人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

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(レビュー編)2018年ホセ・クーラ、ボロディナとマリインスキーでサムソンとデリラ / Samson et Dalila /Jose Cura & Olga Borodina in Mariinsky

2018-06-01 | サンクトペテルブルクのサムソンとデリラ




遅くなりましたが、2018年5月5日のマリインスキー劇場でのサムソンとデリラに関するレビューを紹介したいと思います。

もっとたくさん出ていると思うのですが、ロシア語がままならないために、5月8日付のspbvedomosti.ruに掲載された記事から抜粋して、その一部を訳してみました。
劇場内の熱狂ぶりを伝えてくれていると思いました。

いつものように、語学力がないため、誤訳などあるかと思います。ご了承ください。



Samson et Dalila
opera in three acts (concert performance)

PERFORMERS:
Dalila: Olga Borodina
Samson: José Cura
High Priest of Dagon: Vladimir Moroz
Abimélech: Oleg Sychov
Old Hebrew: Yuri Vorobiev

The Mariinsky Orchestra
Conductor: Emmanuel Villaume




08.05.2018 spbvedomosti.ru




マリインスキー劇場で、オリガ・ボロディナの記念日の「サムソンとデリラ」
 


マリインスキー劇場のソリストであるオルガ・ボロディナ(Olga Borodina)は、30周年を記念して、サン=サーンスによるオペラ「サムソンとデリラ」のコンサート演奏を行った。
彼女とそのシーンを共有するために、有名なアルゼンチン人テノールのホセ・クーラと、フランスのマエストロ、エマニュエル・ヴィヨームが招待された。


最後のシーンの後、観客からは、耳をつんざくような爆発的な拍手だけでなく、まるで待望のゴールを決めた時にサッカーファンが吠えるような轟音が鳴り響いた。
オーケストラ、合唱団、ソリストは、一体となって、その意味を根底まで知り尽くしているかのようにスコアを実行した。
この効果を達成するために、メゾソプラノとドラマチックなテノールの2人のスーパースターの存在に加えて、指揮者は、オーケストラ自身が熱心に語った集中的なリハーサルにも成功した。
細心の注意を払ったエマニュエル・ヴィヨームの手によるマリインスキー劇場のオーケストラは、矛盾する感情、味わい、リズム、エネルギーで満たされた、聖書の世界そのもののように見えた。







ボロディナの記念日にリリースされたパンフレットには、「弱い男性が好きではない」と書いてある。彼女は舞台上の弱いパートナーも好きではない。彼女は、同じパートのなかではるかに輝いているからだ。

彼女はダリラをコヴェント・ガーデンとメトロポリタン歌劇場でプラシド・ドミンゴと一緒に歌い、ホセ・クーラとこのオペラを録音した。
彼女は2003年にマリインスキー劇場でのオペラのプレミアでこの役を演奏した後、このオペラのコンサート式のパフォーマンスに定期的に登場してきた。
オリガは、この旧約聖書のダリラ(カミーユ・サン=サーンス作曲)が「彼女のために書かれた」と信じている。

観客は、彼女の声に完全に惹きつけられるだけでなく、ボロディナの芸術的な才能のスケールにも反応する。ボロディナは、人生、恋愛、権力のすべてを愛している、複雑で矛盾した性格を持つヒロインを崇拝している。







コンサート形式のパフォーマンスに勝るものがないと言うとき、その夜、マリインスキー劇場で起こったことが念頭に思い浮かぶだろう。
オリガ・ボロディナとホセ・クーラにとって、舞台装置は本当に不必要だった。

この2人のオペラのタイトルロールは、さまざまなスケールとカテゴリーで考えられた、その声、ジェスチャー、イントネーションによって、偉大なオペラの時代の精神をもたらした。彼らは完全に、現代の世紀を無慈悲に襲っている虚栄心とは無縁だった。








オルガ・ボロディナが誘惑的な舞台を演奏しただけでなく、招待されたゲストも巧みに演じた。
メゾソプラノが放出する誘惑の毒の蜜は、特に低コントラストのレジスタでは、ステージ上のパートナー、リスナーなどのすべての毛穴に浸透した。
 
ホセ・クーラは、ドラマティックなテノールの芸術を実証し、メロディー・ラインの規則のなかでは窮屈であるかのように、アクセントを劇的なものに大きくシフトさせた。歌手であり俳優であるクーラは、サムソンが既に敵に盲目にされたシーンで、非常に視覚的にそのオペラの一場面を演じた。 

彼のすすり泣く歌声は、サムソンが告白する「致命的な苦悩」を煽り、支えた。
寺院の破壊の場面では、クーラが非常な精度で急激に振り上げた手、その簡潔なジェスチャーによって、ダゴンの異教の寺院は破壊された。
そして耳をつんざくような拍手が爆発した。

(「spbvedomosti.ru」より抜粋)


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この舞台の録画がまだ視聴可能です。マリインスキー劇場の公式サイトがアップしたものです。以前の記事でも紹介しましたが再掲します。

Самсон и Далила



以前の記事でこの公演の感想を書きましたが、まさにこのレビューが書いているように、観客は爆発的な拍手と轟音のようなブラボーと歓声で、ソリスト、指揮者、オケ、合唱による素晴らしい舞台に喝さいを送りました。非常に熱狂的な夜でした。

またこの2人の舞台には舞台装置は必要がなかった、というのも、私の感じた通りです。
オペラ業界では若いスターに注目が集まりますが、またそうやって若い歌手を育てていくことはもちろん大切ですが、このボロディナとクーラのような、演目を知り尽くし、長年の経験と蓄積、深い声と解釈によって、何もなくても、役柄そのものを舞台の上で表現できる熟達したアーティストというのは、本当に格別な存在なのだと痛感しました。

ボロディナはもうあまり国外では演奏しないようですし、マリインスキーでもそうたびたび出演するわけでもなさそうです。クーラもまた、オペラ出演の回数を減らし、指揮や作曲、演出などの活動の比重を高めつつあります。この2人が共演する機会が、今後また再びあるのかどうか・・。

一期一会のその舞台を見ることができたことに、感謝の思いでいっぱいです。






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