスティーナ・カラショーワ
(スタイルが良いのは良かったが、10年前のダンサーより庶民的な王妃?自慢のオーロラ姫を見て笑うと、白い歯が見え、貴族にしては品が無いが、美人なのは良かった。)

・式典長 カタラビュート:ヴィターリ・ビクティミロフ
(いかにも間違って招待客リスト漏れを起こしそうな、そそっかしそうなキャラ。最初は、下手な芝居にはらはらしたが、だんだん調子に乗って面白くなった。良くも悪くも、この役がこんなに目立ったの、はじめて見た。)

※この役に代表されるように、全体に、旧版に比べ、舞踊から演技で見せる方向に、ややシフトしたような気がした。例えば英国ロイヤルとか、欧米のバレエ団を世界の潮流と見て、そちらシフトかしら?とも思った。美術もだし。

また、彼の他、その次のシーンで、糸巻きを持って踊る庶民の女性たちの踊りのノリノリ感は、ボリショイの新しい世代の得意なものが、良く出ている。

[1幕。花婿候補の4人の王子と、オーロラのローズアダージョ]

ボリショイの「眠り」のこのシーンの王子たちは、'02年の来日公演でも、全然王子に見えず。(帽子がカウボーイみたいだった。)それで、「扮装もしぐさも王子に見えない」事には免疫あったし、王子たちは'02年よりは、動きはまし。で、今回もやはり扮装が、「どこの国の王子?」と首をかしげたくなる。頭にターバンとか。インド?

※なお舞踊評論家で、「所作」という言葉を使う人がいるが、これは、元々は能楽の用語の為、私は使わない。今の舞踊評論家の中には、芸術に関係ない仕事の人が居るので、舞台芸術に知識のない人もいる。が、言葉は意味があるから、大事だと思う。

<メインのザハロワは、見せ場のテクは、そつなくこなした。愛らしい姫の「演技」。プロ意識の笑顔。でも、新国立客演の時は、心からの笑顔だった。ネット画像より、TV放送、高画質録画は、眉間のしわまで見えちゃうから、心からの笑顔の公演が映ると、もっと良いけど。画像残るだけまし!>

1番目:カリム・アブドゥーリン(ゴールド衣装。頭の羽毛が一番でかい。タイの皇子とか?一番どうでも良かった。)

2番目:パーヴェル・ドミトリチェンコ (赤い服。そのままくるみの皇子でもやるかい?と言いたくなる騎兵のような上衣。帽子に毛皮つき。東欧の王子とか?。)
3番目:ウラディスラフ・ラントラートフ (シックな深い赤紫系の服。背にヒョウ柄。表情が優しい。ザハロワとちょいアイコンタクト。)

4番目:ユーリ・バラーノフ (やはりターバン。緑衣装。キャリア上、一番大人っぽい。この場は、ザハロワ中心で、王子たちは目立たないけど、よく見ると4人の王子の中では一番良い?姫を情熱的に見つめたり、・・。あれ?バラーノフ、日本公演の時と違う。相手がアレクサンドロワの時のクラッススの女性に対する淡白さや、アラーシュのライモンダ姫に横恋慕するアブデラフマン役の時の、目力だけのオーバーアクトお笑い系と違い、ザハロワのオーロラを恋し、心配する情熱的な目。ましなサポート。バラーノフはザハロワが相手の方がいい?とか? 地味だけど、よく見ると、別人のように男らしくかっこよかった。どっちがほんとなの?)

第二幕
白いねこ:ユリア・ルンキナ
長ぐつをはいたねこ:イーゴリ・ツヴィルコ
フロリナ王女:ニーナ・カプツォーワ
(翌公演日の主役だけに、愛らしさと安定感。でも、TVに出るなら、「黄金時代」のリタ役の、色っぽい大人演技の方が、もっと見たかった。) 
青い鳥:アルテム・オフチャレンコ
(とりあえずこのポジション位が適役そう。)
赤ずきん:アナスタシーシャ・スタシュケヴィッチ
(達者な出来。)
おおかみ:アレクセイ・コリャーギン

ここらへんで、後ろで「森の木の絵」を抱えた小さい男の子たちが、「森の木」の演技をしていて、ぬっとぼけた設定で、可愛くて笑えた。そのうち絵の「木」たちが、左右に身を振り、森の木が揺れているような、ぬっとぼけた踊りを披露。ますます愉快。子役が上手い。これは旧版には無かった気が。

シンデレラ:ダリーヤ・コフロワ (日本公演、ライモンダの夢の場のヴァリ等に出ていた、ファニーフェイスの女の子。)
フォーチュン王子:カリム・アブドゥーリン(ここは、さすがに普通にボリショイの男性らしく決めてた。)

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眠りの森の美女

2012-02-17 01:13:34 | バレエ
録画ミスしないか、プレッシャーなので、既知事項をあえて。バレエTV放送予定。

2月18日深夜、NHK BSプレミアムシアター、「眠りの森の美女」。
ザハ―ロワ&ホールバーグ、新装ボリショイ劇場の公演。グリゴローヴィチ改訂版。
青い鳥がオフチャレンコだった。後のキャストは忘れた。

私は、前週のバレエ公演の放送を見損ねた。今度は録画を失敗しないようにしないと。ネット画像ですでに見た公演とはいえ、バレエ公演のTV放送は有難い。

それにしても、来日公演の方は、途中で地震が来なくて、ほっとした。来日メンバーは、日本に来る事を選択したダンサーだから、それで何かあったら困るので。
(一応、配布キャスト表の下欄に小さく、地震の時は、ホールは耐震構造なので、係員の指示に従うように、書いてあった、ような気がする・・。時に、去年の3月11日は、私は会社で地震にあい、上司たちの指示がずぶずぶで、待ってられないので、連れと一緒にさっさと逃げましたが。状況判断ね。)

時に、ボリショイ来日公演の時、ホール内で書籍、DVD、グッズ等販売していた。

その中で、昔のボリショイ「白鳥の湖」全幕DVDが、完売になっていた。1980年代位のだったろうか。

だいぶ昔の映像だったけど。昔の人は下手ではないので、(画質その他、格調高いというか、古式ゆかしい系。)悪くはないけど、欲を言えば、2000年代で、今風の画質で、今のダンサーより1期前のが、全幕映像残ればよかったのに、と惜しく思う。

(1990年頃なら、ミハリチェンコの「白鳥」は、以前ビデオは出ていたけれど。DVDでは見たことない。)
ボリショイは芸術性には優れていても、そういう商売っけは、当時のマリインスキーより無かったのが、残念。芸術家は走り続けるけれど、記録を残すって、とても大事。

お客さんが、公演が終わると画像や音楽で、公演を思い出したい気持ち、分る。
自分は、白鳥もスパもライモンダも手持ち画像はあるので、何とか。

でも、「白鳥の湖」2001年改訂版のは、DVDもなく、今回は細部を変えてあったので、このまま全幕画像が残らないなら、残念。ロシア国営TVが放送したものが、幾つかネットに部分抜粋で画像アップされてて、ニクーリナのオデットとか、ちらっと見たけれど。TV局の所蔵画像、売ってくれたら嬉しいんだけど。

(1幕2場、王子と悪魔の二人の息を合わせる(?)踊りが、今公演では、それぞれ勝手に踊る振りに変更してたと思う。ダンサーは踊りやすかったと思うけど。今にして思えば、あのアルテム・シュピレフスキーも、頑張ってあの男性二人踊り<ベジャールの男性バレエみたいな>を踊ったのね・・・。)

自分の記憶だけが頼りの作品というのも、自分が忘れるのが恐い。
(ライモンダ公演での適役タランダの踊りは、少し覚えてるけど。登場した時、今回よりもっと夢の中の無意識の反映っぽかった。)

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スワンレイクの音楽

2012-02-13 01:23:29 | バレエ
どうも、ボリショイに偏ってしまった。
Kバレエのシンデレラ見てきた人から、公演良かったそう。芸能人が来てたとか。シンデレラの階段をオーチャードの階段に見立てたポスターが、公演へいざなってた。
あそこのプリマの松岡さんて、TVで見た限りでは、私好みかも。

フィギュアスケートの四大陸選手権で、優勝した選手が白鳥の湖の曲で滑っていて、曲を聴いて、やっぱり白鳥っていい曲だ~と思って。(試合の時のテープの演奏は、そんなでもないんだけど。「ザハロワ・ロパートキナ」DVDの、ザハロワ編の最後に出てくる、モスクワ、ボリショイ劇場の演奏で聴く、2幕2場の王子登場の時の音楽って、いつ聴いてもぐっとくる。夢から覚め、内に沈静する時の心情を伝える音楽。いい演奏で、羨ましい。

そう言えば、先日のボリショイ「白鳥の湖」の時は、その前の来日公演に比べて、チャイコフスキーの音楽が、脳裏に響き渡る瞬間が、なかった。
音楽がよく聴こえた踊りは、コールド。

また、コールドの振付に付け加えがあり、白のコールドとプリマの場面で、プリマが真ん中で一人で踊ってると、今まではコールドはほぼ静止だったのが、プリマの動きに合わせて、コールドの腕の振りが入って、プリマの踊りを応援してるみたいで可愛かった。

さて、私の場合は、ボリショイ来日公演は、20年以上欠かさず見続けてきたのだけど、その資料を今回出してみて、改めて振り返る機会になった。

気が向いたら、2000年代以降を中心に、若干、過去の公演回顧譚も、その内書けたらいいなと思ってる。(ほんとかな~。ABT感想も書いてないままなのに~)

'02年スパルタクス(クレフツォフ、ベロゴロフツェフ)眠り(ニーナ、ウヴァーロフ、グラチョーワ、ツィスカリーゼ、アントニーチェワ、シプーリナ)
'06年バヤデルカ(グラチョーワ、ネポロジニー、ザハロワ、ツィスカリーゼ、アレクサンドロワ、アラシュ)
'08年「白鳥の湖」(ザハロワ、ウヴァーロフ、クリサノワ、グダーノフ)「ドンキホーテ」

或いは'88年「ライモンダ」のタランダのアブデラフマン怪演とか。(NHKが放送したものの録画が手元にあるので、確認できる。)
ビデオになっちゃうけど(DVDに落としてない)、ムハメドフ、V.ワシーリエフの昔の「スパルタクス」とか。
今回の来日公演話とまぜこぜで、その内、上記の一部も、気が向いたら書けたら、と思ってます。(気が変わらないといいが。)

ところで今回の来日では、私はボリショイ生え抜き組の方が、移籍組より好み、という結果だった。ドミトリチェンコ、ニクーリナ、ラントラートフ。バラーノフ。もしかしたら、ダンサーよりも、教育システムの結果かも。

一方、友人の一人から、「ライモンダ」7日ロブーヒンのアブデラフマンも良かったそう。(本来連日行って、アブデや悪魔も比べて見られるのが一番いいのだけど。ちょっと残念。)ただ、話を聞いていて、全体のまとまりは、翌日8日の方が、良かったような気がする。7日は、小さなアクシデントはあった模様。

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2/8「ライモンダ」、2/9「白鳥の湖」マチネと、はしごして

2012-02-10 03:14:18 | バレエ
東京公演「ライモンダ」(アラシュ/ヴォルチコフ)2月8日夜公演。

予想を裏切らぬ堅実な好舞台。衣装やミミックの美も目を引く。主役だけでなく、全体で魅せる舞台。遠景で見るのが一番いい。計算尽くされた、美術・衣装・照明のタイアップ感。動く建築物のように、1幕夢の場、群舞のチュチュのスカートの放射線状のデザインや、ダンサーのベールの動かし方まで、全体の構成の中でどうあるべきか考えて有機的に動きと衣装、装置デザインを考えられている。照明までも、全体を遠方席から遠景で見ると、そういう面での美的効果がよくわかります。

ライモンダの夢の場の友人の一人を踊った、チナーラ・アリザーデのリズミカルで優雅なクラシックバレエが舞台を引き締め、ホワイエで、あの子、いいね、と言われてました。2幕ライモンダの友人、ニクーリナも連日脇役出演ながら、優雅かつ確かな基礎の引き出す心地よさのある踊り。

1幕、白い貴婦人無くなった。夢の場が、どこかの庭に変わり、後ろに月が出た樹木の絵があり、背景の印象のなかった前回’88年とは、変わった。以前より、甘口の女性的な演出になった、等、以前と振付・構成の一部が改変。私は以前のの好きですが、今の時代のこの劇場の機能(お金を落として行ってくれる、スポンサー向けバレエ団)を考えると、分りやすさも大切。

しかし、翌9日「白鳥の湖」昼(ルンキナ、チュージン)に行って、なんというか、う~~~~む、やっぱり日本人は、「白鳥が好きなんだ~~~~~~」と、複雑な気持ちになりました。まず、客入りが違ってて。(いや、企業努力ではけたのか?の部分があれば、うわべの席の埋まり方と本当の人気を、正比例とはみれないけど。)ただ、白鳥の方が、受けやすいというか、もっと言えば、そこそこに段取りを踊れば、それなりに安定して成功出来る演目なのかも???これは、何でなのか、だんだん分からなくなってきた・・・。ラントラートフの悪魔が良かったです。彼が気を吐く踊りを見せるの、はじめて見ました。イケメンとかより、やはり、踊りがきちんと踊れることが大事。

プリマのルンキナは堅実な出来。オデットより、オディールの方が生き生きしてたかも。
でも、以前新国立劇場バレエ大阪公演の方が、全然技術が高かった。(相手は、ルンキナさんがお気に入りのウヴァ様だから、しょうがないけど。)こんなに差がつくのかと、黒鳥アダージョのバランスと、コーダのグランフェッテで、いささか複雑な気分。

8日夜の出まち。サイン会終了後も、ヴォルチコフさんが、長々とファンの女性たちの写真撮りに応じてあげてらして、そのたたずまいに見とれました。少しお疲れのご様子にお見受けしたけど、ファンの女性たちが望んでいるから、と、それをおして、一生懸命笑顔を作って立っている、まっすぐな脚と姿勢と、心意気のうつくしさ。
これぞボリショイの男性舞踊手、という風情。こういう、人民のよろこびに身を捧げる、みたいな古い感覚は、この人あたりで終わりかも。

新しい世代、9日昼、悪魔のラントラートフの、都会的で品の良い私服姿での、サイン、写真の出まちファンサービス(幅広い年齢層の男女に慕われて、だんだん自然に笑顔になってました。男性にも人気。)も微笑ましかった。ルンキナさんはいつもながら、ファンの前で優しい奇麗な笑顔。ほんとはプリマはお疲れが普通なんだけど。オフはいつもきれい。

主役二人のサイン会の仕切り役の、JA社の背の高いベテランの男性社員さん(或いは上の方?)が、主役二人のサイン会の指示を出してらして、とても感じの良いのが、印象に残りました。寒い中、連日お疲れ様でございました。

友人の話では、ライモンダの主役二人のうち、アラシュより、アレクサンドロワの方が、もう少し踊りが繊細だった、との事。アラシュは昔から、少し硬質な踊り手だった。

舞台の話はまた、後日まったり。



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「白鳥の湖」&「スパルタクス」、芸術性と娯楽性

2012-02-06 02:57:52 | バレエ
バレエ「スパ」の感想書こうと思ったけど、既に「白鳥の湖」上演に。

今回のグリゴローヴィチ振付「白鳥の湖」('01年改訂版)について、日本初演の'08年前回ボリショイバレエ来日公演、良くも悪くも、ちょっと話題になった。私もバレエ友達たちに、2,3質問を受けた。

一つには、「この作品の終幕は、どういう意味なのか?。夢から覚めたのか?王子が絶望して終わる悲劇なのか?」

もう一つは、別の友人から、 「あの悪魔の、途中でのこの行動は、どういうことなの?」と、劇の進行上での、具体的な質問。

【今年の上演】
私は日本ツアーの後半に「白鳥」を観に行くので、状況分らないが、今回のダンサーは、前回と同様の上演でなく、踊り手が、作品の真意を知らずに踊る可能性もあるので、今回のキャッチコピー通り「永遠の古典」として、娯楽として見るのも一興。

(高度で哲学的な芸術としても、或いは上質のエンターティメントとしても、楽しめるのは、グリゴロ作品の幅の広さ。スパも、今回は、冷戦時代等のソ連の絶対的な英雄像、V.ワシリエフの形象とは異なる、現代青年の葛藤を描けていて、面白く見た。)

しかし、中には、「なぜあの終わり方なの?」と疑問を持つ方もあると思う。それで、作品の内容について、知ってる事を書いておきたい。

【白鳥の湖の真意】
いちばん簡単に言うと、人が大人になる、という、苦い成熟を示唆した物語。

★上述の、友人の質問を引用すると、
・最後は、、「全部王子の夢だった」は、間違い。
・夢オチ⇒間違い。

また、「最後は王子が絶望して終わる悲劇」というのも、作品の真意上は、正しくない。

【白鳥姫】まず、この作品は、リアリスティックな話ではなく、シンボリック、象徴的な作品。
通常の白鳥姫は、生身の女性だが、この作品ではそうでなく、王子(=青年)の心の中の像。

(幻影、と言ったら、身も蓋もない?。)
だから、この話は、リアリスティックな王子と姫の2者の恋愛ドラマでは、ない。

【悪魔】悪の権化ではなく、王子を悟りに導く存在。と言えば、いちばんはっきりする、かな。王子を覚醒に導く存在。

・1場は、いつも通りの白鳥の湖。
・2場、"湖のほとりの場"から、作品の構想が,色濃く反映。
まず、白鳥姫は、あたかも、ビデオテープの巻き戻しの如く、不自然で作為的な現れ方をしていなかったろうか。この辺りに演出意図が見てとれる。白鳥姫は、リアルな生身の女性というのとは、少し違う存在である、と。自然に出合ったのでなく、予め仕組まれた出会い、との暗示。

(ただし、全ては洗練され、スタイリッシュで上品な演出が光る。照明、装置もとても良かった。)

ハッピーエンドの改訂前の「白鳥」は、こうではなかった。そして、’01年悲劇版では、白鳥姫は、人形か何かのように、悪魔(換言すれば、運命の導き手)の企てで、王子(=青年)の前に現れる。

なぜ、悪魔はこうするのか?・・・(全部解説すると身も蓋もないけど、)
若い人に、まず、「理想」を伝える為、と言えば、あからさま過ぎるけど、分りやすくデフォルメすると、そんな感じ。
(そして次に黒鳥姫によって、「幻滅」を伝え、最後に悟りを開かせる、と言ったら、デフォルメしすぎかな。ここまで言わなきゃ分らない批評家はいるので、あえてデフォルメ説明。)

その前に登場する悪魔。王子の後ろに背後霊のように張り付いて、怪しげな動きをする。
あれは、夜道の痴漢ではありませんで。

'08年の時は、モスクワ初演キャストのウヴァーロフとコンビのベロゴロフツェフの悪魔は、腕を振り上げ、王子を操るような動きを示し(名古屋初日)、それに呼応するように、王子は、う~ん、くらくら~と、力なく意識がぼやけたような催眠術にかかる人、みたいな動きをしてた。

(蛇足ながら、入団歴の浅いシュピレフスキーの悪魔は、作品意図を深くは解説されてないらしく、もう少し普通の古典バレエの悪魔に近かった。王子のウヴァーロフが、それに合わせて多少雰囲気を変えていて、そういった個々の立場の差異による創造性も、面白く見た。)

と、2場・白鳥姫の場までは、白鳥姫とは、王子(若い男性)の,胸の内の理想の表象、そのものであることが示される。そして、それは、悪魔によって、用意された流れ。

・そして2幕1場のオディール。これは、欺瞞と誘惑に満ちた存在。(前回の公演パンフでは、少年が狡猾さや誘惑と闘い、青年として自立していく時に味わう、失望の象徴とも。)或いは、「オデットが,若い青年の女性観を映すのに対し、オディールは、成熟した男性の女性観を表す」、とも解説があった。

・結果から見れば、オデットもオディールも、悪魔(或いは運命の神?)が、青年に覚醒を促すために、悟りを開かせるために出会わせる、人生上の試練の材料みたいなもん。

(悪魔は、青年に教えたい事があって、彼に、まず理想への夢を最初に見せ、そうは言ってもなかなか非理想的な世界もある事を見せる。)

・そして終幕。(ネタばれします。未見で聞きたくない人いたら、以下はスルーを。)
定番通りになるか、と思わせておいて、肩透かしを食わせるように、理想を求めて闘う王子は、理想を手にできるか、と思ったら、いつもと違う音楽に。

私は2回見て、1回目は、白鳥姫が、悪魔に横抱きにされ、ゴロンと人形のように床にそのまま、転がされ、これで白鳥の死。明らかに、人間の死じゃない。血の出てない感じ。

そして王子が立ち尽くして終わった。

・別の公演日(皆が見た、東京初日)は、ホールが違ったせいか、勝てそうだと思ったのに、突然王子の目の前から、白鳥姫が忽然と消えたように見えた。紗幕の使い方と照明が、秀逸!
王子の心の世界を、そのまま見ているようだった。

王子は、膝を屈し、理想が失われた事を嘆き。それで幕。

あの、”肩透かし感”が、演出の上手さ素晴らしかった。勝利し理想を手に入れる事が出来ると信じた王子と、いつもの音楽でハッピーエンドの白鳥に慣れた観客の意識が重なる。

王子も、観客もまた、裏切られる。そこが、おとぎ話の古典バレエとは本質では違ってて、そこは良かった。そうはいっても、1回目の地方で見た演じ方の方が、作品の意図は伝わりやすかった。

私の見た2回目の公演、あれだと、理想の世界(或いはオデット姫)を失った王子が、絶望して終わったように、誤読されたお客様も、少なからずあったのでは?
やはり、この作品は、解説があった方がいい。

【結論】あの終幕は、「最後に理想の世界を取り返そうとして、(王子=青年)は闘うものの、最後には理想の世界を手に入れる事は出来ず、全てを受け入れて、現実の世界に残った」というもの。

※王子の絶望を表した作品ではなく、失意の後、そこから現実に向かう。ここがポイント。私が見事だと思ったのは、「現実を受け入れる」ことの大変さを分るから。

手法として、それを全部出さずに、観客にもショックを伝えて考えさせるような、終幕は、ブレヒト演劇の異化効果(幕切れで観客の感情に水を差し、気づきや覚醒を促す演出は幾つもある)を思わせた。ただ、とても上品に出来てる。だから分りにくいと思う。もっと分りやすい演出に変えると、あの上品さは失われる恐れがある。

オデットが死んだ事を、オデット姫と言う女性が死んだと解釈するのは観客の自由だけど、どちらかと言えば、シンボリックな作品なので、オデットを理想の表象と見て、

青年は理想を抱くけれど、現実は理想の通りにはならない。そして青年は、この、理想の失われた現実世界で、生きて行くのだ、と私は思った。
何という、苦い成熟!、と。

最初の友人の質問に戻ると、王子は絶望して終わるのではなく、最後には、理想の失われた、困難な現実を受け入れる事を示唆して終わるのが、本来の主旨。

とても現代的で、哲学的な、深い内容を持った、素晴らしい芸術と思います。
この構想を考案したグリゴローヴィチ、そして歴史的な初演第一キャストとして、見事な解釈を見せたウヴァーロフの知性には、脳天殴られるほど衝撃を受けましたが、ただ、ウヴァーロフ自身が、マスコミへのインタビューで、作品の意味する所まで、「お客様に伝わるかどうか」と、謙虚に伝わりにくさを語っていて、結果その通りになったと思います。

この、「白鳥」の真の主人公は王子で、その表現内容の示唆する所は、現代の私たちに通じるものであり、理想の失われた苦い現実を受け入れて生きていかなければならないのは、例えば、王子を演じたウヴァーロフの、今の現実でもありましょうし、彼と言う理想的ダンスールノーブル、理想的ステージアーティストを失って、東京文化会館の舞台に愛しい君の幻を見る、この私のリアル現実でもあるのですが。友人たちとは、話す時間が短く、尻切れで時間切れ。

普遍的な真実を描く、という意味では、色んな現実に当てはまっていく話だな~と、何かにつけ、私は感心するばかりです。

君の居ぬ、舞台に 君のまぼろしを見ぬ
私は、彼の演じたジークフリート王子のようには、まだ悟れない・・。

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