初日を大好評のうちに終えた、オマーンの王立歌劇場マスカットの道化師の公演(3月15、17日)。今晩は2回目、最後の公演がそろそろ始まるころです。
この公演の前日に、オマーンで、ホセ・クーラとローマ歌劇場の出演者らが記者会見を行ったようです。
いくつかの記事から、主にクーラの発言部分、それに触れた記述を抜粋して紹介したいと思います。
クーラは、インタビューのなかでも述べていますが、ルーツのひとつが中東にあります。父方の祖父母がレバノンからの移民であり、クーラの黒い髪、彫の深い顔立ちは、この地の人々の面影を感じさせるように思います。
またインタビューでは、オペラ道化師の物語に関連して、この間、ハリウッドの映画界から始まった、セクシュアル・ハラスメントや性暴力へのNO!を表明する#MeTooキャンペーンについて言及しています。オペラは、現代の社会と深く結びついている、そうでなければならない、というのがクーラの信念でもあります。
いつものことですが、語学力不足による誤訳、直訳、お許しください。
なお、クーラの「道化師」についての解釈、カニオ論などについては、これまでの記事でも紹介しています。
→「ホセ・クーラ 道化師の解釈 "私は仮面の背後にいる"」
→「カヴァレリア・ルスティカーナと道化師の演出」
≪イタリア歌劇「道化師」は、現代の時代への完璧なメッセージを持っている≫
「今日の世界を見ると、最も欠けていると思われるひとつは、仲間に対する敬意(リスペクト)だ」――男性の主役を演じるアルゼンチン人のクーラは語った。
「数ヶ月前、#MeTooキャンペーンがソーシャルメディア上を席巻した。この道化師のドラマは、本質的に、男性が女性をどのように扱っているのか――まるで彼の所有物にすぎないかのように――ということについて、非常に重要なメッセージを送っていると思う。誰かをひどく扱うならば、それは自分を悩ますために戻ってくるだろうということだ」とクーラは言う。
イタリア人の劇作家、ルッジェーロ・レオンカヴァッロによって書かれた道化師では、カニオは孤児の女の子ネッダを拾って育てる。その後、彼は彼女と結婚する。彼女を引き上げるのと引き換えに、彼は彼女に完全な服従を期待するが、それはネッダが表面上だけで適応している状態だ。ネッダとカニオは旅芸人で、南イタリアの村で一座の仲間と公演する予定だ。カニオが村にいる間に、別の男シルヴィオがネッダに愛を告白する。夜の芝居の間・・カニオは感情を抑えこみ、彼の顔は青白くなる。観客は、メイクアップのために彼の顔色が青くなっていると思い、彼のパフォーマンスを賞賛する。芝居を忘れ、カニオはネッダの相手の名前を知ろうとするが、彼女は言うことを拒否する。激怒し、カニオは感情のおもむくままの犯罪でネッダを刺すが、それは当時、罪にはならず、それからシルヴィオを舞台の上で突き刺し、演技を終わらせる。カニオはその後、シルヴィオを刺したことによって、それは殺人とみなされ、逮捕される。
「道化師の物語にはたくさんのプロットがあると思うが、それは、カップルが日常的に実際の生活の中で直面する問題のいくつかのコレクションだ。もちろん、あなたはそれらのすべてに直面したわけではないだろうが、演劇は常に、我々の日常生活の中で起こっていることの反映である。このように関連づけできることが演劇の強さだと思う」とクーラは語った。
「ネッダはカニオに対して、彼女に対するひどい待遇はもうたくさんだと伝え続けたにもかかわらず、彼は聞く耳を持たない。そうだ、彼は彼女を何もないところから引き上げてきた。しかしそれは、“彼がしてきたことは立派な心からのもので、彼女はすべてを彼に負っている”ということを意味しない」――クーラは付け加えた。
「timesofoman.com」
≪この週末、王立歌劇場マスカットでイタリアオペラ「道化師」≫
オペラ道化師は、自分自身の人生が崩壊する間にも、人々を笑わせる一座の道化師・カニオの人生における、悲劇的な皮肉についての実話に基づいている。
スターテノールのホセ・クーラによって歌われたカニオは、悪意をもつトニオから、妻ネッダが恋人シルヴィオと逃げようとしていることを知らされ、嫉妬を深める。劇場は人生を映し出し、暴力が現実になる。
クーラは言った。「私はレバノンにルーツを持っている。したがって私はオマーンに来て、感情的な愛着を感じている。この間、私たちはホテルから舞台裏にいて、今、われわれは豪華なオペラハウスとその回廊を見ることができた。この巨大な機構の一部になることは素晴らしいと感じられる。」
彼は、オマーンは比較的若いオペラオーディエンスだと付け加えた。「年齢ではなく、経験の点では若い。しかし、新しい人々に対して演じることはいつも良い。なぜなら地面はまだ肥沃なので、人々の気持ちをつかみやすくなるからだ。」
クーラは、道化師の本質を現代と比較して、進行中の#metooの動きを考慮しても、オペラの内容は今日の世界と結びついている、と言った。「ハッシュタグについては、議論もあるかもしれないし、#metooに関して、過度の反応や政治的な立場があるかもしれない。しかし、オペラは現代の問題に関連している」と語った。
「muscatdaily.com」
*画像はローマ歌劇場のFBや報道などからお借りしました。