蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

火の山

2005年08月14日 | 本の感想
栗本薫さんが書いたグインサーガ102巻「火の山」(早川文庫)を読み終わりました。

私は「豹頭の仮面」がSFマガジンに連載されていたころから延々30年近くグインサーがを読んできました。最近はヒロイックファンタジーの香り高さとかおどろおどろしいムードが薄れてきているような気がして残念なのですが、それでもストーリー展開の巧みさと叙述のさえは抜群で、ほとんどの巻が読みはじめると止まらない面白さがあり、読み終わったとき「もう終わりか」と感じさせてくれます。

ヒロイックファンタジーは「剣と魔法の物語」といわれますが、グインサーガの場合、「剣」(=戦闘シーン)とか「魔法」(=魔道師や異世界の怪物が活躍するシーン)には、正直あまり魅力がありません。
グインの強さ・賢さがあまりにもスゴすぎることと、魔道師の中で最も登場場面が多いグラチウスがグインの敵ではなくて家来みたいになってしまっていることがその原因だと思います。
では、どこが面白いかというと、キャラクターが確立された登場人物の会話部分にあるような気がします。戦闘シーンとか魔道が炸裂するト書きの部分は生彩にかける(もちろん、他の作家と比較すれば高いレベルにはありますが・・・)のに対して、会話が長く続くセリフ部分の面白さが秀逸なのです。「火の山」でも、私はクライマックスの山火事からの脱出場面より、イシュトヴァーンと(亡霊と化した)アリの会話部分の方が楽しく読めました。

しかし、なんといってもグインサーガの最大の魅力は、2カ月に一冊の刊行ペースがほぼ守られ、しかもいつまでたっても終わらないことではないでしょうか。シリーズものに対する不満はたいてい、「次がなかなかでないこと」だからです。
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