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★<東京新聞社説>現行保険証廃止 「人に優しい」に程遠い

2023年09月30日 09時02分28秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」導入により施設の高齢者や障害者らが苦慮している。「人に優しいデジタル化」には程遠い。政府は現行の保険証維持に政策を転換すべきだ。
 マイナカードの申請や交付時には対面での手続きが必要とされ、施設などで暮らす高齢者らが取得する際の障壁となってきた。
 このため政府は8月、自治体職員らが施設などに赴いて申請を受け付けたり、郵送や代理人による受け取りを可能にしたりする交付手順を示した。施設でのカード管理の方法も文書化した。
 しかし、これらの対応は現場に負担を強いるものでしかない。
 多くの市区町村では従来の窓口業務に出張して申請を受け付ける仕事が加わり、人手不足を懸念する声が出ている。施設側も5年ごとの更新時期やカードの存在を日常的に確認せねばならない。
 カードの取得は任意だが、認知症の人たちの意思をどう確認するのかなどは不明なままだ。
 視覚障害者も困難に直面している。顔認証機能がある読み取り機の枠に顔を合わせたり、暗証番号の入力が難しいためだ。触覚で数字が打ち込めるキーボード(テンキー)付きの読み取り機はなく、音声ガイドも一部にとどまる。
 視覚障害者以外にも、意思に反して身体が動く「不随意運動」のある人が顔認証で入力できない事例が起きている。想定が甘く、障壁をなくすバリアフリーに逆行していると言わざるを得ない。
 光回線のインターネット環境が整わない離島や山間地域の医療機関では、マイナ保険証による資格確認ができない。こうした地域のマイナ保険証所有者には被保険者番号などが記された文書を配布するというが、現在の保険証があれば問題はなく、一連の対応はその場しのぎにすぎない。
 そもそも高齢者らには、5年ごとに役所でカードを更新すること自体が新たな手間になる。
 河野太郎デジタル相は「デジタル化は温かく優しい社会をつくるための一つの手段」と繰り返す。不必要な苦難を弱者に強いる現実こそ直視すべきではないか。
 岸田文雄首相は内閣改造後、新任の武見敬三厚生労働相に現行保険証廃止に伴う国民の不安に丁寧に対応するよう指示したが、現行保険証の維持こそ、不安解消のための最善策と考える。

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