この女性は、アメリカのハーバード大の教授を長く勤めた後、マサチューセッツ州の上院議員になった人。
特に何も予備知識がなくて読み始めたが、内容が面白く最後まで一気に読んでしまった。
私の好きな自伝もの。
貧しい家庭に生まれながら、才気と行動力で上院議員になっていくさまは、映画を見ているようで面白い。
きっと講義も面白いだろうと思った。文章が簡潔で非常にわかりやすい。さすがロースクールで破産法を教える専門家。理路整然としている。
前半は彼女の信条-アメリカの中間層が没落していっているのは、多くのミドルクラスの家庭が破産しているから。それを救うのが使命だという強い信念が一貫して非常に強力に感じられる。
後半は、マサチューセッツ州選挙で対抗馬のスコットブラウンをいかに追い上げて、最後は勝ち取るか、というストーリーでこちらも読みごたえがある。
岩盤のような従来の固い考えをも覆す彼女の信念はすごい。
要所要所でここぞという時をはずさないことがポイントのような気がする。
誰も振り向かないような地味なデータを丹念に積み上げて、今までにはない切り口で説明する。読んでいてスカッとする。
所謂、消費者金融を鋭く批判する姿は、多くの共感者をつくったと同時に激しいバッシングにも合う。
そんなウォール街を全部向こうに回して闘う姿は本当にたくましい。
それを支えるのが家族。自分の育った家族、自分が造った家族。
随所で家族の様子の話がはさまれていて、読み物としても大変面白い。
全国ディベート大会で優勝して奨学金を獲得して入った大学を2年生の時に結婚する際にすっぱり辞めてしまう。
へぇー、なんで?
子供を産んでから、今度は自分から進んで大学に入り直し、子供を育てながら卒業、そして教える仕事を始める。
その後第二子も生まれ、本当に大変な時期。自分の遠縁にあたる叔母を呼んできて、子供や家事の世話を頼むことになる。
この辺りは、何で?と、思うが、後になってそれがだんだんとわかってくる。
彼女は母方がインディアン族の出身なので、身内意識が大変高いのだ。
そこからがすごい。
離婚してシングルマザーになるも、仕事をばりばりとこなし、大学で教えるようになる。そして、最後にはハーバード・ロー・スクールの教授になってしまう。再婚相手もハーバード大で教えることになるのだから、何というかやっぱりすごい。
このような闘う意志はどこから出てくるのだろう。
邦訳がないけど、英語でも結構読める。単語だけが、少し難度の高いものが出てくる頻度が高いかもしれない。
キンドルに辞書を入れておけば、それも簡単にわかるけど…ね。
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