大阪市では2月に児童福祉施設の男性職員が、子どもたちに腕の入れ墨を刺青見せて威嚇していたことが発覚して、橋下市長は「刺青をしたまま公務員にとどまるのはおかしい」と問題視し、職員に対して刺青の有無を調査するように指示しました。施設の男性職員が刺青で威嚇した事実はないという記事も見ましたが、真偽のほどは分からないものの、いずれにせよ刺青をしていたことは事実です。この調査についても人権侵害だという声もあるようですが、言い出したら引っ込めない橋下氏のことですから調査は指示通り行われ、「している」と回答した職員が110人あったそうです。市は今後消すように促したり、市民に接することのない部署に配置転換することを検討するとのことです。なお教育委員会は教員などにアンケートすることには難色を示したのですが、市長は「もし刺青している教師がいたらどうするのか」と後に引かず、結局教師には学校長が聴き取りをすることになったようです。橋下氏にとっては市職員も教師も基本的には信頼できない存在なので、これまでも職員や教師を「敵」として的を絞り攻撃した橋下氏を大阪市民は支持していますから、このことについても坂下氏を多あ数が支持するでしょう。
刺青は一つの文化でもあり、近頃はファッションでもあるのですが、日本人には否定的に受け取られています。日本の伝統的な刺青(入れ墨)は欧米人には評価が高く、そのコレクターもあるそうですから、欧米人とは感覚が違うようです。欧米では国王や有名な政治家でも刺青をしている人があるようで、スポーツ選手や芸能人になると、日本人にしたら眼をそむけたくなるようなたくさんの刺青をしています。この写真の女性はなかなかの美人ですが、やはり美しい肌一面の彫り物には違和感を覚えますし、図柄も美しいとは思えなせん、
前に評判になったアメリカのシリーズ物の警察小説(エド・マクベイン『87分署』)を読んだことがありますが、その中の主要登場人物の一人の警官の妻が、夫の誕生日のプレゼントにと、自分の肩に小さな星の刺青をして夫にそれを見せると、夫は非常に喜んで、妻を深く愛しく思うという場面がありました。当時はずいぶん日本人とは感覚が違うものだと思ったものでした。
しかし日本では「身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるはこれ、孝の始めなり」という中国古来からの教えのためもあったからでしょうし、江戸時代には刺青をしているのは鳶職や火消し人足、ばくち打ちなど荒っぽい生業をしている者に多く、それも全身に施す刺青もあります。施す時は大変な痛みを伴うようで、そこをこらえるのが男らしいとか何とか言って、堅気の町人には縁のないことだったようです。また罪人には腕に地域によって決まった形の墨を入れることがありこれが「入れ墨」ですから、やはり刺青は一般には忌避されたようです。
二の腕に刺青をして、何とかすると袖をまくってそれをちらつかせて脅すというのはよくある話ですが、日本では刺青はヤクザ者のすることだという受け止め方が普通のようです。やはり公務員に限らず普通の企業の社員でも、今の段階では堂々と人の目につく所に刺青をするのは少ないでしょう。もっとも今頃は刺青のような模様を張り付けるものもあって、これは私も見たことがあります。その時はファッションの一種かと格別に嫌悪を感じることはなかったのですが、こういう女性とは一緒したくないなと思ったのは偏見かも知れません。
日本では公衆の目に触れる所で刺青を見せることを禁じている所があり、この近辺では神戸の須磨の海水浴場がそうです。人に嫌悪感や恐怖心を与えるという理由からでしょうが、そこまでするのかなとも思います。刺青をした外国人も拒否するのでしょうか。
茶髪、金髪も初めの内は嫌悪を伴って見られていましたが、今は当たり前のようになっています。タレント時代の橋下氏は茶髪・黒眼鏡というスタイルでテレビに出ていたそうですが、最近もあるネットの書き込みで「茶髪が何が悪い」という擁護の声がありました。黒眼鏡のことですが、これもサングラス程度ならともかく、真っ黒な物には違和感を覚える人は少なくないようです。碧眼で日光に弱い白人と違って日本人は、普通は白昼に真っ黒な眼鏡をかけると、その筋の人かと思われることもあるようです。まして室内でそのような眼鏡をするのはファッションと言うよりも自己顕示のスタイルでしょう。人気タレントにいつでも黒眼鏡をかけている人がいますが、どうしても好きになれません。橋下氏は大阪府知事になると、茶髪も黒眼鏡も止めましたが、今は公務員が茶髪・黒眼鏡で勤務することも認めないでしょう。茶髪や眼鏡は染めたり使わなかったりすればすみますが、刺青はそうはいきません。この問題は、これから後も尾を引くような気がします。
金髪や茶髪がそうであったように、刺青も、ファッション的な「タトゥー」も次第に日本人には違和感のないものとして受け入れられるようになる時が来るかも知れません。その時には公務員でも何でも、金髪や黒眼鏡、鼻ピアスなどで勤務するようなことが当たり前になるのでしょうか。日本人はこういうことにかけてはかなり強固に保守的ですから、あってもそれはかなり先のことでしょう。
(朝の散歩から)
ユリのある家。いろいろな色のユリが咲いていました。犬を抱いて出てきたその家の奥さんらしい人に「きれいですね」と声をかけましたら、「こんなに背が高くなるとは思いませんでした」と答えました。
他人に〝不愉快な思いを与えないという常識的な対応〟を求めることでいいのではないでしょうか。