新型コロナウイルス禍で迎えた3度目のクリスマス。街はにぎわいを取り戻しつつあるが、生活困窮者向けの食料配布や炊き出しには変わらず長い列ができた。コロナ禍の影響から抜け出せず、深刻化する物価高に苦しむ人たち—。イブの24日、東京・新宿と渋谷の現場を歩いた。(山下葉月、写真も)
◆増税…収入は上がらないのに
若いカップルや家族連れが行き交い、サンタクロースの衣装に身を包んだ人もちらほら。乗降客数が日本一多いJR新宿駅周辺は、いつにも増して華やいだ雰囲気が漂っていた。そこから徒歩10分ほど。都庁前の食料配布会場では、午後1時ごろから多くの人が並んでいた。チラシを敷いて体育座りする男性、肩をすぼめてじっと立つ女性。雲ひとつない空の下、ジャンパーのフードをかぶって寒さをしのぐ人の姿もあった。
「果物や野菜、マスクなどがもらえて、生活の足しにできる」。神奈川県からやって来たパート女性(41)は実家で両親と3人暮らし。今年1月から配布会に足を運ぶ。コロナ禍の一時期よりは仕事もあるが、生活は厳しい。ニュースで飛び交う「増税」の言葉が気になっている。「収入は上がらないのに。来年は少しでも暮らしやすくなるといいな」
都内の男性(76)は、コロナ禍で警備の仕事を失ったまま、今は年金だけで生活していると明かした。配布会にはたびたび訪れている。「物価が高いから買い物を少なくしている。来年はまた値上がりラッシュが来ると聞いているから配布はありがたい。来年は平和であってほしい。ウクライナ戦争を見ていて思うよ」
◆支援団体「物価高が深刻。即座に家計所得が上がる取り組みを」
配布会を開く認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」によると、この日の利用者は612人。昨年同時期の土曜日に比べて約1.8倍。10月以降、600人前後が当たり前のようになっている。大西連理事長は「物価高が非常に深刻。現金給付や児童手当など、即座に家計の所得が上がるような取り組みが必要だ」と訴えた。
一方、渋谷の繁華街も若者らで埋まっていた。今月14日、困窮者支援団体「のじれん」による炊き出し拠点の渋谷区立美竹公園が再開発に伴って閉鎖され、継続が危ぶまれたが、この日は何とか新たな場所を確保した。
冷え込み始める夕方、振る舞われたのは唐揚げ弁当などクリスマス特別メニュー。集まった人は豚汁が注がれた紙コップを大事そうに両手で包み、暖を取るように味わっていた。利用した60代の男性は「炊き出しは食事と情報交換の場。これからも続いてほしい」と祈るようにつぶやいた。
行政機関が休みに入る年末年始。「年越しの炊き出し」は、そのすき間を埋めようと各地で予定されている。
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