東京や愛知などの高校生約40人が街頭で、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求める署名を呼びかけ、1年近くかけて集めた約1万2000筆を19日に外務省へ提出する。米国の「核の傘」に依存し、核禁条約への参加を拒む政府に対し「原爆を2度も落とされた戦争被爆国の日本が核兵器を禁ずる条約になぜ後ろ向きなのか」と訴えかける。(柚木まり)
「核兵器禁止条約を知っていますか」。署名活動を展開した「東京高校生平和ゼミナール」実行委員長の法政大学高校3年、鳥海太佑さん(17)は、東京・原宿など若者が多く集まる場所で、行き交う人たちに毎週のように声をかけ続けた。新型コロナウイルス禍でも「対話を通じて被爆者の思いを広く伝えたい」と街頭での活動にこだわった。
平和ゼミは東京都内の高校生有志でつくり、被爆者や戦争体験者の話を聞いてきた。政府が昨年1月の核禁条約の発効後も、署名・批准に後ろ向きだったことを受けて「日本が参加しないのはおかしい」と署名活動を計画。東京や愛知のほか、埼玉などの高校生の平和学習サークル8団体が協力し、昨秋から「1万筆集まったら外務省へ」を掲げて取り組んできた。
声をかけても無視されたり、「無理」と断られたりしたことは少なくなかった。「君たちが訴えているのは理想だよ」と説教を始める大人もいた。それでも、核兵器の保有や使用を全面的に禁止する条約で、66の国と地域が批准する現状を伝えると、多くの若者が賛同してくれ、目標を上回る署名が集まった。
「厳しい安全保障環境という『現実』を、核兵器のない世界という『理想』に結び付ける」。岸田文雄首相は今月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議での演説や、被爆地の広島、長崎での式典のあいさつで繰り返し訴えた。
広島選出の首相は核廃絶をライフワークに掲げ、保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任するが、核禁条約には一切触れなかった。保有国が参加していないとして締約国会議へのオブザーバー参加にも否定的だ。
19日の署名提出には、高校生が沖縄や広島からも上京し、被爆者も加わる。高校3年時に平和ゼミで署名活動を提案した武蔵野大1年の田原ちひろさん(19)は「核兵器のない世界を目指しながら、核抑止の考えを崩さない政府は矛盾している。若い世代から、社会を巻き込んで核廃絶の世論をつくりたい」と力を込めた。
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