2019年5月のブログです
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下坂幸三さんの『拒食と過食の心理-治療者のまなざし』(1999・岩波書店)を再読しました。
これもかなり久しぶりの再読。
昔、家裁調査官の時に、万引きをした女の子が摂食障害の子で、対応に苦労した時に、下坂さんの本で勉強をしたことを思い出します。
いわゆる不良少女とは違う真面目な女の子の非行で、非行というよりやはり精神的な病いとして理解する必要を感じたことがありました。
以来、摂食障害はじーじの中で大切なテーマの一つですが、なかなか難しいです。
この本もアンダーラインや付箋がいっぱいですが、どれくらいきちんと理解できているのかは心許ないですし、ましてやそれを心理療法の中でどれくらい実践できるのかについてはまだまだだな、と思ってしまいます。
それでも、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、摂食障害と強迫症、境界例の関係。
内心の不安から自分や周囲をコントロールしようとする心性ということで、これらの病いは似ているところがありそうです。
完全か無、善か悪、白か黒、といった極端な考え方も共通しています。
ひょっとすると少しだけ緊張感に満ちた家庭での、自分を守る手段の一つなのかもしれません。
二つめは、上記と関係しますが、過食や拒食にも理由があるので、その理由、利益をていねいにきくこと、いわゆる、下坂さんのいう現象論が大切ということ。
そして、患者さんの心的現実には安易にうなずかずに、冷静な確認が必要となるようです。
三つめが、できれば家族同席面接で、親子、それぞれの言い分をていねいにきいて、それを言語的になぞり返して、相互に確認をすること、これが重要になるようです。
いずれも、行なうのはなかなか難しいことで、訓練と実践が必要で、今後さらに勉強を重ねていきたいと思いました。 (2019.5 記)
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2022年5月の追記です
ここでも、思うことは、こころの成熟は、あいまいさに耐えること、白も黒も灰色もある世界を理解できるようになることなどが大切になりそうな気がします。 (2022.5 記)