2022年度一般会計決算の剰余金は2兆6000億円で、半分の1兆3000億円が防衛費増額に充てられる見込みとなった。政府は剰余金の使用額を毎年7000億円と見積もるが、想定より剰余金が増えた場合にはさらに防衛費につぎ込む。借金返済より防衛財源を優先しているともいえ、財政悪化に拍車がかかる懸念は拭い切れない。(山田晃史)
決算剰余金 政府の見通しより増えた税収や予算計上したが使わなかったお金を、国の借金である国債発行を減額して調整した上で、最終的に余ったお金。財政法では剰余金の半分以上を借金返済の財源にする規定があるため、近年は残り半分を経済対策の財源にしていた。政府は22年度決算から半分の金額を防衛費増額の財源に充てると計画している。
◆防衛費5年で43兆円規模…財源に残る「未定」部分
防衛費を23~27年度の5年間で約17兆円増やし43兆円規模とする政府の計画では、増額分の14兆6000億円は財源が決まっている。決算剰余金が毎年7000億円で計3兆5000億円、税外収入でつくる防衛力強化資金が4兆6000億~5兆円強、予算を効率化する歳出改革で3兆円強、残りを増税で賄う。
2兆5000億円については財源が未定だが、計画には「剰余金が想定より増加した場合に活用する(9000億円程度)」と記され、政府は剰余金の上振れを当てにしている。
剰余金の見積額の根拠は21年度までの過去10年間の平均だが、年度ごとに見ると2500億円から4兆5000億円とばらつきが大きく、来年以降も確保できるかは未知数だ。財務省によると、剰余金の上振れ分を防衛力強化資金に繰り入れて将来の不足に備えることもあるという。
◆「財政に悪い影響を与える」
政府は6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、増税時期の先送りも可能となるよう示唆している。税外収入の上積みやその他の追加収入の取り組みを踏まえて判断するとしており、剰余金の上振れ分が追加収入に充てられる可能性もある。上振れ分の使い道について、財務省の担当者は「(来年度の)予算編成過程で検討する」と述べた。
防衛財源の剰余金への依存が強まることを、財政に詳しい大和証券の末広徹氏は「剰余金を多く確保しようと税収を低く見積もったり予算を多く計上したりする誘因となり、財政に悪い影響を与える」と指摘する。
総額43兆円の規模ありきで防衛費の増額議論が進んだ結果、増税への拒否感が強い自民党内からは剰余金のさらなる活用論が出ている。防衛財源を考える特命委員会は6月、剰余金の半分以上を借金返済に充てる規定を一時的に適用せず、防衛費に充てる検討を促す提言をまとめた。
政府は防衛費増額分に国債を使わないと強調している。しかし、末広氏は「なし崩し的に剰余金の使用を拡大すれば、国債で賄っているのと同じで将来の負担が増えることになる」と財政悪化を警戒する。
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