2020年2月のブログです
*
桂望実さんの『ボーイズ・ビー』(2007・幻冬舎文庫)を再読しました。
面白かったです。
12歳の男の子と70歳の靴職人との物語。
男の子は母親を病気でなくしたばかりで、小1の弟の面倒を見ていますが、弟は母親の死がよくわかっていない様子。
いろいろと心配事が絶えません。
消防士のお父さんからは、お兄ちゃんだから、弟の面倒を見てやってくれ、と頼まれますが、自分も泣きたい気分を抱えています。
一方の、70歳の靴職人。
頑固一徹の職人ですが、年齢のせいか、納得できる靴づくりができなくなってきていて、悩んでいます。
そんな二人が出会い、子どもの悩みに老靴職人が応じて、さまざまなドタバタ劇が起こります。
とても楽しいですし、微笑ましいです。
時には、喧嘩もしたり、仲直りをしたり、じーじと坊やのてんやわんやの冒険談です。
そして、子どもの願いに周りのおとなも気づいて、おとなも成長します。
正解はないのですが、わからないことはわからないままで進んでいこう、という物語なのかもしれません。
読後感はさわやかです。
いい小説だなあ、と思いました。 (2020.2 記)
*
2020年7月の追記です
当時は気がつきませんでしたが、わからないことはわからないままに、というのは、あいまいさに耐える、という、ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力、消極的能力)に通じているようです。 (2020.7 記)
*
2021年1月の追記です
ネガティブ・ケイパビリティについては、「居心地」さんのブログが、2020年6月に、精神科医で小説家の帚木蓬生さんの『ネガティブ・ケイパビリティ』(2017・朝日新聞出版)という本をていねいにご紹介されていて、とても参考になります。 (2021. 1 記)