2019年のブログです
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立原正秋さんの『冬の旅』(1973・新潮文庫)を久しぶりに読みました。
おそらく30代の終わりくらいに再読をして以来、約30年ぶりくらいの再読です。
とてもいい小説で、記憶力の悪いじーじにしてはめずらしくあらすじを覚えていて、再読が久しぶりになってしまいました。
本当にいい小説なので、あらすじだけでなく、文章もじっくりと味わうことができるのですが、すごいご無沙汰でもったいないことをしてしまいました。
今回は、文章を丁寧に味わいながら、ゆっくり、ゆっくりと読みました。
やはりすごい小説です。
文章がたびたび胸に迫ってきて、こころを平静に保つのが難しくなることもありました。
じーじが持っている文庫本は1973年に購入したもの。
大学1年の時です。
おそらく高校時代に「冬の旅」のテレビドラマを観て、印象に残っていて、原作を読んだのだと思いますが、当時、ものすごく感動をしたのを覚えています(原作は読売新聞夕刊に1968年から1969年まで連載されたようです)。
そのころ、じーじは中学校の社会科の先生になりたかったのですが、この小説を読んで、中学校で不良生徒の相手をしたいな、と強く思ったものです。
結局、いろいろあって、家裁調査官になり、非行少年の相手をすることになったのですが、なぜかわかりませんが、じーじは昔から非行少年に親和感があり、この小説を読んで、その感覚がいっそう強まったように思います。
官僚や社会的に偉いとされる人より、貧乏や不幸な生い立ちの中で格闘している彼らに共感をしてしまいます。
自分が貧乏で苦労をしたということがあるのかもしれませんし、自分の中の反体制派の感覚やアウトローの感覚が彼らに親しみを覚えるのかもしれません。
しかし、ずるい人間を許せないという点では、この小説の主人公と一緒です。
ずるくない非行少年には優しいですが、ずるい非行少年やずるいおとなは許せません。
厳しくいえば、結局はおとなになりきれないということなのかもしれませんが…、でも、そういう人生でいいや、と思っています。
一所懸命に生きつつも、うまくいかない人たち、非行少年もそうでしょうし、病気の人たちもそうでしょう。
そういう人たちを理解できるおとなでいたいな、とつくづく思います。 (2019.5 記)
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2023年12月の追記です
立原さんの『随筆・秘すれば花』(1971・新潮社)を読んでいると、この小説の主人公が少年院で知り合って親友となった安という青年が出てきますが、この安が連載中の小説の中で交通事故で亡くなった時に、立原さんの行きつけの飲み屋から追い出されたといいいます。
安のような善良な男を殺した小説家に酒はのませられない、と言われたらしいのですが、そんなフアンがいる小説が今までにあったでしょうか。
立原さんは、連載が終わったので、一升壜をさげてあやまりに行くつもりだ、と書かれていますが、そういう立原さんも素敵です。 (2023.12 記)
「冬の旅」私も見てました。
きっと、年齢的に同じお年頃ではないでしょうか!
内容はあまり記憶にありませんが、確かあおい輝彦が主演だったと思います。
じいじさんも、努力の方だったのですね!
昨年のブログに、松山千春のプロデューサーの「一本の赤い薔薇」のコメントをくださいました。
覚えていらっしゃいますか?
あの時のコメントは、とても嬉しかったです。
本題からそれてしまいましたが、「冬の旅」の本は
読んでませんので、是非読みたいと思っています。
わたしは主人公の親友の安の奥さん厚子を演じた大谷直子がすごく印象に残っています。
原作でも主人公と厚子の間の感情はとても切ないものがあります。ぜひ読んでみてください。
松山千春さんの赤いバラのお話も覚えていますよ。喜んでいただけて、とっても幸せです。