警察の個人情報収集も「違法」 名古屋高裁、岐阜県に抹消命じる判決
岐阜県大垣市で計画された風力発電施設の建設を巡り、県警大垣署が住民の個人情報を収集し、業者に提供したのは違法として、住民4人が県に賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が13日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長は、一審の岐阜地裁判決を変更。情報収集も違法性があるなどとして、一審判決より増額した計440万円の賠償を命じた。また、県が保有していると認められる情報の抹消を命じる一方、国に対する抹消請求は、保有が認定できないとして請求を却下した。 【写真】判決を受けて涙を流して喜ぶ原告の松島勢至さん(右)=2024年9月13日午後3時17分、名古屋高裁前、溝脇正撮影 一審判決などによると、署警備課の警察官3人は2013~14年、施設の建設を計画していた中部電力子会社「シーテック」と計4回情報交換。勉強会を開くなどした住民4人の氏名、病歴、過去の市民運動への関与などを伝えた。 住民側は16年、プライバシーなどが侵害されたとして、県を提訴した。 22年の一審・岐阜地裁判決では、警察法で警察は犯罪の予防や捜査、秩序の維持などを責務とし、「万が一の事態に備えて情報収集するなどして予防手段の研究、準備も責務に含まれる」と示した。 そのうえで、住民らは勉強会を行っていたにすぎず、「秩序の維持に危害を及ぼすにはほど遠く、情報提供の必要性があったとは認めがたい」と指摘。情報提供は個人の私生活の自由を保障した憲法13条に基づく「プライバシー情報をみだりに第三者に提供されない自由」を侵害し、違法と認定した。 一方で情報収集は、「仮に市民運動に発展した場合、公共の安全と秩序の維持を害する事態に発展する危険性はないとはいえない」として、違法性を否定した。また住民らが求めた、収集した情報の抹消については「特定性を欠く」として、県と国への請求を却下している。 控訴審で、原告側は抹消を請求している情報が特定できるよう、内容を具体的に示すなど訴えを一部変更していた。 この問題は朝日新聞の報道で判明し、治安やテロ対策を担う公安警察の活動実態が明らかになった事例として注目された。(渡辺杏果)
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