穴にハマったアリスたち

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「ジョージの別れと再会」: HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年04月11日 | ハグプリ最終回考察
前回の記事で区切りがついた後、改めて振り返ったら思うところあったので書いてみる。

【またね】

最終決戦の後、野乃さんはジョージと語り合います。


(「HUGっと!プリキュア」48話より)

エール:
「一緒に行こう」
ジョージ:
「どこへ?」
エール:
「未来へ」
ジョージ:
「無理だよ」
「僕は未来を信じない」
エール:
「うそ」
「本当に未来を信じていないなら」
「どうしていつも私に「またね」って言うの?」

この言葉を聞いたジョージは一人笑い、涙を流す。


(「HUGっと!プリキュア」48話より)

ジョージ:
「君は本当にすてきな女の子だね」

ジョージ:
「またね」
「僕ももう一度…」

ジョージは絶望したのでも、悲しんだのでもない。何かに気づき、前向きに未来に歩みだしています。
では彼に何があったんだろう?

まず、野乃さんはおそらく根本を誤解しています。
「未来を信じていない(=再会できないかもしれない)とジョージは言っているが、いつも「またね」と再会を信じる言葉を使っている、だから心の底では未来を信じている」と彼女は思っている。

ですが実態は逆です。

ジョージは「未来は不変」と認識しています。不変なんだから当然また会える。彼が未来に絶望したのは「また会えてしまう(未来は変わらない)」からです。「またね」は諦めからきた言葉だ。

もちろんジョージは、この認識のズレにはすぐに気づいたはず。そしてこの認識のズレが、救いに繋がったと思われます。

ジョージにとっては絶望でしかない「また会う」を、野乃さんは希望だと認識した。ならば同じことは「未来の破綻」にも言える。
避けられない「未来の破綻」にジョージは絶望していましたが、見ようによっては希望にもなりえる。

たとえば自分の人生を振り返ってみても、「何であんなことになったんだ。やり直したい」は沢山あります。ただ多少深掘りしてみると、「過去に戻れるなら、あんな出来事は防ぎたい」だけでなく、「あの出来事の後なぜああしなかったのか」も結構ある。
「友達の玩具を壊してしまった」に対し、「壊さないようにしよう」だけではなく、「あの時ちゃんと謝れなかった」みたいな後悔です。

ちょっと奇妙で本末転倒ですが、トラブルのリカバリに失敗した系の後悔は、再びそのトラブルが起き、挽回に挑めるのは救いになりえます。「あの時はパニックになって何もできなかったけど、今度は119番が間に合った」みたいなの。
冷たくいうなら何も挽回はしていないし、そもそもトラブルが起きない方がいいんですけど、やっぱり気持ち的には変わる。

ジョージはそれに思い至ったんじゃなかろうか。
未来の破綻は必ず来る。避けられない。
でも破綻に対し、立ち上がる機会がある。前回は心を折られ、変わらぬ未来に絶望したが、もう一度挑む機会がある。
先の例と違い、別のトラブルでリベンジするのではなく、後悔しているまさにその事件に挑めるんですから尚更。

構造はアンリくんの足の怪我と同じです。
事故は防げない。でもそこから立ち上がる未来は描ける。

私は「野乃さんの死亡は2033年~2038年ごろ」「ジョージは悲劇の直後から来ている(2043年から来ているクライアスとは時代が異なっている)」説を唱えているのですが、これとも合致します。
ジョージは「野乃はなの死亡」の後を経験していない。だから挑む意義がある。

ジョージが絶望した「変わらぬ未来」に、希望を見た野乃さん。彼女の誤解した発言により、ジョージは「破滅の未来」にも希望を見いだした。
だから改めて「またね」を口にし、旅立ったんじゃなかろうか。
2043年へ帰るルールーたちとは別に、2033年~2038年の事件にもう一度挑むために。破綻は防げなくても、今度は立ち上がろうと決意して。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「パラレルワールドの正体」: HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年03月14日 | ハグプリ最終回考察
前回「単一世界・未来不変」説と「単一世界・歴史改変」説の統合ができたので、次は「平行世界」説を考えてみよう…と思ったのですが、さっくりと解決できた。

(タイトルも含めて、全ての文章に「~だと私は思った」がつくのですが、冗長なので省略します)

【世界の成り立ち】


(「HUGっと!プリキュア」48話より)

アイデアとしては以前にも書いた「量子自殺」です。

過去に戻ると「歴史が変わった世界」と「変わらなかった世界」に分岐するとします。
分岐なのだから「変わらなかった世界」に属するジョージが必ず生み出される。

何度も何度も繰り返しても、その度に「変わらない世界にひたすら進み続ける」極めて不運なジョージが、必ず一人残ってしまう。
この稀有なパターンが、我々が見たハグプリ世界のジョージです。

若干ややこしいのですが「タイムトラベルした世界」と「タイムトラベルしなかった世界」への分岐ではない。
「タイムトラベルして未来が変わった世界」と「タイムトラベルしたが未来が変わらなかった世界」への分岐です。どちらのジョージもタイムトラベルはしている。(そう解釈しないと、タイムトラベルした時点でジョージは「歴史が変わった」と認識しますから、描写と矛盾してしまう)

この不運なジョージの視点だと未来は不変です。
実際には「未来が変わった」世界もあるのですが、パラレルワールドは観測できないのでジョージには関係ありません。
これなら彼の認識「未来は変えられない」と「平行世界」が矛盾無く両立できる。

前回までの検討と合わせるとこんな流れです。

『タイムトラベルにより「変わった世界」と「変わらなかった世界」に分岐する。我々が見たのは「変わらなかった世界」』

『ハグプリ世界は原則として「未来は変わらない」。しかし今回のループは、我々視聴者が観測していたことにより黒白キュアが召喚され、プリキュアの歴史が持ち込まれたため、過去・現在・未来が変わった。我々が見たのは「分岐で変わらなかった世界が、視聴者の観測により変わった後の世界」』
参考:「タイムパラドックスの真相」

『本質的には「変わらない」世界(※注1)なので、「変わった後」は不変。私たちが視聴した未来がそのまま繰り返される(※注2)』
参考:「ハグプリ最終回に起きたこと」

対立すると思われた「未来は変えられない」「歴史が変わった」「世界は分岐する」は両立します。今のところこれが、最も綺麗に説明できる。

(※注1:「変わらない」のは「変わらなかった世界に分岐したから」ではなく、「分岐したそれぞれの世界の未来は、分岐した後は不変だから」。分岐により変わった世界も、その後は未来不変と思われます)
(※注2:未来世界の時間停止は自然現象なので、クライアスを倒しても解決しない。また「野乃はなの死亡」も解釈の余地があります。小難しい理屈を持ち出さなくても、実はそもそもタイムパラドクスは起きていません)

【パラレルワールドの問題点:物語面】

検証のため、以前に私自身が提起したパラレルワールドの課題を解消してみます。まず物語面での齟齬。

『ジョージは「未来は変えられない」と確信していた。歴史の改変が可能だったり、平行世界に分岐するなら(歴史の復元力等を想定したとしても)そんな結論には至れない。物語として不自然すぎる』
参考:「パラレルワールドへの疑念(物語面)」

既に記載したとおり、「タイムトラベルして未来が変わった世界」と「タイムトラベルしたが未来が変わらなかった世界」に分岐したとすれば解決できます。

分岐説を採用した場合、なんとなく「ジョージ最愛の人がいた世界」と「ハグプリ世界」に分岐したかのような先入観がありましたが、そこが違ったらしい。

「最愛の人」や「ルールーがいた未来」は、放送されたハグプリ世界の話。
分岐先の世界は放送されておらず、誰も内容は知らず。もしかしたらいきなり地球が崩壊して人類が滅んでるかもしれないし、もっとずっと良い解決策に辿り着いてるのかもしれない。

【パラレルワールドの問題点:人物面】

『ルールーは「未来で待つ」と繰り返し発言している。別の未来や平行世界に旅立ったのなら矛盾してしまう。
また、えみるの主観では「未来は改変不可」としか認識できないため、齟齬が生まれる』
参考:「パラレルワールドへの疑念」(人物面)

ルールーは元々改変後の未来から来ているので問題なし。帰った先は改変後の未来であり、えみるのいる世界と同じ。ルールーはえみるを未来で待てます。

分岐も同様。「分岐する前の世界=ルールーのいた世界」「新たに分岐した世界=えみるの世界」ではない。
「分岐する前の世界=えみるやルールーのいる世界」「新たに分岐した世界=詳細を知りえない別世界」です。

それでいてハグプリ世界は「未来が変わらない」世界ですから、えみるの主観「未来は変わらない」とも矛盾は起きません。
他、「はぐたん・はぐみ別人問題」などもクリアできます。

【パラレルワールドの問題点:テーマ面】

『ハグプリのテーマ「なんでもできる」とは「過去にタイムトラベルすれば挫折をなかったことにできる」といった意味ではなく、「挫折や失敗はなくせないが、それでも立ち上がれる」だ。タイムトラベルにより未来の破綻を無かったことにしてしまったらメッセージが弱まる』
参考:「パラレルワールドへの疑念(テーマ面)」

ハグプリ世界を変えたのは、視聴者の観測によりプリキュアの歴史(これまでの自分の人生の歩みの象徴)が持ち込まれたから。

未来に起きる破綻は避けられない(ハリーらが語った未来の破滅は、改変後の未来なので霧消はしていない)が、挫けてしまった改変前と違い、思い出の力で踏ん張り立ち向かえた。

これがハグプリテーマと矛盾しないのは、オールスターズメモリーズのとおり。

【パラレルワールドの問題点:ミラクルリープ】

『ミラクルリープを使えば何度でも改変に挑める。改変可能な世界ならば、この手法を試さないのは奇妙だ』
参考:「パラレルワールドへの疑念(ミラクルリープ)」

ハグプリ世界は改変不可。登場人物の視点でも改変不可。ミラクルリープは元々99回繰り返すのが正史であり、未来は変わっていない。
歴史が変わったのは「視聴者の観測」という外からの影響なので、ミラクルリープでは変えられない。
よってミラクルリープで改変に挑まなくても何ら不思議はない。

もしかしたら繰り返し毎に世界は分岐するかもしれないが、分岐先はこちらの世界と全くの無関係なので、あってもなくても変わらない。

【なんでもできる、なんでもなれる】

以上、半年前に自分が提起した疑問を突破できました。素直に自画自賛したい。半年前の自分を乗り越えた…!
「歴史を変えた原因は、タイムトラベルではない」「世界は分岐したが、我々が見たのは「変わらなかった元の世界」の方」は、ちょっとしたエウレカじゃないかしら。

「未来不変」「歴史改変」「分岐世界」は対立するものだと思い込んでいたけど、実はひとつに統一できた。半年前に「これで解けた」と思ったのは、あまりに自惚れが過ぎました。考えれば前に進める。正に「なんでもできる」。
ひとまず区切りは付けられたものの、まだまだ何かあるかもしれないので、引き続き考えていきたいです。

えみるのおかげで視野が広がった気がする。ありがとうハグプリさん。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「タイムパラドックスの真相」: HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年03月07日 | ハグプリ最終回考察
真相というか私の解釈を、まとまったので書いてみる。

【歴史を変えたもの】

私としては「未来は変わらない。世界はひとつ」派ですが、「歴史が変わった」パターンも吸収できると気づきました。
(タイトルを含め、以下の文章はすべて「~だと私は思った」が文末につくのですが、冗長なので記載は省略します)

前提:
ハグプリ世界は「未来不変」。タイムトラベルをしても未来は変わらない。
未来を変えたのは外部からの干渉、すなわち我々視聴者が観測したことにより、オールスターズメモリーズと同様の「プリキュア」の歴史が持ち込まれる現象が起きたから。

本来の歴史はこうだった。

2018年:
はぐたんが2043年から飛来する。それを追いかけてクライアスも出現、やがて放浪中のジョージも合流。

2018年:
21話にあたるタイミングにてキュアブラック、キュアホワイトの召喚が行われない。
この影響によりジョージに敗北。時間が停止する。

2018年:
量子論的ゆらぎ、もしくはシステムの限界により遥かな断絶を経て時間が再開する。
(参考:「停止した時の果て」
未来からきたジョージ消滅。強いわだかまりを残したまま、戦いが終わる。

2030年:
野乃はなと現代ジョージの間に、はぐたん誕生。同時期にルールーも誕生。
その後、野乃さん死亡。
(追記:後に再考して改めて記事にしました。「歴史が変わる前の物語」

2043年:
時間停止現象が自然発生(参考:「オシマイダー療法」の冒頭)。元来ポジティブ思考の集まりであったアカルイアス社はその中にあっても活動を継続。しかし指導者を失ったこともあり、いつしか社名をクライアスに変更する。
これに呼応してキュアトゥモローらも出現。

2043年夏頃:
クライアスにトゥモローら敗北。ハリーが救出し、2018年へ。野乃さんと遭遇する。

2043年秋頃:
19年からトゥモロー帰還。しかしながら自然発生する時間停止にあらがえず、以下、未来は止まる。そこから先は不明。

ハグプリ世界ではこのループを繰り返していた。
途中に時間停止を挟む、1周に永劫の時間がかかる暗黒のループです。

ジョージが「未来は変えられない」と認識しているように、何度繰り返そうと上記となる。
ですが「今回の」ループでは「黒白キュアが召喚される」変化が起きた。それまではいなかった、我々視聴者による観測が行われたためです。
21話のあの時「メロディソード」をねだったマシェリを見て、私たちは玩具を連想した。そして私たちの知る玩具の代表格である「プリキュア」が召喚された。「オールスターズメモリーズ」と同様の手法です。野乃さんたちを救ったのは、プリキュアの歩みを知る私たち視聴者だった。


(「HUGっと!プリキュア」21話より)

これによりもたらされた「15年」の積み重ねにより、野乃さんはジョージとの決着をつけることができ、未来は変わった。

【変わらない歴史】

大事なポイントのひとつは「私たちが第1話から見ていたのは、変わった後の歴史」であること。

時間とは、過去から未来に向かって一方向に進むのではなく、過去・現在・未来が同時に存在します。
21話で歴史が変わったからといって、「1話~20話は改変前」とはなりません。現代物理がどうこう以前に、ストーリーが破綻してしまいます(参考:「改変世界のルールー」の冒頭)。
「破綻するからダメ」なわけではないけれど、説明がつくのにわざわざ破綻させる必要もない。私たちが見ていた「第1話」は「第21話」で歴史が変わったあとの世界とすれば、辻褄も物語も両立できます。

本質的にはハグプリ世界は「タイムトラベルしても未来は変えられない」世界。
変化をもたらしたのは、世界の外からの干渉があったから。(参考:「世界はいつ分岐したのか」
この解釈ならタイムパラドックスは回避できます。
私たちが知る未来(ルールーたちが来た未来)は、「変わったあと」の未来ですから、再会不能の謎の別世界ではない。この世界の未来と、ルールーが戻った未来は同じ世界にある。

「変わったあと」の世界の流れは、以前に考えた「未来不変」と同じ。(参考:「最終回に起きたこと」
これで「歴史は変えられる」と「変えられない」のふたつの説を統合できます。

【補足1】
以前の説を2ヶ所、修正したい。

①プリハートが分裂した理由

「2044年に、えみるが送り届けたから」と設定しましたが、これだとトゥモローチームにいた本来の持ち主と上手く噛み合いません。なので「未来でも分裂したから」で考えたい。
未来に帰る際、分裂したプリハートはひとつに戻しルールーへ。帰還後、本来の持ち主にプリハートを返却。ですが敗戦の余波か、彼女は単独変身できなくなっていた。そこでルールーと協力して変身することになり、結果としてプリハートが分裂した。

未来でこの現象が起きたので、過去でも分裂できた。
未来で分裂できた理由は、もちろん過去で分裂したからです。王道のタイムパラドックス。

では未来の持ち主は誰だったかといえば、やはりしっくり来るのは愛崎えみるさん(推定37歳)です。
一度できたのだから、二度できてもおかしくない。これが過去と未来でグルグルと起きる。


(「HUGっと!プリキュア」40話より)

そして「えみるっぽい」のは、右から2番目の子です。
これまた以前に考えたとおり、右から2番目は主人公の可能性がある。(参考:「明日は何色」
理路整然と「愛崎えみる(37歳)主人公説」を導けました。万歳。

【補足2】
②トラウムがオールスターズと戦った理由

本来トラウムには36話にてプリキュア数十人を同時に相手する必然性がない。
わざわざ多方面作戦をとらず、ハグプリチームだけと戦うべきです。

また、あくまで私の妄想ですが、トラウムは2033年を経由してきているように思う(アラモード・魔法つかいの年齢齟齬の解消のために捻り出した仮説)。
そんなことまでして、何故あんな無謀な玉砕をしたのか。(これまた私の妄想では、トラウムはあの戦いで消滅している。最終回トラウムが未来に帰ったあと、未来で決着がついてから再び戻ってきたと思ってる)

いまいち説明に苦労していたのですが、上記の歴史改変案ならどうにかなります。
トラウムはプリキュアオールスターズ戦をやることで、プリキュアの歴史を野乃さんに刻みたかったんだ。

黒白先輩の召喚により歴史が変わり、ハグプリ世界に「プリキュアの15年の歴史」が出現した。
これを野乃さんに刻むためにオールスターズ戦を引き起こした。この集結があったからこそ、対ミデンや対ジョージを踏ん張れた。
トラウムはそのために玉砕を分かった上で、過去に舞い戻った…のだと思う。

【変わる未来と変わらぬ未来】

半年かかって「未来不変」の仮説を組み立てた後、また半年かけて「歴史改変」との統合を果たせました。
他の人がどう感じるかはさておき、私としては納得感ある。仮説は進化する。「なんでもできる」を改めて実感しました。

●他、関連記事:
「ハグプリ最終回に起きたこと」「世界はいつ分岐したのか」
HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「ヒープリはミデンに勝てるのか」: HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年02月28日 | ハグプリ最終回考察
ヒープリさんがめでたく完結なされたので、以前に書いた記事を振り返ってみる。

【這いよる15年】

プリキュア15周年では、初代を見ていた現役幼児が大人になり社会に出ていくタイミングを意識してか、「世界はどうしようもなく理不尽で、未来は閉ざされている」を扱っていました。
キラキラした子供時代は終わった。未来には光はない。

これに対し「オールスターズメモリーズ」にて野乃さんは、「それでも15年歩んで来たんだ」「ここで折れるなんて、私のなりたかった私じゃない」と逆ギレにて乗り越えられた。
そしてそれに対するカウンターとして、「不運により願いを奪われ、思い出すらないまま捨て去られた」ミデンが立ちふさがった。


(「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」より)

[引用:「2033年プリキュア30周年」]
テーマとして成立するかを見るために、プリキュアたちが勝てるかどうかを考えてみます。
15年の総決算たるミデンに対し、1~15年シリーズのプリキュアさんらは、それぞれの番組テーマを元に次々と解答を示しました。では、上記のようなテーマを背景に、30周年でもミデンのような敵が現れたとして(以下、新ミデンと呼称)、1~15年シリーズのプリキュアは勝てるのか?

おそらく無理に思えます。

(中略)

一方、16年~30年のプリキュアだとどうか。
分かっているのは「スタプリ」と「ヒープリ」だけですが、この2つは「新ミデンには通用するが、ミデンには勝てない」ように見えます。

[引用終]

では改めて考えて、グレースさんは勝てるのか(救済できるのか)。
以前に想定したのとは違ったけど、やっぱり無理な気がする。

ミデンは悪いやつだから生産中止になったのではなく、会社が経営危機に陥ったからです。当時の会社や社員が、後先考えずに借金したり、非合法な手段に手を染めれば生産を継続できたのかもしれませんが、我が身を犠牲にしてまでそんなことはできません。これはダルイゼンやリフレインに通じるものがある。悪ではなくても、自身の生存のためには切り捨てる。

だからミデンには勝てない(救えない)。

【待ち受ける30周年】

では勝手に設定した30周年シリーズの敵・新ミデンはどうだろう?
初代を見ていた子供たちが30代半ばになることから、「それは望んだことなのだけど、決まってしまったことへの漠然とした不安」がテーマになるかなと、勝手に予想しています。マリッジブルーやマイホームブルーのようなイメージ。

このテーマを掲げる新ミデンには、ヒープリは勝てます。
寂しさはある。だけど前に進もう。
ビョーゲンズを切り捨てたり、ヒーリングアニマルと戦う未来が来るのかもしれない。リフレインが焦がれた、子供と過ごすあの土曜日は戻ってこない。
だけど前に進む。前に進もうと望んだその結果、切り捨てたものも、戻れないこともあるけれど、それでも進むんです。

綺麗に合致します。結婚することによって別れを告げる独身生活や、住み慣れた賃貸を経てマイホームに引っ越しするとか、子供が産まれて以前の生活から変わるとかもこの構造だ。

そういったわけで、勝手な妄想の産物「1~15年シリーズはミデンに勝てるが、新ミデンに勝てない」「16~30年シリーズはミデンには勝てないが、新ミデンには勝てる」は、今のところは成り立つように思う。

【フルスロットル】

じゃあ夢原さんとは何が違うんだろう?表面的に似ているように思いますが、結果が違うのだから理由があるはず。

思うに、夢原さんは未来や目標に重点があるんじゃなかろうか。
夢原さんがミデンにした回答は「だから大丈夫」。どうしようもなく苦しいこともある。私たちもそうだった。だから大丈夫。
もしさみしくて悲しくて折れそうなときは、同じように戦っている私たちを思い出して。

良い悪いや優劣は別として、夢原さんは「各自がそれぞれ夢を信じて突き進む(そしてその姿に相互に励まされる)」形です。
対して花寺さんの場合、中心となる「夢」があるのではなく、各自の「生きたい」が絡み合い、結果として相互の助け合いになる。
どちらかといえば、最終的なゴールより過程に描写の力点があるのかもしれない。

戦う敵を入れ換えてみよう。

ナイトメアが突きつけた課題は「夢は叶わない」ではなく「叶えても意味がない」。
仮にヒープリと対戦したなら「戦って生きても、意味があるのか」とくるはず。キングビョーゲンの指摘と違い、「戦う(今)」よりも「生きる(未来)」に疑問を投げかけている。
花寺さんの回答は「それでも生きたい。私たちは戦う」でしょう。夢原さんのそれとはやっぱり意味合いが異なる。

夢原さんがキングビョーゲンと戦った場合、たぶんというか確実に「あなたは悪い人!絶対に許さない」です。ダルイゼンは助けを求めてきたあの場で爆殺されてる。駆け引きや揺さぶりが成立しない…。
「夢」を中心としているので、その価値観に賛同しない相手は敵だ。説得や交渉なんてしてる暇はない。だって「夢」が呼んでるんだから。

1~15年と、16~17年シリーズの違いとも言えるかもしれない。
1~15年は「昔は良かった。でも今は壊れてしまって、未来には避けられない絶望が待っている」の世界観があるように思う。だから「未来をどう迎えて乗り越えるか」に焦点が当たる。
16~17年はその未来が訪れています。だから「今(1~15年シリーズにとっての未来)をどう戦うか」がメインになり、「未来」より「今」が中心になる。
分かるような分からないような、トロプリさんであっさり覆されるかもしれませんが、とりあえずは整理できた気はする。

【蛇足】

先入観をもって見るなら、トゥモローさんの40話での発言「過去は返してあげられないけど、未来は作れる」などは16年~30年シリーズっぽい。
1~15年シリーズよりも、「スタプリ」「ヒープリ」に近しいのでは。

【蛇足2】

第1話を見るに、トロプリさんにも当てはまってる気がする。

●他、関連記事:
感想「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」
HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「世界はいつ分岐したのか」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年02月14日 | ハグプリ最終回考察
私は「世界はひとつ、歴史は変わらない」派ですが、思考の幅のため「分岐」「歴史改変」の立場でも考えてみます。
そして考えた結果、最終回から2年たった今ようやく「分岐」「改変」でも説明できそうな道を見つけた。人は成長する。

【世界の分岐点】

そもそもの出発点となる「分岐」はいつ起きたんだろう?

分かりやすいたった一つのポイントがあるのか、それとも曖昧に行ったり来たりしながら複数の要素の積み重ねで分岐が確立したんだろうか。
そんなの特定のしようもないので、ひとまず「何かポイントとなる分岐点があった」と仮定してみる。
候補になりそうなのは5つあります。

①野乃さんの前髪の失敗
②はぐたんの飛来
③敵幹部の救済
④黒白先輩の召還
⑤アンリくんの救済

順に考えてみる。

【候補①野乃さんの前髪の失敗】

第1話冒頭にて野乃さんは前髪のカットに失敗します。
別世界の野乃さん(仮)は違う前髪をしていますから、「この前髪失敗が世界の分岐点だった」といえる。視覚的にも分かりやすい。

…分かりやすいのですが、ここから始まる大きな出来事の行方が「前髪をどう切ったか」で決まっていいんだろうか。

野乃さんたちが頑張ったから変わったのではなく、前髪を失敗したから未来は明るくなった。肩透かし感が否めません。
もちろんバタフライ効果的に積み重なったからであって、前髪が全てではない、とも主張はできます。
が、バタフライ効果を前提にするなら、未来は変わりまくるのが当たり前。ジョージたちの「何度やっても未来は変わらない」と致命的に矛盾します。

候補①の肝は「はぐたんの飛来前に分岐していた」ですから、これを採用するのであればそこを活かしたい。
つまり「実は第1話が始まりではなく、もっと前から仕込まれていた」。タイムトラベルものの王道です。

【候補②はぐたんの飛来】

はぐたんが来たから分岐した。分かりやすい。

欠点も分かりやすいです。
第一に「過去に戻る」行為の発端は未来ですから、分岐点は過去ではなく未来になってしまう。
また、飛来しただけで変わるなら、先ほどと同様にジョージたちは何を悩んでいたのか分からない。

「いつ飛来したのか」も何気に曖昧です。

第1話を見ると、はぐたんが飛来したかのような描写は
・野乃さんの登校中
・屋上に三人集まっていたとき
・夜の野乃邸
の3つがある。

とりあえず最初の「登校中」が分岐点だとすると、元の歴史は何となく想像できます。

「登校中の野乃さんは、ボールに当たりそうになっているお祖母さんを見かけ、反射的に庇った。
この瞬間にはぐたんが飛来し、なぜか時間が停止。あれボールが当たらないぞと不思議に思い、体勢を変えたところで時間再開、ボールがぶつかる」

この流れでしたから、はぐたんが来なかった場合、野乃さんはそのまんまボールの直撃を受けます。
当たりどころが悪くて登校できず、何なら骨をやってしまい入院。出だしでつまづいたのでクラスに溶け込めず。
入院中に薬師寺さんは役者が忙しくなり、輝木さんはますますグレてしまい、交遊関係も築けず。
これが本来の歴史だったのかもしれない。入院中に髪が伸びたとすれば、前髪の違いも解消できます。

ただこれだと、どうやってプリキュアになるんだろう?
ジョージは「未来は変わらない」と認識していますから、「2018年にプリキュア出現」なんて大事件には動揺するはず。動揺しなかったということは「元の歴史でもプリキュアはいた」と考える方が自然に思えます。

【候補③敵幹部の救済】

②との区別を明確にするため、③④⑤は「元の世界でも、はぐたんが未来からやってきた。が、解決しなかった」とします。「はぐたんの飛来」までは史実どおり。それから変わった。

その変わったタイミングとして、まず思い浮かぶのは「各幹部の救済」です。
チャラリートとの最終戦で剣をタクトに変えていますから、いかにも「変わった」感はある。

元の歴史ではチャラリートは普通に斬首された。
ルールーは寝返らず、エトワールのプリハートも返却されなかった。必然的にエトワール脱退。
その後ルールーは撃破されアムールも出現せず。
以下、苛烈な消耗戦になり、誰も幸せになれない泥沼に。

とりあえずストーリーとして成立はしますが、「じゃあ何で変わったのか」が分からない。
①と同様に「バタフライ効果的な偶然」では腑に落ちません。

【候補④黒白先輩の召還】

「何か理由づけになりそうなこと」と言えば「はぐたんのタイムトラベル」です。
厳密に言うなら「なぜ今回の歴史ではタイムトラベルをしたのか」の問題にすり変わるだけなのでエンドレスなんですが、それは横に置こう。

はぐたんの不思議パワーとしては第1話の他、第21話の黒白先輩の召還が印象的です。すなわち「元の歴史では黒白キュアは召還されなかった」。
そのためパップルに敗退、または容赦なく撃破。以下、泥沼な消耗戦へ。

15周年の記念シリーズですから、「初代プリキュアの介入により未来が拓けた」は美しい気はする。
とはいえ横に置いた問題「じゃあ何で今回の歴史では召喚したの?」で止まってしまう。

【候補⑤アンリくんの救済】

ジョージが「歴史が変わった」と明言しています。それまでは狼狽えていなかった(とも限らなかった気もしますが)ので、ここが分岐点。
ただ結局は①②③④と同様に「何が違ったから今回は変わったのか」が分かりません。
また、ここまで来てからの分岐だと、元の世界と大差ない気がする。野乃さん(仮)はこの時点からどう「失敗」したんだろう…?

【私たちとプリキュア】

一通り見ましたが、考えれば考えるほど「なぜその変化が起きたのか」「その原因は以前は起きなかったのに、今回はなぜ起きたのか」が延々と続くので解決しません。
量子論的な揺らぎによる変化だったらジョージの「未来は変わらない」と矛盾するし、特別な何かで変わったならそれはなぜ起きたのか。
これはもうハグプリ世界の中で考える限りどうにもならない。やはり「歴史改変」「平行世界」には無理がある…と思ったのですが。

候補④「黒白先輩の召還」は突破口があった。


(「HUGっと!プリキュア」21話より)

あの時マシェリは「おもちゃをくれ」とねだっていました。
これを見た我々は、おそらく誰もが追加おもちゃを連想したし、我々の知る最も頼もしい「おもちゃ」は「プリキュア」です。
そして、はぐたんが不思議パワーで「おもちゃ」を召還した。我々が連想した「おもちゃ」の代表格たるプリキュアを。

つまりは概要としてはこんな感じ。

『ハグプリ世界は未来不変。歴史は変わらない。延々と2043年からのクライアス侵攻や破綻を繰り返している。
しかし今回のループは外部の存在(私たち視聴者)が観測していた。その影響で歴史が変わった』

この演出は「オールスターズメモリーズ」で行われています。15年のプリキュアの歴史を知り、応援するみんながいた。だから復活できた。
同様に21話も、プリキュアを知る我々が視聴していたから黒白が召還された。

この時の出来事を、雪城さんは「別の世界に迷い込んだ?」と表現していますから、単なる瞬間移動ではなく「時間移動」や「異世界」でも辻褄はあう。
まさにあの瞬間まで、あの世界には黒白先輩はいなかった。しかしあの瞬間に歴史が変わり、プリキュアの歴史が生まれた。「プリキュア」を知る私たちが観測し、マシェリの呼び掛けに「プリキュア」を連想し、それをはぐたんが呼び出したから。

「積み重ねた15年(こどもにとっては人生そのもの)があったから踏ん張れる」はハグプリの根幹ですから、ここを起点にするのはかなりすっきり理解できる気がする。
細かい部分は整理するとして、大枠の光は見えてきたんじゃないかしら。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「特異点リストル」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年01月31日 | ハグプリ最終回考察
半年以上抱え込んで、結論が出そうになかったので諦めて吐き出してみる。

【未来からの侵略】

私も含め、ハグプリの考察の多くは「現在と未来の行き来はない」を前提にしています。あざばぶ支社(2018年)は、クライアス本社(2043年)と情報伝達は不可。というのも、これを前提にしないとややこしい話になる。
特に「平行世界」説や「歴史改変」説にとっては致命的です。情報交換がされるたびに分岐や改変が起きますから、収拾がつかなくなる。
ストーリー上の矛盾も深刻で、もはやジョージの背景が理解不能になります。未来は変わるじゃないか、何を悩んでいたのか。

「歴史は変わらない(未来不変)」の立場でも厄介です。
クライアス社員の立場だと「破滅する未来」を知っていますから、「勝つ」と分かる。だから対プリキュアにも自信を持てる…のですが、問題は「過程」です。
もし未来と連絡が取れるなら、普通は詳細を調べさせ、対策を取ります。しかし彼らはそれをやっている様子がない。

ではなぜ行き来ができなかった(または行き来しなかった)のか。

第一に思い浮かぶのは「タイムトラベルの技術がなかった」。
最終回の描写などからも、はぐたんが構築した手段でしかタイムトラベルできなさそうですから、これ自体はそれなりに確からしい。
ですがパップルらは「その気になれば帰れる」かのような発言をしています。実際はぐたん頼りだったなら、下手すれば2018年から戻れなくなりかねない。その割には危機感がないです。

そうすると次に浮かぶのは「情報操作」です。「本当は行き来できないのに、できるかのように見せかけた」または「行き来はできるが、裏でそれを止めていた」。

仮にそうなら実行できる人物は限られます。

ジョージは社を離れて2018年を放浪していたので厳しい。「何もしない男」のイメージにも合いません。
トラウムはいかにもやりそうですが、彼は途中から離脱しています。トラウムが抜けた後、ビシンあたりは未来情報の活用を考えそうだ。
残るはリストルです。彼の立場ならできる。

【過去での葛藤】


(「HUGっと!プリキュア」1話より)

リストルは序盤において、ジョージの振りをできる程度には場を掌握しています。未来への通信を隠蔽なり遮断なりもできそうです。
中盤以降もずっと会社にいるし、前述のビシンの制御も他の社員よりはできるはず。
では「できる」として、やる動機はなんだろう。

リストルは思うところはありながらも、ジョージに付き従っています。裏切りそうといえばそうだし、逆に裏切る気があるならもっとはっきりした動きをしそうです。
とりあえず「裏切りのつもりだったのか」は横において、彼の視点で考えてみる。

まず「行き来ができなかった」場合は比較的シンプルです。戻れないことをパップルらが知ったらパニックになりかねない。だから黙っていた。
(注:ルールーの修理関連で未来に戻ったかのような発言をしていたかもしれない。もししていたなら、それも偽装と仮定しよう)

「行き来ができる」場合。
前提として、彼の認識では(世界の真相が何であれ)「歴史は変わらない」のはずです。
変わるんだったら時間停止ではなく、世界の救済を目指せばいい。

クライアスの戦略は「未来を破滅させる」ではなく、「破滅の未来は変えられない。だからその日が来ないように停止させる」。録画された動画は何度再生されても結末は変わらないけど、一時停止すれば結末に至るのを避けられます。

さてそうすると「未来との行き来はできた」場合、リストルは未来に戻って今の時代の情報を漁るんだろうか。
「未来は変わらない」のだから、「プリキュアが世界を救ったりはしない」ことは調べるまでもなく分かります。では「全人類のプリキュア化」などは把握できるんだろうか。把握したいんだろうか。

情報を漁ってもおかしくはないし、漁らなくてもおかしくはない。
知りたいと思うのは自然な欲求です。知っても変えられない(知ること自体も定められている)なら、わざわざやる意味がないとも言える。リストルの人物像だとどちらもありそうで、何とも分かりません。

もっとまずい問題もある。
この手の思考をしたなら、すぐに「時間停止は完全にはなされない」と思い至ります。
「プリキュアに負けて失敗する」といった単純な話ではなく、「時間を停止できても、量子論的な何かのゆらぎにより、遥か彼方の停止の果てにはいずれ再開する」からです。(参考:「停止した時の果て」

だとすると、リストルは「全ては無駄である」の空虚な諦念に陥っていたのかもしれない。これはリストルの描写とも合致するように思う。
そして同じような絶望に染まらぬように、パップルらの未来への行き来は阻害した。阻害してもしなくても未来は変わらない(正確には「リストルの思いが何であれ、阻害したかどうかの未来は変わらない」)ので、せめてもの自己満足を選んだ。

33話にて「(自己の都合で他者の妨害をする人は)俺の最も嫌うタイプだ」と発言しています。上記の状況はこれに近く、だからこそ嫌悪を顕にしたようにも思えます。

【朧気な現在】

これらは無駄に考えすぎてるだけで、事はもっと単純なのかもしれない。
たとえば「予算がおりなかったから行き来する気が起きなかった」とか「普通に行き来していたが、未来は文明が崩壊していて過去の情報を得られなかった」のかもしれない。
もしくは「未来側から情報封鎖されていた」もある。

ただ33話の自嘲気味の語りといい、彼には何か抱えているものがありそうです。そもそも彼が絶望した理由もはっきりしない。
「部下を裏切って情報を閉ざしていた」「ジョージの(おそらくはジョージ自身も気づいている)時間停止のジレンマを知りつつ従っている」というのは、なんとなく彼の背景にあっているようには思います。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「キュアパッションの跳躍」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年01月17日 | ハグプリ最終回考察
止め時を見失った感と共に、だらだら書いてみる。今回はいつもに増して結論がないです。

【距離を無視する】

「時間」の考察をしようとすると「距離」や「速度」が度々でてきます。
かつてマナさん達は「光年は時間の単位じゃない」と歌い上げましたが、実際には互換される密接な関係にあたる…らしい。

一連の話には「光速を越えられない(世界の最高速に光は到達している)」が関わるのですが、そうすると厄介な問題があります。瞬間移動です。プリキュア世界では光速を越えられる。
そこで瞬間移動の代名詞たるパッションさんを例に、何が起きるかを思考してみる。


(「HUGっと!プリキュア」37話より)

まず10光年離れた位置にパッションさんと野乃さんを配置します。
そしてパッションさんがアカルンを起動、野乃さんの背後に移動、殴り倒して元の位置に再び移動したとします。

両者の間隔は10光年離れていますから、野乃さんの方角を観測してもリアルタイムの映像は見えません。
殴ってから待つこと10年。パッションさんは自分が突然出現し、野乃さんを殴る様子を観測します。
これ自体はそれほど変ではない。イメージ的には録画した映像を見ているようなものです。

では次に、野乃さんとパッションさんに向かいあっていただき、野乃さんがパッションさんに殴りかかったとします。まぁオムライスを勝手に食べたとかなんでしょう。

先ほどと違い、両者の距離は非常に近い。
ですが「殴りかかる野乃さん」の映像は、瞬時にはパッションさんに届きません。先のように10年もはかかりませんが、光速は有限速度なので(極めて微小な)タイムラグは残ります。
ここでは仮に「0.000(略)03秒」かかるとします。

また、近距離だと先ほどは無視できた「反応速度」が問題になります。
映像がパッションさんの目に到達しても、脳がそれを認識するのにもタイムラグがある。一般的には0.1秒ほど。
プリキュアさんの反応速度は我々よりは桁違いに早いと思いますので、仮に「0.000(略)04秒」とします。

野乃さんが殴りかかってから、
0.…3秒後にその映像がパッションさんに届き、
更に0.…4秒後(計0.…7秒後)に脳が認識する。

さてこの状況でパッションさんがアカルンを起動し、野乃さんの背後を取って殴り倒し、再び元の位置に戻ったとします。(この一連の動作は文字通りの瞬時に行われるとする)

開始0.…1秒後。この時点ではパッションさんは「殴られる」ことを認識していません。光が届いていないので。
しかし何かの危機意識だかで先読みし、アカルンを起動。反撃に出て戻ったとしよう。
すると開始から0.…3秒後に「殴りかかる野乃さん」の映像が届き、計0.…7秒後に「殴られる…!」と認識。ガードを固めるものの、実際の野乃さんはその0.…6秒前に殴り倒されているため、「殴られる…!」と思った0.…1秒後には自分自身が野乃さんの背後に出現し攻撃を阻止してくれます。

0.…7秒後:野乃さんの攻撃を認識する
0.…8秒後:過去の自分が防ぐ姿を見る

一連の現象にはタイムトラベルの要素はないのですが、実感として時間を操ってるようにも見えます。人間の認識力を越えている。
パッションさんがアカルンを戦闘に使いたがらないのは、近接戦ではこの種の現象が多発し、脳がオーバーヒートするからかもしれない。

【時間も無視する】

上記を念頭に、「自由自在にタイムトラベル可能になったスーパーキュアトゥモロー」を考えてみる。ミラクルライトとかでパワーアップするんです。

先ほどと同様に、下記とします。

・野乃さんが殴りかかる映像がトゥモローに到達するまで0.…3秒かかる。
・その映像を脳が認識するまで0.…4秒かかる。
・「野乃さんが殴りかかった」を脳が認識するまで、計0.…7秒かかる。

[ケース1]
開始から0.…3秒後に、
0.…3秒前の過去に戻って攻撃し、
0.…3秒後の未来に転移した場合

トゥモローの目に「野乃さんが殴る」映像は到達しています。
しかしそれを彼女が認識するより早く、電光石火で過去に戻り、殴り倒し、そして元の時間に戻ってきます。

この時、トゥモローの目には新たに「タイムトラベルしてきたトゥモローに殴り倒される野乃はな」の映像が瞬時に到着し、脳へと送られます。(0.…3秒後の世界にいるため)
一方、「誰にも邪魔されずに殴ってくる野乃はな」のオリジナル映像も視神経だかに到達済みですから、同じように脳に送られます。
ということは、トゥモローさんは「改変前の世界」と「改変後の世界」の重ね合わせを目撃するはず。
「世界の分岐」とか「過去の改変」とかを踏まえると、この時の彼女はどこの世界にいるんだろう…。

[ケース2]
開始から0.…3秒後に、
0.…3秒前の過去に戻って攻撃し、
0.…4秒後の未来に転移した場合

野乃さんを殴って戻ってきたトゥモローですが、「トゥモローに殴られる」映像は0.…1秒前に通過しています。
そのため、トゥモローさんが認識するのは改変前の「野乃はなが殴ってくる」と、改変後の「なぜかいきなり吹っ飛んでる野乃はな」の重ね合わせ。
認識の連続性が失われています。トゥモローさんは状況を正しく認識できるんだろうか。

[ケース3]
開始から0.…3秒後に、
0.…3秒前の過去に戻って攻撃し、
更に0.…3秒前の過去に転移した場合

最初の時点より計0.…6秒前に戻ってきます。この時点では野乃さんは拳を振り上げていません。

そこから0.…4秒後(事の発端から0.…1秒後)、トゥモローはタイムトラベル前に目に届いていた「殴ってくる野乃はな」を認識。
そしてその0…1秒前に発信されたトゥモローに殴られる映像が、0…6秒後にトゥモローさんに認識される。この間、未来を知っているトゥモローさんは余裕綽々、仁王立ちで未来を迎える…のですが、タイムパラドクスが起きてしまう。

そもそも「0.…3秒前の過去に転移」ができません。そこには過去の自分がいるので物理的にぶつかってしまう。

[ケース4]
開始から0.…3秒後に、
0.…3秒後の未来に行き、
0.…3秒前の過去に転移した場合

未来に転移しているので、戻ってきた直後は野乃さんの攻撃は止まっていない。
が、0.…3秒後に自分が現れ阻止することは知っています。
開始から0.…6秒後「今頃、私が母を殴ってるんだろうな」と認識し、開始から0.…7秒後、野乃さんが殴ってきていたことに気づき、でも防いだことも知っているのでぼんやり待ち、その0.…6秒後に殴りかかる自分の姿を見る。

なおこの「野乃さんが殴ってきている」ことに気づいたトゥモローさんが、慌てて反撃にでて再びタイムトラベルすると厄介なことになる。「未来へのタイムトラベルでも分岐や改変が起き得る」事例です。

[ケース5]
開始から0.…3秒後に、
0.…3秒後の未来に行き、
0.…3秒後の未来に転移した場合

基本的にはケース2と同じ。欠落範囲が広くなる。ただしトゥモローさんの主観では同じなだけで、客観的に見ると、トゥモローさんが行方をくらましている時間が0.…3秒×2回ある。

一連の例では「トゥモローが時間攻撃をしてくる」情報を野乃さんは認識できていません。「トゥモローが姿を消した」情報が届くのは0.…3秒後で、脳が認識するには更に0.…4秒後です。
もし「野乃さんが迎撃行動を取る」を条件に加えると話が更にややこしくなる。

[ケース6]
開始から0.…1秒後に、
0.…1秒前の過去に行き、
0.…1秒後の未来に転移した場合

始動が0.…1秒後なので、トゥモローの目には野乃さんの攻撃が届いていない。そして攻撃前に殴り倒すため、彼女の脳裏には「野乃はなが殴ってきた」情報が一切届きません。
仮にハグプリ世界が何かある度に分岐する「平行世界」だとすると、「情報を持っていないのに改変や分岐は起きるのか」の問題に発展します。


以上、ざっと見ただけでも鬱陶しいほどごちゃごちゃある。色々と間違いもありそうですけれど、見直すのも辛いほどごちゃごちゃある。
他にも無数にパターンがあるし、「同じ時間にいる二人のトゥモローが同時攻撃」とか「0.…5秒後に転移、0.…3秒前に転移、0.…1秒前に転移、0.…2秒後に転移のように連続起動」とかされると、もう何が何やら。
はたまたこれを「野乃さん視点で見た場合」「第三者視点で見た場合」どうなるのだろう。
考えれば考えるほど厄介なことになるので、トゥモローさんはこんなスーパー化はしないで欲しい。

※思考のために、何度も殴られてくれた野乃さんにありがとう。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「改変世界のルールー」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年01月10日 | ハグプリ最終回考察
私としては「未来不変」を支持していますが、幅を広げるため「歴史改変」の立ち位置でも考えてみる。

注)本ブログでは下記の意味で使用しています。
「歴史改変」:はぐたんの飛来およびその後の活躍により、未来が変わった(パラレルワールドへの分岐ではなく)とする考え方
「未来不変」:未来は変わらないとする考え方
「平行世界」:未来が変わると、世界が分岐する(変化前の世界はそのまま残る)とする考え方

【変わる未来】

歴史改変説の最大の課題は「根拠がない」ことです。というのも「歴史が変わる」とやらが、何がなんだか分からないから。

イメージは分かりやすい。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に代表されるように、「歴史が変わってしまい、主人公が消えていく」ような感じです。ですが物語としては分かりやすくても、設定としては不可解すぎます。
素直に考えるなら、タイムトラベルした時点で世界の質量(エネルギー)が変わりますから、いきなり歴史は変わる。これは近い未来から過去へのタイムトラベルを例にすると分かりやすい。

例)
 1月10日から、1月9日にタイムトラベルし、自分自身に出会った。
 そのまま滞在して1月10日を迎え、なし崩しで11日まで滞在した。

たったこれだけで歴史改変世界では説明が破綻します。
この後、気が向いて出発日の10日に戻ると不可解なループに突入するし、戻らないままなら同一人物がふたりいる状態でずっと存在できてしまう。大袈裟に何かをするまでもなく、あっさりと歴史が変わります。

実際これを避けるためか、「歴史改変」を採用している話では「過去の自分と出会う」ような短期間でのタイムトラベルをしない傾向があるように思えます。逆にそれをやるタイムトラベルものでは「未来不変」が多い。(例:ロバート・A・ハインライン「時の門」や「輪廻の蛇」。基本は歴史改変設定の「ドラえもん」も、短期間でのタイムトラベルでは未来不変に沿っている)

「歴史が変わると自分が消える」等も不可解です。
素朴に考えるなら「消滅」のような極端な現象の前に、「考え方や性格や記憶が変わる」などの方が先に起きるはず。一人称が「俺」「私」「僕」と目まぐるしく変化したり、記憶が書き換わって言動に整合性がなくなったり。
そしてその変化によって過去が更に変わります。変化が繰り返されるので、視聴者目線では訳の分からぬストーリーに陥ってしまう。
もしくは「その繰り返しの変化が収束した結果が、今見ているストーリーである」とも言えますが、それはもはや「未来不変」と区別がつきません。「もうこれ以上は何度繰り返しても変化はしない」のだから。

このように「歴史改変」を下敷きにすると、考察不能の破綻した設定に陥ります。「歴史改変」を前提にした時点で、考察は成り立ちません。

ただ「だから悪い」でもない。

私らは論文や設定集を読みたいのではないので、設定に穴があっても物語として魅力的なら構わないです。言い換えると「歴史改変」説の肝は物語性です。
ハグプリでいえば、2020年夏頃にTwitterで話題になった「歴史改変」説も、考察としては致命的な問題(※)がありますが、語り口でカバーされています。

※アイデアの二本柱である「オリジナルの野乃はなは孤独だった」と「プリハートの本来の持ち主」が相互に矛盾している。
おそらく投稿者本人も気づいており、全体を短文で区切って投稿することで、矛盾に気づかずに読めるようにフォローされている。

【改変がもたらすもの】

前置きが長くなりましたが、以上を踏まえた上で「歴史改変」を前提に検討してみる。

「歴史改変を前提にした時点で考察は成り立たない」とは書いたものの、何か取っ掛かりとなる根拠は欲しい。「歴史改変だとすると、おかしなことになる」のだから、「おかしな点」を探すのが良さそうです。
不適切を承知で例に出すと、具体的には「ドラゴンボール」のトランクスの「19号20号」発言のようなもの。ストーリー上明らかにおかしい(しかも劇中でフォローもない)のですが、そのおかげで「あの発言をしたトランクスと、その後のトランクスは別人では」の考察に発展させられます(但し「ドラゴンボール」は歴史改変ではなく、平行世界設定)。

ではハグプリで「おかしな」ところはといえば、ひとつあった。「死んだようにしか見えない敵幹部が、平然と再登場している」です。
特にトラウムは、ルールーとのやり取りを見ても消滅したとしか見えませんし、その割には再会がやたら軽い。当時、リアルタイム視聴できなかった影響もあって、「1話飛ばしたかな?」と素で確認したほど。
なので、これを「歴史改変の証左だ」としてみる。「浄化されたことで未来が変わったため、浄化されたこと自体がなくなり、彼らの死亡イベントがなくなった」とかです。
細かな部分は後々でどうにかするとして、その路線でいくなら、同じく敵組織にいたルールーも同様です。
彼女はあからさまな「消滅」描写はなかった気がしますが、「記憶を消去」→「復活」があるので、それを当てはめればなんとかはなりそう。

仮説『歴史が変わったのでルールーは蘇った』


(「HUGっと!プリキュア」17話より)

本来の歴史では彼女は普通に撃破されており、そのショックもあってハグプリチームは瓦解したとか何とか。
この仮説を使うなら、4つ目のプリハートが2つに分離した背景も色付けできます。改変後の未来にて、ルールーがプリキュアとして戦っていたからでしょう。可能性として2パターンある。

●パターン①『ルールーは4人目のプリキュア』

野乃さんらが使っているプリハートは、未来にてトゥモローさんの他3名が使っています。この3人の内の一人がルールー。
雰囲気的には一番右がルールーっぽいかしら。


(「HUGっと!プリキュア」40話より)

「あのプリハートは、現代ではえみるが所有者。未来ではルールーが所有者。だから2つに分かれた」といった具合。

ただストーリーとしては受け入れやすいですが、幾つか無理がある。

このパターンだと、ハリーが持ち込んだプリハートは当初は3個だったはず。彼の記憶にあるトゥモローチームも3人編成になる。その後歴史が変わり、ルールーがプリキュアになれるようになったので、4個目が現れ、ハリーの記憶も改竄されたことになってしまう。ややこしい。
もしくは元の歴史でも4人編成だったが、ルールーとは違う誰かが4人目だった。ルールーが4人目に改変されたことにより本来の4人目は抹消され、ルールーに置き換わった。元の娘さん、気の毒。

前述したように、歴史改変を前提にすると必然的に発生する齟齬なので、「気にしない」で済ませても良いのですが、引っ掛かりはします。

●パターン②『ルールーは5人目のプリキュア』

最終回2030年に研究室で誕生したルールーが健やかに育ち、2043年にトゥモローチームの5人目として参戦する…という未来に変わったことにより、5個目のプリハートが出現した。

「4個目から分裂した」かのような描写を重視するなら、2043年シリーズにおいて、何か魂をわけあうとかそんな感じのエピソードを経て加入するんでしょう。
今のところ事例はありませんが、「変身不能に陥ったムーンライトが、和解したダークさんとペアで変身するようになった」みたいなイメージ。

これならパターン①の不整合は切り抜けられます。ただこのパターンだと「えみるとルールー」の特別性が薄れてしまう。未来において、ルールーはえみるではない誰かとペアで変身していますので。

ありきたりな解決策でいえば、「未来でのルールーのペア相手は、えみるの娘」とかはどうだろう。
「娘だからといって、親の写し身かのような関連性を持たせて良いのか」の懸念はあるものの、野乃さんとはぐたんの例もあるし、まぁどうにか。

違和感があるなら「えみるの後継者的な人」。たとえば、えみるの歌に感化されたとか、そういう子。

それも微妙ならゴリ押しです。「トゥモローチームには、愛崎えみる(37歳)もいた」としよう。
髪の毛的には右から2番目でしょうか。これなら2043年にえみるをプリキュアとして参加させられるし、みんなハッピーな気がする。

『2043年。元の歴史において、えみるはハグプリチームの唯一の生き残りとしてトゥモローチームに参加した。
そして長年の戦いとかが原因で変身不能に。それもありハグプリチームは敗北、未来は崩壊した。
しかし歴史が改変されたことにより、ルールーが追加加入。えみるも復活し、共にプリキュアになったことで勝利へ。こうして未来は救われた』

2018年にプリハートが分裂したのは、2043年にも同じことが起きた(起きる)から。
諸々の齟齬を見逃せば、何となく物語として成立させられるかもしれない。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「3つ目のパラレルワールド」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2021年01月03日 | ハグプリ最終回考察
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年早々、相も変わらず続けてみる。

【はぐたんへのささやかな贈り物】

パラレルワールド説では「はぐたんが未来からやってきたので分岐した」かのような説明がなされているように見えます。

A:2018年はぐたんが来なかった世界
B:2018年はぐたんが来た世界


(「HUGっと!プリキュア」1話より)

ですがパラレルワールドの観点では不足があるように思う。
例として、短編SF 「時間飛行士へのささやかな贈物」(フィリップ・K・ディック)を挙げてみる。

(あらすじ引用)
アメリカで行なわれた国家的なタイム・トラベル実験で、タイム・トリップ中に爆発事故が起きた。ひとつの空間に同時に複数の物体は存在できないという原則を破ってしまったらしい。時間飛行士たちの運命は…。
(引用終わり)

1週間後の未来に降り立った時間飛行士が見たのは、1週間前への帰還に失敗した自分達の葬式だった。失敗の原因は明白。何かをタイムマシンに持ち込んだせいで、過去に戻ると同時に事故が発生、死亡したらしい。
原因は明白なので避けるのは容易です。わざわざその「何か」を持ち込まなければいい。
ですが現にそれは起きている。では彼らは避けるべきなのか、意図的に事故を起こすべきなのか。

仮にパラレルワールドが生まれるとして、この例では「これから事故を起こす」「事故を防ぐ」に分かれます。分岐の原因は過去ではなく、未来での行動です。
私たちは何となく「過去が変わったので分岐する」(はぐたんがやって来たので分岐する)ように思ってしまいますが、発端は未来。「未来での行動」(はぐたんが過去に向かった)により「未来」が分岐します。
つまり世界はAとBの2つではなく、3つでは。

A:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルした世界

B:
2018年はぐたんが来た世界

C:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルしなかった世界

ではこれで全部だろうか。
「未来に戻る」という行為でも世界の分岐は起きえるので、実際にはこうではなかろうか。

A:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルした世界

B:
2018年はぐたんが来た
2019年ルールーらが未来に戻った世界

C:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルしなかった世界

D:
2018年はぐたんが来た
2019年ルールーらが未来に戻らなかった世界

これを念頭に置くと、厄介な問題が見つかります。

【増殖するルールー】

世界Bのルールーらが未来に帰還する際に、正しく世界Aに戻れるんだろうか。うっかり世界Cに行ってしまうと厄介です。
(スティーヴン・バクスター「タイム・シップ」(ウェルズの「タイムマシン」の続編)では、これがテーマになっています)

解決策としては「世界Aと世界Bはトンネル的なものでつながっている」とかでしょうか。劇中でも「時間がたつと帰れなくなる(つながりが切れる?)」と説明されていますから齟齬はない。
ですがこの時、世界Dの存在が厄介です。

世界Dのルールーらは何らかの理由で一旦は未来への帰還を取りやめています。
ところがその翌日、心変わりして帰還することにしたらどうなるだろうか。

「世界Aとトンネル的なもので繋がっている」のだとしたら、世界Dのルールーらも世界Aにタイムトラベルしてしまいます。そして世界Bの自分たちと顔を合わせる不可解な事態に発展する。

それだけではない。世界Dのルールーらが帰還を決めたなら、再度分岐が発生します。

D:
2018年はぐたんが来た
2019年ルールーらが未来に戻らなかった
その翌日、やっぱり戻ることにした世界

E:
2018年はぐたんが来た
2019年ルールーらが未来に戻らなかった
その翌日も戻らないままの世界

もちろん世界Eのルールーが、その翌日に心変わりして未来への帰還(世界Aへの帰還)を試みる可能性もある。
その場合、世界Aには世界B・D・Eの3人のルールーが出現します。更に世界Fが新たに生まれ、その世界のルールーも世界Aへの帰還を試みる。以下、エンドレス。

また、それ以前の問題として、世界の分岐を誘発するのはタイムトラベルだけなんでしょうか。
未来は変わるのであれば、ありとあらゆる行動や現象により、世界は凄まじい勢いで分岐していきます。
(より正確にいうなら過去・現在・未来は同時に存在し、無数の夥しいパラレルワールドが同時に存在する)
それならば世界Aに帰還するルールーの数はとんでもないことになります。世界中がルールーによって埋め尽くされる…。再会したえみるの心境やいかに。

ただ、ルールーらはこんな現象を予期しているとは思えません。それならば「起きない」のでしょう。
これはある意味フェルミのパラドックスに近い。無数に世界があるのなら、どうして異世界の自分と出会わないのか。

現実世界であれば説明は簡単です。「平行世界とは、いかなる情報のやり取りもできない世界のこと」だから。よって「異世界に行く」ことが定義からいってできない。
では実際に行き来しているハグプリ世界ではどうなんでしょうか。

打開策としては「世界Aは最初のルールーらが帰還した時点で分岐する」とかかしら。

A1:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルした
2044年ルールーらが帰還した世界

A2:
2018年はぐたんが来なかった
2043年はぐたんがタイムトラベルした
2044年ルールーらが帰還しなかった世界

世界Dのルールーが戻るのは世界A2であれば、ルールーが増殖するような混乱は起きません。が、世界Dはどうして世界A2とつながってるんだろうか。
世界Bのルールーが世界Aに戻った時点で、「世界B-Aのコピーとして、世界D-A2が生まれた」のだろうか。
分からなくはないのですが、仮にそうだとすると、世界Bのルールーはどうあっても根本的には未来を救えません。自分が未来に戻ったことにより、「戻らなかった世界」が生み出されてしまうので。
まぁそれでも、やる意味があるといえばある。少なくとも「自分たちが戻った世界」が一つは生まれるのですから、それはそれでよいとも。(蛇足ながら「ドラゴンボール」のトランクスはこの価値観に基づいてタイムトラベルしている)

【孤独なえみる】

ただそれでも問題は残ります。えみるです。
この理屈に則ると、仮に「未来で問題を解決したルールーが戻ってきた」あるいは「何らかの方法で未来に行く手段をえみるが手に入れた」としても、その行き来により新たに世界が分岐してしまい「再会できた世界」と「再会できなかった世界」が生まれてしまいます。どう足掻いても孤独なえみるとルールーが残ってしまう。

それならまだ良いかもしれない。先ほど「世界BとAはトンネルのようなものでつながっている」としましたが、このつながりが切れてしまった後に、タイムトラベルを試みるとどうなるのだろう。

えみるが未来に向かう方法はある。高速で動けばいい。でもその方法で未来に行けるのは世界Bの未来なので、世界Aに戻ったルールーはいません。
ルールーが過去を目指したとしよう。そこにいるのは世界X「2018年はぐたんが来なかった世界」のえみるです。世界Bとのつながりは切れているので、行けるのは世界Aの過去(そして分岐する)。ルールーの知るえみるではありません。
仮に彼女たちがこれに気づかずに、決死の覚悟でタイムトラベルを試みてしまったら、起きた結果に愕然とするに違いない。辛い…。

こうなってくると、ルールーらのやっているのはタイムトラベルではなく、ただの異世界航行です。パルミエやトランプ王国と同種の「異世界」と認識した方がいい。
実際、劇中で野乃さんらは「タイムトラベル」という単語は使っていなかった(少なくとも頻繁には)ように思うので、あれは「ミライ」という名の異世界だと考えた方がいいのかもしれない。
そしてそれならば、なんでわざわざ「未来」と呼んだのかが疑問です。視聴者の私たちには「その方がイメージしやすい」利点はありますが、劇中人物にとっては無駄な混乱を招くだけ。ジョージの不可解な行動(彼は分岐世界と認識しているようには見えない)に象徴されるように、根幹に関わる部分に齟齬をもたらします。

結局のところ、次から次に問題が出てくるのは、パラレルワールドを前提にしているからに思えます。
シンプルに「単一世界」を前提にした方が、すっきりするんじゃなかろうか。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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「はぐたんVSリフレイン」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2020年12月27日 | ハグプリ最終回考察
たぶん今年最後の更新です。
今年最後なので、投げっぱなしで来年に託してみる。

【ハグプリVSリフレイン】

リフレイン「時間切れです。永遠に同じ毎日を繰り返すのです」


(「ヒーリングっど♥プリキュア」31話OPより)

絶体絶命のその時。しかしながら我らの野乃さんは毅然と対抗なされた。

野乃さん「はぐたん!お願い!」
はぐたん「は~ぎゅ~!」

ばひゅん。煌めく光と共に、はぐたんのタイムトラベル発動。呆然と立ち尽くすリフレイン。そして発動するミラクルリープ。

さて時間が巻き戻ったその世界に、野乃さんたちは居るんだろうか。
話をややこしくするために、野乃さんにはミラクルンやライト一式は置いていっていただき、行き先は未来としよう。
さあ100回目の土曜の朝に、野乃さんは居るのか。

ミラクルリープもタイムトラベルも未知過ぎるんだから、そんなもの分かるわけがない。ただいずれにせよ、様々な厄介な問題を引き起こします。

まず仮に「居た」としよう。
だけどその野乃さんが何者なのか分からない。未来に逃げた(あるいは逃げようとした)ところを、不思議な時間の力で引き戻したのかもしれない。
ですが別の可能性もある。ミラクルリープはおそらく若返りますから、実は「10年後の未来にタイムトラベルし、それから30年ほど生活し、気まぐれで土曜にタイムトラベルして戻ってきたところをミラクルリープに捕らえられた」だけかもしれない。恐怖。

逆に「居なかった」としよう。リフレインは背すじを凍らせるのでは。
つまり奴らは過去に戻って来なかった。今後永遠に。いや「永遠に」とは言ったものの、実際には1𥝱回だか1載回だかの遠い遠い繰り返しの果てにはループは途切れるのだろう。なぜなら奴らが「未来に」旅立ったからだ。そして恐らくは、未来で時計は破壊されるのだろう…。

何もかもが信じられぬ不気味な事態が巻き起こります。もうこんなの考えたくないので、リフレインには時間の精霊の意地を見せ、何がなんでもはぐたんの狼藉を防いでいただきたい。

【スタプリVSリフレイン】

しかしながら絶望はそれだけではありません。

リフレイン「時間切れです。永遠に同じ毎日を繰り返すのです」

星奈さん「ララ!お願い!」
ララ「みんな、ロケットに乗るルン!」

そしてミラクルンとライトを連れて、『光速を越えて』地球を離脱するプリキュアども。崩れ落ちるリフレイン。星奈さんたちが5光年先の星についたところでミラクルリープ発動。

さて時間が巻き戻ったその世界に、星奈さんたちは居るんだろうか?
はたまた、これを10光年先から観測した場合、何が起きて見えるんだろうか。

5光年先に「ミラクルリープが行われた」情報が届くのは5年後です。望遠鏡で地球を眺めていた星奈さんが、5年後に「あ、リフレインだ。キラやば」と気づく。
この時彼女が観測するのは、素直に考えるなら彼女が体験した最後のループのはず。リフレインが時間を宣告し、星奈さんらがロケットに乗る。そしてそれらを観測したところでミラクルリープの波が到達、ふわりと体が浮き上がり、あの土曜の朝に舞い戻る…で良いのだろうか。全く分からん。

【ヒープリVSリフレイン】

野乃、星奈と来たら花寺さんにも頑張っていただきたい。
彼女たちには直接的に時間をどうこうする要素はありません。ですが、おぞましき必殺能力があります。そう、プリキュアの複製です。
そこで一連の戦いが終わったあとに、キュアグレースの複製を作ってみよう。そしてそれを、はぐたんらの力を借りて過去に送り込んでみよう。日曜の朝から、繰り返すあの土曜の朝に、戯れに複製グレースを送り続けるのです。

この時、グレースを大量につくる必要はない。一体作り、過去に送り込む。これをやった時点で、ループが切れたときに現れるグレースは2人になるはずです。オリジナルと複製グレース。
そこで複製を再びループの時間に投げ返す。これで複製グレースは、ミラクルリープから脱出できたあとも、しつこくリープの中に戻っていきます。

さあリフレインが土曜の朝に見るのは何なのか。うじゃらうじゃらとキュアグレースが増殖していくんだろうか。もしそうなら、リープから抜けた先に現れる複製グレースも凄まじい勢いで増えていきますし、それらを全てリープに投げ返すんですから、もはやリフレインには絶望しかない。視界を埋め尽くす複製グレースの群れを前に、事情が分からぬオリジナル花寺さんの心境やいかに。

【プリキュアVSリフレイン】

問題を悪化させよう。

リフレイン「時間切れです。永遠に同じ毎日を繰り返すのです」

聞くやいなやララのロケットに飛び乗り、光速を越えて5光年先に退避。
それと同時に、はぐたんを起動。5年前にタイムトラベル。
複製グレースを生成。ライトを持たせたオリジナル花寺さんをそこに待機させつつ、一行は5年かけて地球に帰還。「この子を見つけたら過去に戻してください」と書いたメモを複製グレースに貼り付けて放置。
先ほどとは逆方向に光速を越えて移動。着いた先で未来にタイムトラベルしてみよう。

さあ「永遠に繰り返す、あの土曜の朝」に、リフレインが目撃するものは何だろうか。時間を冒涜するプリキュアどもの所業に、時間の精霊・リフレインはどう対抗するのか…!

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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