2021年11月のブログです
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渡辺一枝さんの『チベットを馬で行く』(2003・文春文庫)を久しぶりに読む。
一枝さんは、ご存じのかたもいらっしゃるだろうが、シーナさんの奥さん。
シーナさんが世界中をズンガズンガと歩くのと対照的に、一枝さんはチベットを集中的に旅する。
子育てに一段落してからの一技さんの熱狂的なチベット訪問は、シーナさんのエッセイを読んでいてもよくわかる。
そんな一技さんが半年をかけて広大なチベットをテント生活で旅した記録だ。
荷物や食料を同行する1台のトラックにサポートしてもらうが、案内人と馬や徒歩でのキャンプ旅行である。
すごい!の一言。
本当に好きでないとできないことだ。
わざわざ馬で旅行をすることについて一技さんは、車の移動では気がつかないチベットの自然や人々の生活を知りたいため、という。
たしかにそうだな、と思う。
速いだけだけではわからないこと、ゆっくりゆえにわかることが世の中にはたくさんある。
そして、ゆっくりの旅の中で、人は内省的になる。
一技さんも、娘さんや息子さん、そして、シーナさんのことを想い、さらには母親や父親のことを想う。
忙しい現代に貴重な紀行である。 (2021. 11 記)