2023年5月のブログです
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立原正秋さんの随筆集『夢幻のなか』(1976・新潮社)を読む。
すごく久しぶりの再読。
本棚の横に積んであった単行本の山の中から発掘した(?)。
1976年第1刷。貧乏学生だったのに、新刊で買ったらしい。相当、立原さんに熱中していたようだ。
1976年(昭和51年)といえば、じーじは大学4年生。
大学生のくせに、授業に出ないでこんな本(立原さん、ごめんなさい。先生方もごめんなさい)を読んでいたわけだ。
しかし、今、読んでもいい本だ。
あとがきに、立原正秋さんの3冊目の随筆集とある(1冊目、2冊目は、まだ本の山の中で迷子になっている)。
立原さんの随筆といえば、読んだことのあるかたはおわかりだろうが、美しいものにはとても優しいが、醜いものや卑怯なものにはとても手厳しいことで印象的だ。
小説も同じだが、随筆では特にすごい。
庭や山野の草花には優しく、季節の魚を愛でるが、一方で、文壇の老いた先輩や卑劣な同業者には容赦がない。
痛快といえば痛快だが、こちらが心配になるくらいやっつける。
こういう美意識を身につけた作家の文章を読んでしまうと、読者もたいへんだ。
大学生でこんな作家に出会ってしまい、じーじの美意識にもかなり影響を受けた気がする(その割に、駄文を書いているが…)。
この随筆にたまに登場する息子さんや娘さんは、当時のじーじと同年代。
じーじは立原さんに理想の父親像を見ていたのかもしれない。
読後感のよい随筆集である。 (2023.5 記)
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2024年5月の追記です
この時、授業をさぼって立原正秋さんの本を読んでいたが、よく考えると貧乏学生だったので教科書は買っていなかった気がする(!)。
教科書を買わずに、立原さんの新刊書を買っていたわけだ。ひどい学生だねぇ(!)。
もっとも、裁判所に入ってみると、先輩から、小説をたくさん読むようにと言われたので、まあ正解だったけど…。
学校の教科書は全然読まなかったけど、人生の教科書をいっぱい読んでいたわけだ。かっこういい! (2024.5 記)