アメリカでは超ベストセラーなのに、なぜか日本では紹介されない本。どうみても日本人の興味を引きそうなのに、いまだに翻訳が出ないのが不思議なのが、ジョン・パーキンスのConfessions of an Economic Hit Man(『エコノミック・ヒットマンの告白』)です。グローバリゼーションの原動力となってきた、企業利益中心(コーポレートクラシー)の合衆国の世界支配戦略を、経済面で推進する勢力の深部で働いてきたと称する人物が、いかにこのシステムが第三世界の貧国を欺いて巨万の富をまきあげてきたかを内部告発。かつて英仏がしたような直接の軍事占領や植民地支配を伴わないアメリカ帝国の搾取構造が、ある意味、非常にわかりやすく説明されています。
パーキンスは、10年にわたって国際経済コンサルタント企業で働き、主任エコノミストをつとめましたが、じつはその間に「エコノミック・ヒットマン」という影の仕事に従事していたと主張しています。エコノミック・ヒットマンは資源のある第三世界の国の指導者に近づいて、世界銀行の融資を受ければ飛躍的な経済成長が可能になるともちかけ、巨額の借入をさせます。でも実際の受益者は巨大なインフラ構築を請け負うべクテルやハリバートンのような米国の巨大企業(融資の大部分は彼らの手に落ちます)と、現地のエリート階級のみであり、庶民には国家が背負った巨大な負債のみが残ります。この借金はとうてい返済できないので、世銀の指導により社会福祉や民生支出が大幅に切り詰められ、天然資源が略奪されます。パーキンスは、自分の役割は、エコノミストという肩書きの裏で第三世界の指導者を抱きこんで、自国民をないがしろにして、米国の政府と企業にとってのみ好ましい政策をとるように誘惑することだったと告白しています。
彼は81年にこの仕事を辞し、長い期間をおいた後、2004年にこの本を出版しました。高級を取り、国際金融界の一員として世界の指導者たちと交友し、なに不自由なく暮らしていた彼が、なぜこのような告発をするにいたったのか?何がきっかけで意識が変わり、どのような経緯で告発に踏み切ったのか? この告発が真実であるとすれば、そもそも告発をすること自体に危険はなかったのか?
パーキンスは、根源的な問題として、コーポレートクラシー(企業独裁)に支配された合衆国の現在のあり方を批判しています。2007年に出た続編では、パーキンスはこの考えをさらに推し進め、多国籍企業の活動が貧しい国の環境や経済に与える悪影響を強調し、法人企業には人格が認められているのだから、彼らにも「善良な市民」として振舞うことを要求すべきだと主張しています。
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