年の瀬だよ!! みなさまどうもこんばんは、そうだいでございます~。大掃除、無事に済みましたか?
もう大みそかも目前なんですけれどもね、あったかいんですよ~山形市は。ぜんぜん雪が積もる様子もないんですよねぇ。ちらっちら降ってはいるんですけれども。まわりの人たちは雪かきの必要もないし寒くもないんでありがたいとか言ってるんですが、これじゃ気分がねぇ~。いまいち年末年始っていう感じがしないんだよなぁ。このまんま、三が日もサーっと過ぎてふつうの日々が始まるんでしょうか。楽しい連休は、ほんとにあっという間ですよね~。スムーズにお仕事モードに戻れるかな!? まぁ、大好きな温泉につかっていい感じにリフレッシュしていきましょう。
さてさて、わたくしごとながら、自分としては今年2015年の映画の見納めは先日の『友だちのパパが好き』で決まり! という気分だったのですが、せっかくのお休みなんだし……ということで、パパッと車に乗って、山形市内の映画館でかねてから気になっていた1本を観ることにいたしました。なにげなく新聞に載ってたタイムスケジュールを見てみたらけっこう上映回が少なくなってたので、1月もたぶん正月明けから仕事で忙しくなるだろうし、今のうちにちゃっちゃと観てしまおう、ということで。
そんなわけで、観てきたのはこちら。周辺もろもろの情報も併せてどうぞ。
映画『007 スペクター』(2015年12月日本公開 148分)
『007 スペクター』は、イオン・プロダクション製作によるスパイ映画『007』シリーズの第24作。ジェイムズ=ボンド役は4度目の登板となるダニエル=クレイグ。
制作費は2億4500万~3億ドルで、『007』シリーズでは史上最高となった。また148分という上映時間もシリーズ史上最長となった。
『007』シリーズの映画化に当たり、「スペクター」という世界的犯罪組織の名称とそれに関係する登場キャラクターの使用権をめぐり、原作者のイアン=フレミング(1964年没)とプロデューサーで「スペクター」の原案者となったケヴィン=マクローリー(2006年没)との間で訴訟が発生した。それ以来、スペクターの使用権は007シリーズにおける懸案となる。この訴訟が原因で、シリーズ第7作『ダイヤモンドは永遠に』(1971年)以降、スペクターはシリーズに登場しなくなっていた。ただし、明言はされなかったもののスペクター首領とおぼしきキャラクターが冒頭のアクションシーンに登場したシリーズ第12作『ユア・アイズ・オンリー』(1981年)や、ワーナーブラザーズで製作された番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983年)の中でスペクターや関係キャラクターは登場している。
2013年11月、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)およびイオン・プロダクションはマクローリーの遺族と和解し、スペクターとそれに関連する登場キャラクターの使用権を購入した。
シリーズ恒例のガンバレル・シークエンスが、シリーズ第20作『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)以来13年ぶり、ダニエル=クレイグがボンドを演じてからは初めて冒頭に登場する(シークエンス自体はクレイグ版ではオープニングテーマ直前のアクションやエンディングで登場していた)。
本作の中盤のクライマックスであるスペクターの秘密基地の爆破シーンには大量の燃料と火薬が用いられ、「映画史上最大の爆破シーン」としてギネス世界記録に認定された。
ダニエル=クレイグがボンドを演じたシリーズ第21作『カジノ・ロワイヤル』(2006年)、第22作『慰めの報酬』(2008年)、第23作『スカイフォール』(2012年)の全てが密接にリンクしたストーリーとなっており、オープニング映像にもそれまでの悪役たちや重要なボンドガールだったヴェスバー=リンド(演・エヴァ=グリーン)、前任のM(演・ジュディ=デンチ)が登場している。
中盤での爆発シーン以降のオーベルハウザーの右目の傷は、シリーズ第5作『007は二度死ぬ』(1967年)で初めて顔出しで登場したスペクター首領ブロフェルド(演・ドナルド=プレザンス)の顔の傷跡を意識したものと思われる。
主なスタッフ
監督 …… サム=メンデス(50歳)
脚本 …… ジョン=ローガン(54歳)、ニール=パーヴィス(54歳)、ロバート=ウェイド(53歳)、ジェズ=バターワース(46歳)
製作 …… バーバラ=ブロッコリ(55歳)、マイケル=G=ウィルソン(73歳)
音楽 …… トーマス=ニューマン(60歳)
撮影 …… ホイテ=ヴァン=ホイテマ(44歳)
製作 …… イオン・プロダクション
主なキャスティング
ジェイムズ=ボンド …… ダニエル=クレイグ(47歳)
フランツ=オーベルハウザー …… クリストフ=ヴァルツ(59歳)
マドレーヌ=スワン …… レア=セドゥ(30歳)
M …… レイフ=ファインズ(53歳)
ルチア=スキアラ …… モニカ=ベルッチ(51歳)
Q …… ベン=ウィショー(35歳)
Ms.マネーペニー …… ナオミ=ハリス(39歳)
Mr.ヒンクス …… デイヴィッド=バウティスタ(46歳)
マックス=デンビー …… アンドリュー=スコット(39歳)
ビル=タナー …… ロリー=キニア(37歳)
Mr.ホワイト …… イェスパー=クリステンセン(67歳)
《歳末特別ふろく》悪の華!! 歴代ブロフェルド俳優一覧
ほんとの初代 …… アンソニー=ドーソン(当時47~49歳 1992年没)シリーズ第2・4作に登場
※ただし顔はまったく映されず、声も別の俳優があてていた
顔出し初代 …… ドナルド=プレザンス(当時47歳 1995年没)シリーズ第5作に登場
2代目 …… テリー=サヴァラス(当時47歳 1994年没)シリーズ第6作に登場
3代目 …… チャールズ=グレイ(当時43歳 2000年没)シリーズ第7作に登場 キャ~、マイクロフト!!
4代目 …… ジョン=ホリス(?歳)シリーズ第12作に登場
※ただし容姿が酷似しているだけで、この人物がブロフェルドだと明言はされておらず、声も別の俳優があてている
5代目 …… マックス=フォン=シドー(当時54歳)番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』に登場
6代目 …… クリストフ=ヴァルツ(59歳)シリーズ第24作に登場
ついでなんでこっちも
Dr.イーヴル …… マイク=マイヤーズ(当時34~39歳)『オースティン・パワーズ』シリーズ3作に登場
ハリウッドで Dr.イーヴルを演じてた俳優さん …… ケヴィン=スペイシー(当時43歳)シリーズ第3作に特別出演
はい、なにはなくとも007ですね~! これはやっぱり、スクリーンで観ておかなきゃならなかった。
もう1本、今は『スター・ウォーズ』シリーズの最新作というどでかい大作も公開されているんですが、こっちはまぁもうしばらくは上映してるだろうし、私たしかに『スター・ウォーズ』も大好きなんですけど、いちばん好きなキャラクターがグランドモフ・ターキン(エピソード4でご殉職)というていたらくなので、いまひとつ観に行こうという気にならないんですよね。観ればおもしろいだろうってことはわかってるんですが、最後の一歩が出ないんだよなぁ。
それに対して、なんてったってあなた、今回の007は『スペクター』ですよ、『スペクター』!! 007シリーズ最大の巨悪組織が、公式シリーズとしては約半世紀の時を経て大復活ときたもんだ! これは見逃すわけにはいきませんよねぇ。
3年前に公開された前作『スカイフォール』を観た際にも、私は次回作でスペクターが復活したらいいのになぁ、なんてことをつぶやいていたのですが、それがほんとに実現するなんて! 今年の初めくらいに映画館で「スペクター」っていうサブタイトルがでかでかと掲げられたポスターを見たときはもう、うれしくてうれしくて。大傑作『スカイフォール』の高みに達したクレイグ・ボンドが、リニューアルされた21世紀版スペクターといったいどのような因縁の激闘を繰り広げるのか、楽しみで楽しみで仕方なかったわけなのです。
そりゃもう、『仮面ライダー』シリーズの悪の世界的秘密組織ショッカーの先輩にあたるスペクターさまなんですから、興奮するなというほうが無理な話なのでありまして! ワクワクしますね~。
ただ、東西冷戦もすでになく、前世紀ほどに大国が大国らしい隆盛を誇っているわけでもない、国と国との個々の権謀術数がうずまくシビアな21世紀、「世界で起きる大犯罪のほとんどを陰で操る謎の組織」というはったり設定に果たしていかほどの説得力があるのか……それはやっぱり、007シリーズが荒唐無稽な娯楽映画だったコネリー~ムーア・ボンド時代にこそ活きていた過去の遺物なのではないか? それをどうしてまた、よりにもよって「ボンドらしからぬ硬派さを魅力とする」クレイグ・ボンドで復活させるのか!? そこらへんの不安はぬぐえなくもないわけですよね。
ムチャクチャな例えであることを承知の上で言わせていただきますと、私はこの「007シリーズにおけるスペクター」という存在は、「ゴジラシリーズにおけるミニラとかベビーゴジラ」なんじゃないかと思うんですね。
つまり、スペクターは確かに黄金期の007シリーズを語るうえで欠かせない要素であることは間違いないんですが、決して007シリーズのファン全員がスペクターの復活を望んでいるわけではないと思うんです。むしろ、スペクターのいかにもなウソくささが嫌いというファンの方も多いでしょうし、そもそもスペクターなんかまったく出てこない007シリーズばかりを観て育ったファンのほうが多いかもしれないわけで。作品ごとにボンドガールと並ぶ話題になるゲストラスボスだって、そりゃまぁリアリティを重視しすぎてキャラクターとしてのスケールまでもが小さくなってしまうのは問題外でしょうが、それこそ『スカイフォール』のハビエル=バルデムさんみたいに、ピンでも光っていれば十二分におもしろいわけなのです。いまさら、それに加えて「すべての糸を裏から引いていた真のラスボス」が出てきたってなぁ……という「およびじゃない感」はあるのではないのでしょうか。
ましてや、繰り返しになりますがボンドがクレイグさんなんですから! なんか、ブロスナン・ボンド時代だったらいいけどみたいな感じ、しません!? しつこくゴジラシリーズに例えるならば、『大怪獣総攻撃』(2001年)の白目ゴジラにミニラがついてくるようなもんでしょ! 大丈夫かな~って気にもなりますよね。おもしろそうだけど。
ただ、ブロスナン・ボンドのように過去のほとんどの設定をそっくり「もうあるもの」として引き継いだのではなく、そもそもジェイムズ=ボンドという男がスパイ007号となるいきさつから丹精込めて語り直し、「M」「Q」「Ms.マネーペニー」といったレギュラーキャラクターさえもいちからリブートして築き上げてきたクレイグ・ボンドシリーズとしては、やっぱりスペクターに挑戦しないわけにはいかなかったという、「今やらずにいつやる!?」という機運はあったのではないでしょうか。だからこその、満を持しての権利購入だったのだろうし。その覚悟は買わなくてはなりません。
さぁ、ほんでもってドキドキしながら拝見した今作だったのですが、その出来栄えはというと?
文句なくおもしろかった!! しかし、どうしてもそのアタマに「ふつうに」という文句がついてしまう……
ふつうにおもしろかったです。いや、それでいいと言ってしまえばそこまでなんですが、哀しいかなあの『スカイフォール』の次という順番になってしまうと、そこはかとなくただよってしまう「あぁ、まぁがんばったよね。」な空気! これだから大傑作のあとの作品はつらいですよねぇ。『ダークナイト・ライゼズ』と同じ道をあゆんでしまった感がハンパありません。
いや、でもおもしろさは請け合いだったわけですよ! むしろ今までのどのクレイグ・ボンド作品よりも、開き直ったような大胆さで007シリーズとしての「王道」回帰を果たしたぶん、肩ひじ張らずにのんびり楽しむ娯楽映画としてのサービス感は上がっていたと感じました。
さむ~いオーストリアからあつ~いモロッコまで、世界を股にかける007の大活躍! といっても、そう考えてみると今回はけっこう狭めな範囲のご旅行でアジアにはいっさい用がなかったわけなんですが、それでも一面の銀世界から熱風うずまく砂漠地帯へという色彩のリズムは、まさにスパイ大作映画の醍醐味を存分に味わえましたね。
そして、なんといってもボンドカーをはじめとする数多くの秘密兵器の活躍、Qやマネーペニーとのコミカルなかけ合い、気合の入りまくった冒頭のヘリアクション、スペクターのはなったスゴ腕の殺し屋ヒンクスの猛追、おしゃれな豪華客車の中での死闘、そして敵の秘密基地のギネス級の大爆発といった見せ場の連続は、いよいよ本格的にクレイグ・ボンドが007らしくなってきたという高揚感があって、「いいぞ~、もっとやれ!」と拍手したくなるテンションの高さに満ちていたわけです。
ただ! まぁ~、その。
そういった「観て損はしないよ!」という大前提を置いたうえで言わせていただくのですが、決して「こまやかに作り込まれた作品」ではないと思うのね。
だって、もはや「ツッコミ待ちなの?」としか思えないストーリー上のヘンなポイント、そこかしこにあったでしょ?
1、ボンドさん、なぜ爆薬が入っているに決まっているアタッシュケースを撃つ!?
2、前任のMさん、なぜ「殺し屋スキアラを殺して葬儀に行け」と言う!? 「スキアラに吐かせろ」じゃダメなの!?
3、スキアラの未亡人ルチアさん、そこでフェイドアウト!? ふつうに助かったの!?
4、ボンドさん、なぜ監視カメラのある場所で堂々と Mr.ホワイトと会話する!? とりあえずその家から出たら!?
5、スペクター、なぜ構成員の指輪ふぜいに組織の超重要機密をインプットさせる!? 本人認証だけでいいだろ!
6、モロッコの豪華客車、なぜあれほどハデに車内がぶっこわれたのに平常運行でボンドたちを駅に降ろす!? 終点駅で「あの人たち降ろしちゃいました~。」じゃ済まねぇだろ! バイトか!?
7、首領、Mr.ホワイトに住所特定されたに決まってるモロッコの秘密基地になぜ住み続ける!? 引っ越せ!
8、ボンドさん、炎上してる秘密基地からいかにも意味ありげな黒塗りの車が脱出してるよ!! それほっといてイギリスに帰国してませんか!?
9、ボンドさん、ルチアさんはさっさとよそに保護させてマドレーヌはずっと自分に同行させるって、扱いの差が露骨すぎやしませんか!? マドレーヌ、オーストリアで別れてもよかったよね!?
私は別に、ツッコミどころを目を皿のようにして探しながら観てたわけではないんですよ。それなのに、1回サーっと観ただけでこんなに挙がるわけなのよ! こりゃもう確信犯だろ。確信犯的に、行きあたりばったりで荒唐無稽なジェットコースタームービーに仕上げているわけなんですな。もう、理屈はとりあえず後にして、展開が盛り上がるから爆薬が爆発して、画的にいいから美女がボンドについていくという感じなんですよね。
まぁ、ポイント9のおかげでボンドが助かったとか、ポイント5がなけりゃ話が先に進まないということでもあるんですが、なんか、それまでのクレイグ・ボンドシリーズとは人が違ったかのような雑さですよね。と同時に、ポイント3のミョ~な甘さがやけに気になります。ルチアさん、『スカイフォール』だったら絶対に死んでたでしょ!? なんであんなワンポイントリリーフだったんだろ。やっぱおばちゃんじゃダメなのか!?
あと、どうでもいいんだけどマドレーヌさん、あのタイミングで「あぶなっかしくてしょうがないから、帰る……」って言う!? なぜいまさら!? AB型か、あんた!?
ただ、そりゃ勧善懲悪でハッピーエンドの約束された娯楽映画なんですから、主人公に都合のいいように展開しなければ仕方ないのであります。つまり、枝葉は多少アレだったのだとしても、作品の根幹である「ボンドと巨悪との対決」! そこの「巨悪」という部分に十分な恐ろしさというか、正義のスーパーヒーローに伍する悪の魅力がきいていたら、すべてはオーライになるのだ!! さぁどうだ、新しいスペクター首領はどうなんだ!?
う~ん……ダメなんじゃない!?
国際的犯罪組織スペクターと、その首領の恐ろしさというところが、今作ではあんまりわかんなかったです。
つまるところ、あれだけ不死身でパワフルなボンドの宿敵たるスペクター首領の「恐ろしさ」というのは、首領の腕っぷしじゃないですよね。あれだけの世界的組織を統帥する知力と財力と人心掌握術であるわけです。
ということは、なんだかわかんない私怨にとり憑かれてボンドの前に生身の自分をさらした時点で、首領はもうかなりのご乱心ですよね。周囲の部下にしたら、「そんなお遊びはやめてさっさと殺しちゃってくださいよ、危ないから!」というアドバンテージに次ぐアドバンテージをボンドに譲った末に、余裕しゃくしゃくでボンドに会ってやってるわけですよね。殺そうと思ったらローマの秘密会議の席で殺せたはずなのに、なぜかあえて自分の顔を見せた上で逃しちゃう。
ここまで首領がボンドにこだわる理由って、かつての20世紀シリーズでは、まぁそれは原作小説と映画化作品との製作上の複雑な事情があったにしても第1・2・4作で自分の考えた大犯罪や有能な部下たちが次々とボンドの手にかかってしまったから、という贅沢すぎる助走があったわけです。つまり、満を持して第5作でついに首領おんみずからが! という積年の恨みを込めての真打登場感があったのでしょう。
その点に関しては『スペクター』も、『カジノ・ロワイヤル』~『スカイフォール』の裏にはスペクターが! という事実を明らかにしてはいるのですが、「スペクター」っていう名前が出てくるのは今作からだもんねぇ。後付けですよね。
組織の存在が明らかになるやいなやのラスボス登場だもんなぁ。なんかもったいないというか、まだまだ組織も余力がいっぱいあるはずなのに、なんでそんなに首領が危ない橋を渡り続けるの? みたいなわけのわからない焦燥感があるんですよね。
誰か、スペクターの中であの首領の暴走を止めようとする忠義の臣はいなかったのだろうか……モロッコの秘密基地とかで首領のそばに仕えていたメガネくんは完全にイエスマンですよね。たぶん、本人も「こいつ大丈夫か……」とため息まじりで付き合っていたのでしょう。それで最期はああだもんなぁ。悪の組織づとめは、今も昔もむくわれねぇよなぁ。
もちろん、そこらへんの「ボンドと首領の因縁」という部分を強化するために、今作オリジナルの「若き日のボンドと首領」といった関係がほのめかされるわけなのですが、なんか、それにこだわってるのは首領だけで、ボンドは「いや、忘れてたわ。」みたいな距離感があんのよね! 「死んだの、おまえの親父だし。」というボンドの冷めきったまなざし! もしかしたら、首領はモロッコの秘密基地でボンドに会ってしばらく話してるうちに「あれ……そんなテンションの低さ?」と思ってたのかも。とっておきの土産話を持ったつもりで友だちと久しぶりに会ったときに、よくある風景ですよね!
あと、マドレーヌにわざと父である Mr.ホワイトの死の映像を見せるときも、ぬるいよなぁ~!!
あれ、天下のスペクターの首領さまなんだから、なんで映像をいじくって途中から「ボンドが Mr.ホワイトを射殺するウソウソ映像」に差し替えなかったの!? そんな、悪の組織の首領としてなら初歩の初歩の心理攻撃もしないんだもんなぁ~! 甘いっていうか、あんた悪人としての自覚に欠けてるよ!! 『ウルトラマンA』の異次元人ヤプールのうすぎたなさをみならってほしいよねぇ! まぁ、ヤプールもなぜか土壇場になってウルトラマンエースを自分の家に招いて取っ組み合いのけんかで勝敗を決めるというスポーツマンシップを見せたおかげで大負けしたんですけど。
とまぁつらつら言いましたけど、まとめると私はこの『007 スペクター』も十二分に楽しめましたし、首領を演じたヴァルツさんも、俳優さんとしては別になんの文句もありません。
ただ! この作品で首領があそこまでひどい目に遭うのは、いかにも時期尚早ですよ。せっかく数十年ぶりに復活させたスペクターなんですから、ここは大事に扱って、せいぜい首領はローマの秘密会議での登場どまりにしといて、直接対決は次回作以降という腰の据え方にしといたほうが断然よかったと思うんだよなぁ。それこそ、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』くらいの出番の少なさでいいじゃないかと!
なんか、クレイグ・ボンドはこれがラストかも、なんていううわさもあるんですが、また改めてスペクターと再戦してほしいなぁ。いい味だしてた殺し屋ヒンクスも直接死んだという描写はなかったし。
ほんと、「あのダメダメ首領は替え玉でした!」っていう仕切り直しで、次回を期待したいです。クレイグさんもやっと47歳。57歳までボンドやってた先輩もいるんだもの、もちっとがんばっていただきたいです!
ほんと、悪の組織の首領は、座ってるだけでいいのよ……現場にしゃしゃり出ちゃダメ! スペクターには、『オースティン・パワーズ』のナンバー2のような誠意ある人材が必要だ!!
もう大みそかも目前なんですけれどもね、あったかいんですよ~山形市は。ぜんぜん雪が積もる様子もないんですよねぇ。ちらっちら降ってはいるんですけれども。まわりの人たちは雪かきの必要もないし寒くもないんでありがたいとか言ってるんですが、これじゃ気分がねぇ~。いまいち年末年始っていう感じがしないんだよなぁ。このまんま、三が日もサーっと過ぎてふつうの日々が始まるんでしょうか。楽しい連休は、ほんとにあっという間ですよね~。スムーズにお仕事モードに戻れるかな!? まぁ、大好きな温泉につかっていい感じにリフレッシュしていきましょう。
さてさて、わたくしごとながら、自分としては今年2015年の映画の見納めは先日の『友だちのパパが好き』で決まり! という気分だったのですが、せっかくのお休みなんだし……ということで、パパッと車に乗って、山形市内の映画館でかねてから気になっていた1本を観ることにいたしました。なにげなく新聞に載ってたタイムスケジュールを見てみたらけっこう上映回が少なくなってたので、1月もたぶん正月明けから仕事で忙しくなるだろうし、今のうちにちゃっちゃと観てしまおう、ということで。
そんなわけで、観てきたのはこちら。周辺もろもろの情報も併せてどうぞ。
映画『007 スペクター』(2015年12月日本公開 148分)
『007 スペクター』は、イオン・プロダクション製作によるスパイ映画『007』シリーズの第24作。ジェイムズ=ボンド役は4度目の登板となるダニエル=クレイグ。
制作費は2億4500万~3億ドルで、『007』シリーズでは史上最高となった。また148分という上映時間もシリーズ史上最長となった。
『007』シリーズの映画化に当たり、「スペクター」という世界的犯罪組織の名称とそれに関係する登場キャラクターの使用権をめぐり、原作者のイアン=フレミング(1964年没)とプロデューサーで「スペクター」の原案者となったケヴィン=マクローリー(2006年没)との間で訴訟が発生した。それ以来、スペクターの使用権は007シリーズにおける懸案となる。この訴訟が原因で、シリーズ第7作『ダイヤモンドは永遠に』(1971年)以降、スペクターはシリーズに登場しなくなっていた。ただし、明言はされなかったもののスペクター首領とおぼしきキャラクターが冒頭のアクションシーンに登場したシリーズ第12作『ユア・アイズ・オンリー』(1981年)や、ワーナーブラザーズで製作された番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983年)の中でスペクターや関係キャラクターは登場している。
2013年11月、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)およびイオン・プロダクションはマクローリーの遺族と和解し、スペクターとそれに関連する登場キャラクターの使用権を購入した。
シリーズ恒例のガンバレル・シークエンスが、シリーズ第20作『ダイ・アナザー・デイ』(2002年)以来13年ぶり、ダニエル=クレイグがボンドを演じてからは初めて冒頭に登場する(シークエンス自体はクレイグ版ではオープニングテーマ直前のアクションやエンディングで登場していた)。
本作の中盤のクライマックスであるスペクターの秘密基地の爆破シーンには大量の燃料と火薬が用いられ、「映画史上最大の爆破シーン」としてギネス世界記録に認定された。
ダニエル=クレイグがボンドを演じたシリーズ第21作『カジノ・ロワイヤル』(2006年)、第22作『慰めの報酬』(2008年)、第23作『スカイフォール』(2012年)の全てが密接にリンクしたストーリーとなっており、オープニング映像にもそれまでの悪役たちや重要なボンドガールだったヴェスバー=リンド(演・エヴァ=グリーン)、前任のM(演・ジュディ=デンチ)が登場している。
中盤での爆発シーン以降のオーベルハウザーの右目の傷は、シリーズ第5作『007は二度死ぬ』(1967年)で初めて顔出しで登場したスペクター首領ブロフェルド(演・ドナルド=プレザンス)の顔の傷跡を意識したものと思われる。
主なスタッフ
監督 …… サム=メンデス(50歳)
脚本 …… ジョン=ローガン(54歳)、ニール=パーヴィス(54歳)、ロバート=ウェイド(53歳)、ジェズ=バターワース(46歳)
製作 …… バーバラ=ブロッコリ(55歳)、マイケル=G=ウィルソン(73歳)
音楽 …… トーマス=ニューマン(60歳)
撮影 …… ホイテ=ヴァン=ホイテマ(44歳)
製作 …… イオン・プロダクション
主なキャスティング
ジェイムズ=ボンド …… ダニエル=クレイグ(47歳)
フランツ=オーベルハウザー …… クリストフ=ヴァルツ(59歳)
マドレーヌ=スワン …… レア=セドゥ(30歳)
M …… レイフ=ファインズ(53歳)
ルチア=スキアラ …… モニカ=ベルッチ(51歳)
Q …… ベン=ウィショー(35歳)
Ms.マネーペニー …… ナオミ=ハリス(39歳)
Mr.ヒンクス …… デイヴィッド=バウティスタ(46歳)
マックス=デンビー …… アンドリュー=スコット(39歳)
ビル=タナー …… ロリー=キニア(37歳)
Mr.ホワイト …… イェスパー=クリステンセン(67歳)
《歳末特別ふろく》悪の華!! 歴代ブロフェルド俳優一覧
ほんとの初代 …… アンソニー=ドーソン(当時47~49歳 1992年没)シリーズ第2・4作に登場
※ただし顔はまったく映されず、声も別の俳優があてていた
顔出し初代 …… ドナルド=プレザンス(当時47歳 1995年没)シリーズ第5作に登場
2代目 …… テリー=サヴァラス(当時47歳 1994年没)シリーズ第6作に登場
3代目 …… チャールズ=グレイ(当時43歳 2000年没)シリーズ第7作に登場 キャ~、マイクロフト!!
4代目 …… ジョン=ホリス(?歳)シリーズ第12作に登場
※ただし容姿が酷似しているだけで、この人物がブロフェルドだと明言はされておらず、声も別の俳優があてている
5代目 …… マックス=フォン=シドー(当時54歳)番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』に登場
6代目 …… クリストフ=ヴァルツ(59歳)シリーズ第24作に登場
ついでなんでこっちも
Dr.イーヴル …… マイク=マイヤーズ(当時34~39歳)『オースティン・パワーズ』シリーズ3作に登場
ハリウッドで Dr.イーヴルを演じてた俳優さん …… ケヴィン=スペイシー(当時43歳)シリーズ第3作に特別出演
はい、なにはなくとも007ですね~! これはやっぱり、スクリーンで観ておかなきゃならなかった。
もう1本、今は『スター・ウォーズ』シリーズの最新作というどでかい大作も公開されているんですが、こっちはまぁもうしばらくは上映してるだろうし、私たしかに『スター・ウォーズ』も大好きなんですけど、いちばん好きなキャラクターがグランドモフ・ターキン(エピソード4でご殉職)というていたらくなので、いまひとつ観に行こうという気にならないんですよね。観ればおもしろいだろうってことはわかってるんですが、最後の一歩が出ないんだよなぁ。
それに対して、なんてったってあなた、今回の007は『スペクター』ですよ、『スペクター』!! 007シリーズ最大の巨悪組織が、公式シリーズとしては約半世紀の時を経て大復活ときたもんだ! これは見逃すわけにはいきませんよねぇ。
3年前に公開された前作『スカイフォール』を観た際にも、私は次回作でスペクターが復活したらいいのになぁ、なんてことをつぶやいていたのですが、それがほんとに実現するなんて! 今年の初めくらいに映画館で「スペクター」っていうサブタイトルがでかでかと掲げられたポスターを見たときはもう、うれしくてうれしくて。大傑作『スカイフォール』の高みに達したクレイグ・ボンドが、リニューアルされた21世紀版スペクターといったいどのような因縁の激闘を繰り広げるのか、楽しみで楽しみで仕方なかったわけなのです。
そりゃもう、『仮面ライダー』シリーズの悪の世界的秘密組織ショッカーの先輩にあたるスペクターさまなんですから、興奮するなというほうが無理な話なのでありまして! ワクワクしますね~。
ただ、東西冷戦もすでになく、前世紀ほどに大国が大国らしい隆盛を誇っているわけでもない、国と国との個々の権謀術数がうずまくシビアな21世紀、「世界で起きる大犯罪のほとんどを陰で操る謎の組織」というはったり設定に果たしていかほどの説得力があるのか……それはやっぱり、007シリーズが荒唐無稽な娯楽映画だったコネリー~ムーア・ボンド時代にこそ活きていた過去の遺物なのではないか? それをどうしてまた、よりにもよって「ボンドらしからぬ硬派さを魅力とする」クレイグ・ボンドで復活させるのか!? そこらへんの不安はぬぐえなくもないわけですよね。
ムチャクチャな例えであることを承知の上で言わせていただきますと、私はこの「007シリーズにおけるスペクター」という存在は、「ゴジラシリーズにおけるミニラとかベビーゴジラ」なんじゃないかと思うんですね。
つまり、スペクターは確かに黄金期の007シリーズを語るうえで欠かせない要素であることは間違いないんですが、決して007シリーズのファン全員がスペクターの復活を望んでいるわけではないと思うんです。むしろ、スペクターのいかにもなウソくささが嫌いというファンの方も多いでしょうし、そもそもスペクターなんかまったく出てこない007シリーズばかりを観て育ったファンのほうが多いかもしれないわけで。作品ごとにボンドガールと並ぶ話題になるゲストラスボスだって、そりゃまぁリアリティを重視しすぎてキャラクターとしてのスケールまでもが小さくなってしまうのは問題外でしょうが、それこそ『スカイフォール』のハビエル=バルデムさんみたいに、ピンでも光っていれば十二分におもしろいわけなのです。いまさら、それに加えて「すべての糸を裏から引いていた真のラスボス」が出てきたってなぁ……という「およびじゃない感」はあるのではないのでしょうか。
ましてや、繰り返しになりますがボンドがクレイグさんなんですから! なんか、ブロスナン・ボンド時代だったらいいけどみたいな感じ、しません!? しつこくゴジラシリーズに例えるならば、『大怪獣総攻撃』(2001年)の白目ゴジラにミニラがついてくるようなもんでしょ! 大丈夫かな~って気にもなりますよね。おもしろそうだけど。
ただ、ブロスナン・ボンドのように過去のほとんどの設定をそっくり「もうあるもの」として引き継いだのではなく、そもそもジェイムズ=ボンドという男がスパイ007号となるいきさつから丹精込めて語り直し、「M」「Q」「Ms.マネーペニー」といったレギュラーキャラクターさえもいちからリブートして築き上げてきたクレイグ・ボンドシリーズとしては、やっぱりスペクターに挑戦しないわけにはいかなかったという、「今やらずにいつやる!?」という機運はあったのではないでしょうか。だからこその、満を持しての権利購入だったのだろうし。その覚悟は買わなくてはなりません。
さぁ、ほんでもってドキドキしながら拝見した今作だったのですが、その出来栄えはというと?
文句なくおもしろかった!! しかし、どうしてもそのアタマに「ふつうに」という文句がついてしまう……
ふつうにおもしろかったです。いや、それでいいと言ってしまえばそこまでなんですが、哀しいかなあの『スカイフォール』の次という順番になってしまうと、そこはかとなくただよってしまう「あぁ、まぁがんばったよね。」な空気! これだから大傑作のあとの作品はつらいですよねぇ。『ダークナイト・ライゼズ』と同じ道をあゆんでしまった感がハンパありません。
いや、でもおもしろさは請け合いだったわけですよ! むしろ今までのどのクレイグ・ボンド作品よりも、開き直ったような大胆さで007シリーズとしての「王道」回帰を果たしたぶん、肩ひじ張らずにのんびり楽しむ娯楽映画としてのサービス感は上がっていたと感じました。
さむ~いオーストリアからあつ~いモロッコまで、世界を股にかける007の大活躍! といっても、そう考えてみると今回はけっこう狭めな範囲のご旅行でアジアにはいっさい用がなかったわけなんですが、それでも一面の銀世界から熱風うずまく砂漠地帯へという色彩のリズムは、まさにスパイ大作映画の醍醐味を存分に味わえましたね。
そして、なんといってもボンドカーをはじめとする数多くの秘密兵器の活躍、Qやマネーペニーとのコミカルなかけ合い、気合の入りまくった冒頭のヘリアクション、スペクターのはなったスゴ腕の殺し屋ヒンクスの猛追、おしゃれな豪華客車の中での死闘、そして敵の秘密基地のギネス級の大爆発といった見せ場の連続は、いよいよ本格的にクレイグ・ボンドが007らしくなってきたという高揚感があって、「いいぞ~、もっとやれ!」と拍手したくなるテンションの高さに満ちていたわけです。
ただ! まぁ~、その。
そういった「観て損はしないよ!」という大前提を置いたうえで言わせていただくのですが、決して「こまやかに作り込まれた作品」ではないと思うのね。
だって、もはや「ツッコミ待ちなの?」としか思えないストーリー上のヘンなポイント、そこかしこにあったでしょ?
1、ボンドさん、なぜ爆薬が入っているに決まっているアタッシュケースを撃つ!?
2、前任のMさん、なぜ「殺し屋スキアラを殺して葬儀に行け」と言う!? 「スキアラに吐かせろ」じゃダメなの!?
3、スキアラの未亡人ルチアさん、そこでフェイドアウト!? ふつうに助かったの!?
4、ボンドさん、なぜ監視カメラのある場所で堂々と Mr.ホワイトと会話する!? とりあえずその家から出たら!?
5、スペクター、なぜ構成員の指輪ふぜいに組織の超重要機密をインプットさせる!? 本人認証だけでいいだろ!
6、モロッコの豪華客車、なぜあれほどハデに車内がぶっこわれたのに平常運行でボンドたちを駅に降ろす!? 終点駅で「あの人たち降ろしちゃいました~。」じゃ済まねぇだろ! バイトか!?
7、首領、Mr.ホワイトに住所特定されたに決まってるモロッコの秘密基地になぜ住み続ける!? 引っ越せ!
8、ボンドさん、炎上してる秘密基地からいかにも意味ありげな黒塗りの車が脱出してるよ!! それほっといてイギリスに帰国してませんか!?
9、ボンドさん、ルチアさんはさっさとよそに保護させてマドレーヌはずっと自分に同行させるって、扱いの差が露骨すぎやしませんか!? マドレーヌ、オーストリアで別れてもよかったよね!?
私は別に、ツッコミどころを目を皿のようにして探しながら観てたわけではないんですよ。それなのに、1回サーっと観ただけでこんなに挙がるわけなのよ! こりゃもう確信犯だろ。確信犯的に、行きあたりばったりで荒唐無稽なジェットコースタームービーに仕上げているわけなんですな。もう、理屈はとりあえず後にして、展開が盛り上がるから爆薬が爆発して、画的にいいから美女がボンドについていくという感じなんですよね。
まぁ、ポイント9のおかげでボンドが助かったとか、ポイント5がなけりゃ話が先に進まないということでもあるんですが、なんか、それまでのクレイグ・ボンドシリーズとは人が違ったかのような雑さですよね。と同時に、ポイント3のミョ~な甘さがやけに気になります。ルチアさん、『スカイフォール』だったら絶対に死んでたでしょ!? なんであんなワンポイントリリーフだったんだろ。やっぱおばちゃんじゃダメなのか!?
あと、どうでもいいんだけどマドレーヌさん、あのタイミングで「あぶなっかしくてしょうがないから、帰る……」って言う!? なぜいまさら!? AB型か、あんた!?
ただ、そりゃ勧善懲悪でハッピーエンドの約束された娯楽映画なんですから、主人公に都合のいいように展開しなければ仕方ないのであります。つまり、枝葉は多少アレだったのだとしても、作品の根幹である「ボンドと巨悪との対決」! そこの「巨悪」という部分に十分な恐ろしさというか、正義のスーパーヒーローに伍する悪の魅力がきいていたら、すべてはオーライになるのだ!! さぁどうだ、新しいスペクター首領はどうなんだ!?
う~ん……ダメなんじゃない!?
国際的犯罪組織スペクターと、その首領の恐ろしさというところが、今作ではあんまりわかんなかったです。
つまるところ、あれだけ不死身でパワフルなボンドの宿敵たるスペクター首領の「恐ろしさ」というのは、首領の腕っぷしじゃないですよね。あれだけの世界的組織を統帥する知力と財力と人心掌握術であるわけです。
ということは、なんだかわかんない私怨にとり憑かれてボンドの前に生身の自分をさらした時点で、首領はもうかなりのご乱心ですよね。周囲の部下にしたら、「そんなお遊びはやめてさっさと殺しちゃってくださいよ、危ないから!」というアドバンテージに次ぐアドバンテージをボンドに譲った末に、余裕しゃくしゃくでボンドに会ってやってるわけですよね。殺そうと思ったらローマの秘密会議の席で殺せたはずなのに、なぜかあえて自分の顔を見せた上で逃しちゃう。
ここまで首領がボンドにこだわる理由って、かつての20世紀シリーズでは、まぁそれは原作小説と映画化作品との製作上の複雑な事情があったにしても第1・2・4作で自分の考えた大犯罪や有能な部下たちが次々とボンドの手にかかってしまったから、という贅沢すぎる助走があったわけです。つまり、満を持して第5作でついに首領おんみずからが! という積年の恨みを込めての真打登場感があったのでしょう。
その点に関しては『スペクター』も、『カジノ・ロワイヤル』~『スカイフォール』の裏にはスペクターが! という事実を明らかにしてはいるのですが、「スペクター」っていう名前が出てくるのは今作からだもんねぇ。後付けですよね。
組織の存在が明らかになるやいなやのラスボス登場だもんなぁ。なんかもったいないというか、まだまだ組織も余力がいっぱいあるはずなのに、なんでそんなに首領が危ない橋を渡り続けるの? みたいなわけのわからない焦燥感があるんですよね。
誰か、スペクターの中であの首領の暴走を止めようとする忠義の臣はいなかったのだろうか……モロッコの秘密基地とかで首領のそばに仕えていたメガネくんは完全にイエスマンですよね。たぶん、本人も「こいつ大丈夫か……」とため息まじりで付き合っていたのでしょう。それで最期はああだもんなぁ。悪の組織づとめは、今も昔もむくわれねぇよなぁ。
もちろん、そこらへんの「ボンドと首領の因縁」という部分を強化するために、今作オリジナルの「若き日のボンドと首領」といった関係がほのめかされるわけなのですが、なんか、それにこだわってるのは首領だけで、ボンドは「いや、忘れてたわ。」みたいな距離感があんのよね! 「死んだの、おまえの親父だし。」というボンドの冷めきったまなざし! もしかしたら、首領はモロッコの秘密基地でボンドに会ってしばらく話してるうちに「あれ……そんなテンションの低さ?」と思ってたのかも。とっておきの土産話を持ったつもりで友だちと久しぶりに会ったときに、よくある風景ですよね!
あと、マドレーヌにわざと父である Mr.ホワイトの死の映像を見せるときも、ぬるいよなぁ~!!
あれ、天下のスペクターの首領さまなんだから、なんで映像をいじくって途中から「ボンドが Mr.ホワイトを射殺するウソウソ映像」に差し替えなかったの!? そんな、悪の組織の首領としてなら初歩の初歩の心理攻撃もしないんだもんなぁ~! 甘いっていうか、あんた悪人としての自覚に欠けてるよ!! 『ウルトラマンA』の異次元人ヤプールのうすぎたなさをみならってほしいよねぇ! まぁ、ヤプールもなぜか土壇場になってウルトラマンエースを自分の家に招いて取っ組み合いのけんかで勝敗を決めるというスポーツマンシップを見せたおかげで大負けしたんですけど。
とまぁつらつら言いましたけど、まとめると私はこの『007 スペクター』も十二分に楽しめましたし、首領を演じたヴァルツさんも、俳優さんとしては別になんの文句もありません。
ただ! この作品で首領があそこまでひどい目に遭うのは、いかにも時期尚早ですよ。せっかく数十年ぶりに復活させたスペクターなんですから、ここは大事に扱って、せいぜい首領はローマの秘密会議での登場どまりにしといて、直接対決は次回作以降という腰の据え方にしといたほうが断然よかったと思うんだよなぁ。それこそ、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』くらいの出番の少なさでいいじゃないかと!
なんか、クレイグ・ボンドはこれがラストかも、なんていううわさもあるんですが、また改めてスペクターと再戦してほしいなぁ。いい味だしてた殺し屋ヒンクスも直接死んだという描写はなかったし。
ほんと、「あのダメダメ首領は替え玉でした!」っていう仕切り直しで、次回を期待したいです。クレイグさんもやっと47歳。57歳までボンドやってた先輩もいるんだもの、もちっとがんばっていただきたいです!
ほんと、悪の組織の首領は、座ってるだけでいいのよ……現場にしゃしゃり出ちゃダメ! スペクターには、『オースティン・パワーズ』のナンバー2のような誠意ある人材が必要だ!!
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