2019年のブログです
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藤沢周さんの『界』(2019・文春文庫)を読みました。
これも旭川の本屋さんで見つけました。
藤沢さんの小説は初めて。
新潟出身で、あの水島新司さんのマンガのモデルで有名になった新潟明訓高校卒業と聞いています。
BSの「週刊ブックレビュー」や地元新潟のローカル番組でそのお姿はお見かけしていますが、なぜか小説はなかなか読めませんでした(藤沢さん、ごめんなさい)。
そして、今回、新潟でなく北海道で、藤沢さんの『界』という不思議な小説を読むことになりました。面白いものですね。
『界』は本当に不思議な短篇小説集です。
解説の姜尚中さんが泉鏡花の『高野聖』に比していますが、確かにそんな雰囲気が漂います。
50過ぎの中年おやじが、迷い、苛立ち、流されます。
60過ぎのじーじも身につまされます。
子どもの頃、おとなや親はどっしりしているもの、と思っていますが、そんなことはまったくありません。
そんな情けない姿が正直に、しかし、生と性を見すえてじっくりと描かれます。
そう、ここには生きている人間がしっかと書かれています。
若い人たちには少しわかりにくいかもしれませんが、おとなの人間の一面が見事に描かれたいい小説だと思います。 (2019.8 記)