トランプ米大統領が上下両院の合同会議での施政方針演説で「アメリカンドリームがかつてなく盛り上がっている」と語った。
しかし、国内外に向けて連発してきた強権と脅しは、希望と活気をもたらした過去のアメリカンドリームとは相いれない。民主主義国家のけん引役だった米国が「力による支配」に急激に陥りつつある現状を強く憂う。
演説で、ロシアのウクライナ侵攻を巡り、和平に向けた前進をアピールしたトランプ氏だが、首脳会談で口論になったウクライナのゼレンスキー大統領への憤りを隠さず、軍事支援を一時停止した。その一方、国連憲章などを無視して侵攻したロシアのプーチン大統領とは急速に接近している。
演説では、和平交渉に当たって目指していたウクライナの鉱物資源の権益取得にめどが立ったことも表明した。
権力と金銭の欲にまみれ、民主主義国家が重視してきた「法の支配」を軽視し続けるなら、国際社会でルール違反が横行し、真の平和が訪れることはないだろう。
関税の「武器化」にも歯止めがかからない。10%の追加関税を課した中国、25%の関税を課した隣国カナダとメキシコに加え、日本を含む世界中の貿易相手国の関税も引き上げる考えを改めて表明。
米国で作れ、米国から買え、と言わんばかりの高圧的な態度は、到底受け入れられない。
不寛容な姿勢は、海外だけでなく米国内にも向けられた。
人種や性の多様化推進策を「終わらせた」と胸を張り、「戻らない」と断言。政府職員を強引に削減している「政府効率化省」を率いるイーロン・マスク氏を持ち上げ、「官僚から権力を取り戻す」として、抵抗する職員は「ただちに解雇する」とも警告した。
トランプ氏が演説の終盤で再び言及したのも「アメリカンドリーム」だった。均等に与えられる機会を生かした経済的・社会的成功を意味するその言葉は、もともと民主主義、自由、平等という米国建国以来の理想を指すという。
トランプ氏が強権的手法で米国に富をもたらし、一部の国民を満足させても、それを「アメリカンドリーム」とは呼べない。
トランプ政権中は望み薄だとしても、米国は民主主義陣営の大国として、建国以来の理想を体現する国家であるべきだ。
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