2025年度予算案が衆院を通過した。自民、公明の与党が野党の求めに応じて予算案を修正したことは少数与党となった国会の変化と受け止めたい。ただ、政党間協議や財源確保のあり方には課題も残した。「熟議の国会」のあるべき姿をさらに探るべきだ。
与党は、日本維新の会が求めた高校授業料の無償化に向けた予算を盛り込んで修正し、維新も予算案の賛成に回った。
与党との協議で、維新は高校授業料の無償化に道筋をつけ、国民民主党も「年収103万円の壁」を引き上げる方向性は実現したものの、両党ともに財源確保の具体策を併せて提案せず、政策実現の意欲を疑われても仕方がない。
一方、野党第1党の立憲民主党は基金や予備費の削減による財源で、高校授業料無償化やガソリン税減税、高額療養費の自己負担上限引き上げの凍結に充てる約3兆8千億円の修正案を提出した。
政府・与党はほとんど受け入れなかったが、立民が予算案を項目ごとに点検する省庁別審査の導入を主導し、財源もセットで修正案を示したことは評価したい。
政府が高額療養費制度の見直しを一部修正したのも、立民が患者団体と連携し、問題点を追及したためだ。
ただ、高校授業料無償化やガソリン税減税などで主張が重なる立民、維新、国民民主各党が緊密に協力せず、政府・与党に対する交渉力を発揮できなかったことには反省を促す。
予算案の修正を巡る協議が与党と野党各党との間で個別に行われた結果、夏の参院選に向けた野党の手柄争いの場となり、野党間の選挙協力が遠のいたことは残念でならない。
与党は足並みの乱れた野党各党をてんびんにかけ、数合わせに終始した。予算を成立させる責任があるとしても、ほとんど使われていない基金など無駄遣いの疑いを指摘されても手を付けようとせず、とても誠実とは言い難い。
石破茂首相がどう指導力を発揮したのかも見えづらかった。
予算案の衆院通過に伴い、国会の焦点は企業・団体献金の廃止を含む政治改革、選択的夫婦別姓制度を導入する関連法改正などの審議に移る。いずれも国民の関心が高い積年の課題だ。与野党が国民に見える形で議論を尽くし、今国会で結論を出すよう期待する。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます