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◆<東京新聞社説>自衛隊南西配備 住民の懸念と向き合え

2023年04月04日 10時49分34秒 | ●YAMACHANの雑記帳
 陸上自衛隊が沖縄県石垣島に駐屯地を開設し、浜田靖一防衛相が二日の記念式典で「南西諸島の防衛力強化は国を守り抜くという決意の表れだ」と訓示した。
 政府は南西諸島への自衛隊配備について、中国の軍事的台頭を念頭に、抑止力を強化するためとしているが、敵の基地などを直接攻撃できる長距離巡航ミサイルなどが実際に配備されれば、地域の緊張を一層高めかねない。
 軍事的衝突を避けるには、軍備増強によって地域の軍拡競争を加速させる「安全保障のジレンマ」に陥らず、緊張緩和に向けた外交努力を尽くすことが必要だ。
 石垣島の陸自駐屯地は、南西諸島の離島では二〇一六年の与那国島(沖縄県)、一九年の宮古島(同)、奄美大島(鹿児島県)に続く新設となる。
 隊員の定員は約五百七十人。石垣島をはじめ周辺の防衛・警備を担う「八重山警備隊」のほか、上空の標的を狙う「03式中距離地対空誘導弾」や、陸地から艦艇を攻撃する「12式地対艦誘導弾」を運用する部隊などで構成される。
 軍事的台頭著しい中国が東シナ海から太平洋にかけて海洋進出を強め、台湾の武力統一の可能性も視野に入れる状況を座視し得ないのは当然である。
 防衛省は石垣島への陸自部隊配備により、南西諸島の防衛上の空白は解消したとしている。
 ただ、地元の住民が部隊配備を全面的に歓迎しているわけではない。駐屯地が標的となって住民が戦闘に巻き込まれることへの不安や、住民の賛否が分かれる中で部隊配備が強引に進められたことへの不満は根強く残る。
 沖縄は太平洋戦争末期、激しい地上戦の舞台となり、多くの県民が犠牲となった。旧日本軍が住民を守らなかったという苦い記憶は今も県民の間で受け継がれる。
 ロシアのウクライナ侵攻を見るまでもなく、軍事施設が攻撃対象になるのは必至だ。岸田文雄政権が「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」を容認したことを受け、巡航ミサイルなどが沖縄の離島に実際に配備されれば、攻撃対象となる可能性はさらに高まる。
 抑止力を名目にした陸自部隊配備が本当に住民を守ることになるのか、再び「本土防衛の捨て石」とされることはないのか、政府は沖縄の住民の懸念に誠実に向き合わねばなるまい。

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