首相官邸HPより
統一教会と自民党議員の接点について、茂木敏充幹事長が今週中に報告結果を公表すると4日放送のNHK『日曜討論』で明言した。といっても、自民党がおこなっているのは所属議員に自己点検させるだけのシロモノであり、統一教会との構造的な関係についてメスを入れる素振りもない。こうしたなかで期待されるのは、無論、メディアによる追及にほかならないが、最近になって、気がかりな声が上がり始めた。
統一教会とのズブズブな関係が明らかになった自民党の萩生田光一政調会長が、自身との統一教会の関係を報じたメディアに“圧力”をかけている、というのだ。
まず、東京新聞の望月衣塑子記者が8月27日、〈新政調会長の萩生田氏は、統一教会報道について、民放各局に抗議しているとの情報届いた〉とツイート。9月3日放送のYouTubeチャンネル「デモクラシータイムス」でも、その内幕をこう語った。
「先々週あたりから、各テレビ局に対して、番記者に萩生田さんが相当、圧をかけている」
「テレビ局のディレクターサイドから『現場はがんばろうよ』と言っているんですけれど、上がもう腰砕けに終わっちゃいそうだという話がちょこちょこ出てきている」
さらに、ジャーナリストの有田芳生氏も9月1日、Twitterに〈萩生田光一事務所は、統一教会との関係を報じたテレビ各局、週刊誌を名誉毀損で訴えると「通告」している〉と投稿した。
時を同じくして、萩生田氏が「メディアの報道に圧力をかけている」という情報が相次いで出てきたのだ。
こうした情報を受けて、本サイトがある民放のワイドショー関係者に取材をかけたところ、「正式な通告書や抗議文書などが届いたという話は聞いていないが、番記者を通じて、相当な圧力がかかっているようだ」という証言を得ることができた。
しかも、問題はこの圧力がすでに報道に影響を与え始めているのではないか、と思われるも割れることだ。望月記者は先の発言につづけて「大丈夫なのかなと思い始めたら、やっぱり萩生田さんの指摘が若干減ってきている」と指摘していたが、統一教会との関係の濃淡という点において萩生田氏は相当に濃く深いことが明白であるにもかかわらず、報道量がガクンと減っているのは事実だ。
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萩生田追及報道はなぜか漸減 統一教会とのズブズブぶりは次々明らかになっているのに
まず、萩生田氏が参院選で初当選した生稲晃子氏とともに参院選公示直前の6月に八王子の統一教会施設を訪問していたと「デイリー新潮」が報じたのは8月16日。18日には記者のぶら下がり取材に応じたが、その後も『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)をはじめ、『報道特集』(TBS)などは萩生田氏が統一教会の施設で「一緒に日本を神様の国にしましょう」などと講演していたことを追報。ところが、8月下旬に向かってどんどんと萩生田ネタが取り上げられる機会は減っていった。
言っておくが、萩生田氏にかんする報道が減ったのは“タマ切れ”が原因ではない。実際、8月24日には『news23』(TBS)が15年ほど前に萩生田氏が統一教会系の弁論大会で挨拶をおこなっていたと報道。29日には東京スポーツが萩生田氏が教団イベントで“四つん這い”になる礼拝をおこなっていたという証言を紹介している。また、「週刊新潮」9月1日号でも、萩生田氏がいまも統一教会の幹部とFacebookを通じて“友達”の関係にあるとジャーナリストの鈴木エイト氏が指摘。つまり、萩生田氏と統一教会のズブズブっぷりを示す情報はまだまだ出てくる状態にあるのだ。
ネタはあるのに、なぜか報道されなくなっている萩生田政調会長の問題。──こうして考えると、有田氏や望月記者が指摘しているように、萩生田氏からの圧力が影響していると見るのが自然だろう。
だが、これはいまにはじまった話ではない。本サイトでは当初から、テレビをはじめとするメディアにおいて萩生田氏への追及が甘いことを指摘してきた。
たとえば7月下旬には、統一教会との接点が発覚した当時の末松信介文科相や山口壮環境相などの釈明や、福田達夫総務会長による「何が問題かわからない」発言に対し、テレビではかなり踏み込んだ批判がおこなわれたが、その一方で、はるかに深い関係が明らかになった萩生田氏にかんしては、さらりと事実関係が紹介されるだけ。ほとんど批判らしい批判はおこなわれなかった。
さらに、内閣改造および自民党人事が発表された際も、統一教会と接点があるにもかかわらず引き立てられた閣僚などに対する批判が撒き起こったが、当時からズブズブの関係にあることが明らかだった萩生田氏が政調会長に就任したことについては、なぜかあまり厳しく批判されず、それどころか「俺は骨格じゃないのか」発言をヨイショするメディアまで出てくる始末だった。
萩生田光一の“報道圧力体質” 飴と鞭で記者をコントロール お気に入りのテレ朝記者が…
そして、こうしたテレビ局の弱腰な報道の背景にあると見られていたのが、萩生田氏の“報道圧力体質”だ。民放の政治部記者はこう語る。
「各局とも萩生田さんのことはすごく恐がっていますからね。萩生田氏はこれまで自民党や自分に対する批判については、露骨に抗議や圧力をかけてきた。それがあるので、どうしても及び腰になってしまう」
たしかに、萩生田氏といえば、自民党筆副頭幹事だった2014年の解散総選挙の際、『NEWS23』が放送した街頭の声にブチ切れた安倍首相の意を受けて、在京キー局に向けて〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉なる恫喝文書を送りつけたことで知られている。
また、2017年には、加計学園問題で安倍晋三・元首相と加計孝太郎理事長、萩生田氏のスリーショットが出回ったうえ、文科省に圧力をかけていた事実が浮上したが、テレビ朝日の『グッド!モーニング』が田原総一朗氏の「萩生田氏は加計学園問題のいわば一番の責任者」というコメントを放送すると、テレビ朝日に対して猛抗議。田原氏のコメントは正当な論評の範囲内であったにもかかわらず、わずか3日後に謝罪をさせてしまった。
「一方で、萩生田氏は自分のいうことを聞く記者には、情報を流してくれるので、応援団も多いんです。安倍元首相も飴と鞭でマスコミを手なずけて批判を封じ込めて権力を維持してきたが、それと同じやり方をしている感じですね」(前出・民放政治部記者)
実際、萩生田氏が生稲氏とともに八王子の統一教会施設を訪問していたことが発覚したあとにようやく開いたわずか5分程度のぶら下がり取材も〈調整に動いたのは懇意にするテレビ朝日の女性記者〉(「週刊新潮」9月1日号)だという。この記者は「萩生田氏のお気に入りなのは公然の秘密」「氏が官房副長官時代、テレ朝が組閣人事のネタを抜けたのは彼女のおかげだった」と言われているというが、他社からは「そもそもテレ朝は幹事社でもないのに、なんで取りまとめをしてるんだ」という批判の声があがり、この記者と萩生田氏が「質問は3問まで」と勝手に取り決めたことに対して激昂する社もあったという。
テレ朝は当初から統一教会と政治の癒着問題についてほとんど報じようとせず、現在も他社と比較すると明らかに消極的な姿勢をとっているが、その背景にはこうした関係が影響しているのではないか。
しかし、萩生田氏の問題をフェードアウトさせることは、けっして看過できるものではない。統一教会との密着ぶりもさることながら、萩生田氏は安倍元首相とも親密な間柄にあった。第二次安倍政権以降、安倍元首相が統一教会票を差配していた実態が明らかになっているが、そうしたなかで萩生田氏はどのような立ち位置にあったのかなど、はっきりとさせるべき問題はまだまだあるからだ。
しかも、萩生田氏は、本サイトが先日、お伝えしたように、東京オリンピックをめぐる森喜朗氏の疑惑でも名前が出てきている。森氏が東京オリンピック誘致と並行して進めていた神宮外苑再開発で、萩生田氏が東京都に圧力をかけていた事実が情報公開で明らかになっているからだ。
安倍政権のときと同じように、メディアはこのまま萩生田氏の恫喝に怯え追及の手を緩めてしまうのか──。まさに、正念場を迎えているといえるだろう。(編集部)
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