自民党総裁選では、国内総生産(GDP)比1%程度で推移してきた防衛費を関連予算を含めて2%に倍増し、不足する財源の一部を増税で賄うことの是非が議論になっている。
ただ、総裁選9候補は防衛費倍増自体には反対していない。国民に負担を強いる増税だけでなく、GDP比2%という規模ありきの防衛費増額そのものの是非から問い直すべきだ。
岸田文雄政権は「防衛力の抜本的強化」を名目に、2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円とし、27年度にGDP比2%にまで増額させる方針を決定。防衛費は第2次安倍晋三政権前の12年度の約4兆7千億円から、25年度には概算要求で約8兆5千億円にまで膨らんだ。
財源の一部は、所得、法人、たばこ3税の増税で賄う方針だ。
これに対し、茂木敏充幹事長は増税停止を訴え、財源は経済成長による税収増で賄うと主張。高市早苗経済安全保障担当相も同調する姿勢を示した。
両氏とも防衛費倍増自体に反対しているわけではない。政府・与党が22年12月に増税方針を打ち出す際、幹事長、閣僚としてなぜ同意したのか甚だ疑問だ。
他の候補は増税方針を変えないとしつつも、増税時期には言及していない。現状で増税は難しいと考えているなら、防衛費の適正規模も含めて議論し直すべきではないか。国政選挙後に増税時期を決定するのは国民に不誠実だ。
立憲民主党代表選の4候補は防衛費倍増や増税に反対するが、防衛費の増額自体は否定しない。
「集団的自衛権の行使」も違憲と明言するが、政権に就いた後、直ちに安保政策を転換すると言明する候補はなく、自民との違いは必ずしも鮮明でない。各候補は軍事偏重の自民党とは違う安保政策を競い合うべきでないか。
安倍政権以降の防衛強化は必ずしも抑止力の向上につながらず、周辺国との軍拡競争を加速させている。自衛隊員のなり手不足や不祥事も相次ぐ。防衛費を増やして最新の防衛装備を導入しても、人員不足では無駄遣いに終わる。
周辺情勢を緊張させず、国力にも見合った防衛力の水準はどの程度か。両党首選には規模ありきを正す建設的な議論を求めたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます