自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、派閥が集める巨額の資金の使途が事件解明の焦点となっている。東京地検特捜部の家宅捜索を受けた安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の政治資金収支報告書には、派閥議員の政治活動費を中心に、有力支援者らとの会食費などが記載。初当選議員の「囲い込み」など、「数は力」の永田町で派閥拡張へ向け、パーティーで多額の資金を集め、一部を裏金化していた様子が浮かび上がる。(三輪喜人、浜崎陽介、戎野文菜)
◆安倍派パー券購入者の「公開率」は23%
収入総額3億8747万円、パーティー収入は9480万円―。安倍派の2022年の収入は、前年からの繰越金(2億112万円)のほか、寄付とパーティー券収入が半々となっていた。
収益の柱となる政治資金パーティーは同年5月に東京・港区のホテルで開催。3200人がパーティー券を購入していた。会場費や案内状の印刷・発送費などは2591万円。収入から引くと、6888万円のもうけになる。
パーティー券を20万円超購入し、企業や団体名が収支報告書に記載されているのは2218万円分しかなく、購入者の「公開率」は23%にとどまる。安倍派では、ノルマを超えたキックバック分を記載していなかったとされる。
◆会議費は「派閥幹部のいわゆる飲み代」
支出をみると、所属する派閥議員が代表を務める政党支部や政治団体への「寄付」が計1億4300万円と6割強を占める。5月と12月、一部が6月に振り込まれており、大半の衆院議員側が1人当たり計100万円、参院議員側は衆院の数倍程度だった。この年は7月に参院選があったため、参院議員側への寄付が多くなったとみられる。
かつて自民党国会議員の秘書を務めた男性は「参院は選挙区が広い。衆院だと小選挙区で有権者も多くないので、その差だ」と解説する。
会議費や会合費は計1490万円。会議費では、都内の有名店の名前がずらりと並ぶ。この元秘書は「派閥幹部のいわゆる飲み代。仲間や有力者に紹介された人に、いきなり割り勘はできない場合が多く、食事をおごるわけ」と明かす。
◆二階派は衆院議員に200万、参院議員に300万円
一方、二階派の22年の収入は2億2447万円。収入の8割を占めるパーティーは5月に東京・千代田区のホテルで開催。報告書には、7538人が購入し、1億8845万円の収入があったと記載されていたが、収入の一部を記載せずに裏金にしていた疑いが浮上している。
二階派でも6月と12月に衆院議員に計200万円、参院議員に計300万円を配布。このほかパーティー開催後に23人の議員に対し、1006万~6万円が寄付されており、パーティー券のキックバック分とみられる。ある議員の秘書は「ノルマは50枚(100万円)で、ノルマを超えた分が振り込まれました。後援会活動費として使っています」と説明した。二階派は取材に「収支報告書の通りです」としている。
両派とも1年生議員に選挙の際の応援弁士を出すなど、資金面や選挙運動で支援しており、派閥拡大に向け資金をプールしていたとみられる。
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