スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は今年1月時点の世界の核弾頭総数が1万2121発=表=に上り、3904発が実戦配備されているとの年次評価を発表した。
核弾頭総数は昨年から微減したが、実戦配備は60発増加。SIPRIは「各国が核抑止力への依存を深めている」と警告する。「核なき世界」の実現には、米国やロシア、中国などの核保有国が誠実に対話を重ねることが必要だ。
とりわけ「どの国よりも核戦力を速く拡大させている」と指摘されたのが中国だ。核弾頭の保有数は昨年1月から90発増え、推計500発になった。うち24発は初めて実戦用に配備され、即時使用が可能な状況だという。
ロシアのプーチン大統領は5月末、ウクライナへの軍事支援を続ける米欧各国に対し「世界的な紛争を望むのか」と核使用の可能性に重ねて言及し、けん制した。
これに対し、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は英紙インタビューに、中ロの脅威が高まっているとしてNATOが保管する核兵器の配備を協議していると表明した。
核を巡る応酬は結果的に核増強の圧力となり、中国などの核弾頭の保有増加につながっている。
昨年5月、被爆地・広島で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)で確認した、究極の目標である「核なき世界」は、もはや有名無実化している。
中国は1964年に初めて核実験をして以来「核戦力は安全保障上の最低水準」「先制不使用」を厳守すると主張してきた。今回のSIPRIの指摘にも「自衛防御の核戦略」と反論している。
米ロ両国は新戦略兵器削減条約(新START)で配備可能な核弾頭の上限を1550発に制限している。プーチン氏は昨年2月、条約の履行停止を表明したが、2026年2月までは有効だ。
ウクライナ侵攻が第3次大戦に発展する事態は絶対に避けなければならない。米ロの新START延長のみならず、中国を含めた核保有9カ国は、核管理の新しいルールづくりに踏み切るべきだ。
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