ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

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北山修監修・高野晶編著『週一回サイコセラピー序説-精神分析からの贈り物』2017・創元社

2024年06月28日 | 心理療法に学ぶ

 2018年のブログです

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 北山修さんが監修をした『週一回サイコセラピー序説-精神分析からの贈り物(2017・創元社)を読みました。

 去年秋の精神分析学会で北山さんや高野さんなどからご紹介のあった本で、今、精神分析学会で論議されている精神分析と精神分析的心理療法との異同について考えるのに、最適な一冊かなと思って読みました。

 なかなか刺激的な本です。

 これまであまり明確に議論をされてこなかったことがどんどん明らかにされるせいもあるでしょうし、精神分析的心理療法という古くて新しい心理療法を皆さんがなんとか確立していきたいという意気込みみたいなものも感じられます。

 もっとも、じーじは精神分析の訓練を受けたこともなく、本を読むだけで、どちらかというと精神分析的心理療法を学んだり、実践する立場ですので、冷静に勉強をしたいと思って読みました。

 本書では大勢の人が論文を書いており、たとえば、北山修さんの独創的な論文には本当に感心させられますし、鈴木龍さんの事例と理論にはこころから納得させられます。

 また、高橋哲郎さんの論文では、あの土居健郎さんが出てきて、とても感激させられます。

 そんな中で、今回、じーじが一番、勉強になったのが、先日もご紹介をさせていただいた生地新さん。

 生地さんは「子どもと思春期」という論文で、子どもや思春期の心理療法について詳しく説明をされ、週1回面接の意味やそれ以外の面接との比較についても述べられていて、月1~2回程度の面接が多いじーじの実践にもとても参考になりました。

 まだまだ読み方が浅く、理解も十分ではないと思いますので、今後、時間をかけて読み込み、実践に活かしていきたいなと思いました。      (2018 記)

 

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沢木耕太郎『勉強はそれからだ-象が空をⅢ』2000・文春文庫-知らないということを知っていること

2024年06月28日 | 沢木耕太郎さんを読む

 2019年のブログです

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 このところ、沢木耕太郎さんにはまっていて、本棚を眺めていたら、『勉強はそれからだ-象が空をⅢ』(2000・文春文庫)が目につきましたので、再読しました。

 最近は、作家さんの執筆の順番などは無視して、見つけた順に読んでしまうことが多いのですが、一応、再読なので(といっても、記憶がなくなっているのですが)、それで勘弁してもらっています。

 しかし、それはそれで、また面白味があって、今の興味と年齢と経験が混然一体となって(?)、なかなかスリリングな読書ができる気もしています。

 さて、本書、例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、知らないことを知っていることの大切さ。

 なんだか、ソクラテスの言葉みたいですが、沢木さんはこのことを何度も強調しています。

 へんに知っているつもりになると、知ることへの意欲が減じてしまい、仕事や生きることが中途半端になることを心配されます。

 そして、知らないということを知っていると、語ることに慎重になる、といいます。

 テレビなどで、薄っぺらな言葉が氾濫している現状を見ると、貴重な意見だと思います。

 さらに、知ることで、驚き、喜び、打ちのめされ、感動する、というこころの柔らかさを持っていることが大事、といいます。

 知ることが生きる喜びや生きる充実感になることが理想なのだろうと思います。

 二つめは、ガルシア・マルケスの言葉を引用しているところ。

 「たとえば、象が空を飛んでいるといっても、ひとは信じてくれないだろう。しかし、4257頭の象が空を飛んでいるといえば、信じてもらえるかもしれない」

 言葉の重みをこう述べます。

 意味深長ですが、我流の解釈では、文章は漠然としたものではなく、ていねいでこまやかな文章が人を動かす、ということかな、と思ったりします。

 いい本を再読できたと思います。     (2019.9 記)

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 2023年秋の追記です

 知らないことを知っていることの大切さ、という言葉は、わからないことに耐えることの大切さ、に通じるような気がしますね。

 そのあとの、知らないということを知っていると、語ることに慎重になる、という言葉もすごいです。

 白か黒か、右か左か、と、短絡的、ヒステリー的に決めつけないで、ずっと考え続けることの重要性を教えてくれるようです。     (2023.9 記)

 

 

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