沖縄・宜野湾市長選
返す基地なのに217億円で「補修」など
桃原氏 延命「止めるべきだ」
佐喜真氏 日米政府擁護に終始
現職市長の死去に伴う8日投票の沖縄県・宜野湾市長選。玉城デニー知事を支援する人たちから推され、米軍普天間基地(同市)の即時閉鎖・返還を掲げる前市議の桃原(とうばる)イサオ候補=新=と、自公推薦の佐喜真淳前市長による事実上の一騎打ちです。桃原氏は市議会で、同基地の早期返還を合意した日米両政府が「補修」を名目に基地の延命・強化を図る無法を追及し、両政府の擁護を繰り返す市長時代の佐喜真氏と対決してきました。
「基地内で施設の新設、改修工事が毎年行われ、これが217億円。返すべきものに大金を投じている。しっかり日米両政府に反対を唱えなければ基地の延命・強化にしかならないと訴えたが、市の答弁は『必要最小限の工事』。217億円が最小限でしょうか」―。桃原氏は訴えます。
要求丸のみ
普天間基地の固定化につながる「補修」が始まったのは、第2次安倍政権発足直後の2013度年から。防衛省の資料によると、沖縄防衛局が23年度末までに、普天間基地「補修」のための工事を発注した契約額は192億円。「補修」以外に、基地の「部分返還」のための工事なども含めた全体の発注総額は217億円に上ります。
アメリカ政府の要求を丸のみし、「思いやり予算」で負担するもので、内容は格納庫や隊舎、雨水排水施設など多岐にわたりました。
古里を破壊
特に問題となったのが雨水排水施設の調整池の新設です。現地には、沖縄戦で上陸した米軍が基地を建設する前、国の天然記念物に指定された並松街道を通す旧神山集落がありました。貴重な集落跡を破壊する計画に、基地建設で古里を奪われた郷友会の人たちが中止を強く要請した経緯があります。
しかもその工期は、安倍首相が14年2月に「普天間基地の5年以内の運用停止」を県民に約束した期限を超え、早期返還に逆行するものでした。
16年9月議会で桃原氏は佐喜真氏に、「(調整池は)新築工事だ。体を張ってでも止めるべきだ。あと何十年も使われる、そんな危惧(きぐ)はないのか」とただしました。
市当局は「安全な運用の維持等を図るため、必要最小限の補修を行う必要がある」との沖縄防衛局の説明をそのまま述べ、「注視する」と言うだけ。佐喜真氏も「(米側の説明に)理解を示しながらも、一日も早い返還を求めていきたい」と述べるにとどめました。
逃げの答弁
また同年12月議会で桃原氏は、「5年以内の運用停止」が同年1月の市長選で佐喜真氏の掲げた公約であったことを指摘。「受け入れてしまったら基地の延命になる。(調整池の)工事は断りましょう」と提案しました。
しかし佐喜真氏は、「事業は防衛省の責任と判断において行われる」と答弁。「固定化につながらないとの言葉をいただいている」として、国を代弁する姿勢に終始しました。
桃原氏とともに当時この問題を追及した日本共産党の知念吉男元市議は、「佐喜真氏は『国に要請している』とはいうが、具体的にどうしたかは言わず逃げの答弁を繰り返していた」と批判します。住宅地を飛び交う米軍機の墜落の不安や騒音、PFAS汚染などの市民の苦しみについて、佐喜真氏には解決しようという姿勢が見られないと強調。桃原候補の勝利で国忖度(そんたく)をやめさせ、市民に寄り添う市政に変えたいと話します。
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