最近見たバレエのテレビ放映の中で、個人的にはピカ一だった。
ニコラ・ル・リッシュというと若いときはパリ・オペラ座のイケメン 若手エトワールの印象が強く、楽屋裏で女の子たちに囲まれている光景や、年上のプリマたちが楽しそうに踊ってる姿を思い出す。
世界フェスのギエムとのコンビも、「アパルトマン」では作品をよく表現してるのはもっぱらプリマの方で、ニコラは彼女にとってのいい相手役、という以上の印象はなかった。
世界フェスでニコラが踊ったマクミラン振付、チェーホフ原作「3人姉妹」に至っては、知人のニコラのファンが、「いったいあの作品をいままで踊ったことあるのかしら?」と言っていた位、役を表現するにはいまひとつ。彼はスター性の勝った人かと思った時もある。
演技的には、パッションを表現できる人と思っていた。今回はそれ以上に繊細な表現を見ることが出来た。
今回のテレビ放送分は、よく出来ていた。こういう舞台を放映してもらえるダンサーは幸せだと思う。コンデションのよくない舞台を放映されるダンサーもいる。
プティ版「カルメン」全幕。パリ・オペラ座公演は、やはりプティのバレエ団のそれとは細部の印象が違う。ニコラは、私生活上のパートナー、クレール・マリ・オスタを得て、ギエムとのコンビ以上に繊細な表現で魅せた。
ニコラ・ル・リッシュの表現は素晴らしかったと思う。
踊りも、同じ衛星放送で見たプティ振付「スペードの女王」のニコライ・ツィスカリーゼと比較すると、ル・リッシュの高いジャンプや踊りの気品、安定感には感心させられてしまった。
「ハンサムでかっこいいニコラ」、アイドルのニコラでなく、芸術家としてのニコラ・ル・リッシュを、ここまで存分に見ることが出来たのは、自分にははじめてだった。(パリまで見に行ってるわけじゃないから。見てるのは所詮氷山の一角)
やはり「アイドル」だけでは本音は物足りない。
今時は皆、「顔」「顔」というから、人には調子を合わせていても、本当は、いい芸術表現に出あいたいんだなと、こういう時、自分の本心がわかる。
この版を以前他のダンサーで見たときほど、音楽は聞こえてこなかった。昔興味深く見たプティ版は、今回は色あせて見えた。
「若者と死」は撮影、顔がわりとアップでしたわな~。
「ダンスマガジン」その他、日本のバレエマスコミの姿勢も、バレエファンのミーハー化に一役買ってる気がした。
作品の細かい意味など考えさせられながら見た。バレエ関係書籍のそういう解説は、思えば少なすぎる気がする。