![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/2d/0b56b9f63209fe132954089cab2ede63.jpg)
ホセ・クーラが演出・舞台デザインなどを担当した、ストックホルム王立歌劇場でのプッチーニのラ・ボエーム。
テーマは、「スカンジナビアのボエーム」。これまで、(構想編)、(演出メモ編)、(舞台模型編)と紹介してきました。
ようやく今回は、実際の舞台の紹介にうつります。
2015年11月21日の初演を前にして、クーラは、自分のフェイスブックに舞台のハイライト写真をアップしました。
クーラ自身が書いた短い紹介文が、それぞれの写真についています。ひとことのセリフ、舞台の情景を説明するものとなっています。
これまで紹介したクーラの構想、演出メモ、そして前回紹介した舞台模型をふまえ、実際の設計・設営、リハーサルをつうじて、どんなふうに舞台に結実していったのでしょうか。
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●第1幕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/5b/1176fe266aceb4453a049329342dad77.jpg)
デドルアルト・グリーグ(作曲家・ショナール役)がワインのボトルを開けている。
“飲むのはここで! だが食事は外だ ”
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/9a/dd0e1296a1c7188260647e03135844ff.jpg)
部屋に1人残ったアウグスト・ストリンドベリ(作家・ロドルフォ役)
“だめだ、乗ってこない。”
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/9e/2a743d0982428934785d3f8cc21a7ab1.jpg)
ストリンドベリとミミとのはじめての出会い
"Sì,Mi chiamano Mimì"
“はい、みんなは私をミミと呼びます。”
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/a1/9137d66b9a8bd6aa63aaaa008f99e100.jpg)
"Ma, quando vien lo sgelo, il primo sole è mio..."
“雪解けの季節がやって来る時、最初の太陽は私のものなのです。”
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/36/da24761ccbf4b89256ccef639cdef511.jpg)
"Dammi il braccio, mia piccina..."
“腕を貸して、僕のかわいい人。”
●第2幕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/4c/39b2f0c42d7ca9d23b7c7030e1874181.jpg)
ムンク(画家・マルチェロ役)は、彼の絵を仕上げる。
日没のガムラスタン(ストックホルムの旧市街)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/ce/e29a44fcf6fe5623957cbdf03145185a.jpg)
旧市街ガムラスタンのストートリィ広場の市場。
背景には、私たちが“偽造”したムンクの絵が、有名な広場の建物と空の輪郭を描く。
*偽造というわけは、こちらをお読みください → (演出メモ編)
●第3幕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/f0/dcf8b71661ec415d5fa04cbbea984fdb.jpg)
”Early morning... (third act)”
早朝‥(第3幕)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/ba/ebcf6a39eb193da8abeb4003b1d5879a.jpg)
後方ではトゥラとムンク(ムゼッタとマルチェロ)が争っている。
前方では、ミミとアウグスト・ストリンドベリ(ロドルフォ)が別れの歌を歌っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/32/ee54a76695758b881a810041c17ba5f9.jpg)
"The two friends grieving the loss of their lovers..."
“2人の友人同士は、恋人を失ったことを嘆いている”
心象風景としてムンクの「叫び」が背景に。
●第4幕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/46/da77849513d01d7894ec8b69deec8514.jpg)
“私が来たときのこと、あなたは覚えてるかしら? 初めて、ここに。”
ミミが歌う間、背景に掲示された絵から、女性の存在がなくなっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/6b/9573a53ab55b1da9171cd5fc44837870.jpg)
キルケゴール(哲学者・コルリーネ役)の“古いコートよ”のアリアの終りに、グリーグは彼の肩を抱く。
ミミとアウグスト(ロドルフォ)は、彼らの傍らのベッドに。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/ec/a8852021db4493cc12cfa11cdb624010.jpg)
ミミとアウグスト(ロドルフォ)
“みんな行ってしまったのね?私は眠ったふりをしてたのよ。あなたと二人きりになりたかったから”
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/b3/5f5409d4b3489e9624bebb69786edd6c.jpg)
ラストシーン。
ミミの体はベッドに横たわり、彼女の魂はムンクの絵の中に戻っていく。
舞台中央で、画家は自分の絵を凝視し‥‥
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全てのシーンで、このようにムンクの絵を利用して、クーラの「スカンジナビアのボエーム」が表現されています。
ムンクと言うと、日本では「叫び」の絵だけが有名ですが、このようにさまざまな雰囲気とタッチの絵が残されていることを、私は初めて知りました。
クーラの目的は、有名人の伝記的な舞台にすることではなく、あくまで、普遍的な、若者たちの愛と喪失、模索と失敗、芸術や政治・社会への情熱、自己実現への努力など、青春群像を、スカンジナビアで実在した文化的、創造的な運動が繰り広げられた時代を借りて描くことでした。
実際の舞台の映像を見ることができないのが残念ですが、これらの写真をみると、とても抒情的で、少し幻想的、そしてとても美しい舞台になったように思われます。
クーラのスカンジナビアのボエームの紹介も、次回でようやく最後(笑)になります。次回、初日の舞台でのサプライズと、反響、演出家クーラの思いなどを紹介して、終りたいと思います。
劇場HPにリハーサルの写真が多く掲載されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/c9/bd9bc9c975411c3243f14166d0b5b885.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/95/8e46d2afcb967d74b97d7f2b3bdddff4.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/7f/b79b0af31607dcd3ef59c00fbc61955c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/cb/31e8bdcd3091abd1863cb0c59a7b23fc.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/34/3a7f046277b0d84f1d1868da1fd4e8fc.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/62/cadd936c01e69fa6bfa9049200813d80.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/2c/fd41a5058d2acdeb053b6301ae332d42.jpg)
●劇場がアップした予告編です。これで舞台の雰囲気がだいぶつかめます。若い出演者たちが、役柄になりきった演技を見せています。
La Bohème - trailer
●おまけ
クーラ自身が歌う、第1幕の二重唱「愛らしい乙女よ」、2012年ロシアのクレムリンでのコンサートより。ディナーラ・アリエヴァとホセ・クーラ。
Dinara Alieva & Jose Cura. Duet from "La Boheme"(Kremlin)
*写真はクーラのFB、劇場のHPからお借りしました。