蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

夜明けのパトロール

2012年02月11日 | 本の感想
夜明けのパトロール(ドン・ウインズロウ 角川文庫)

サンディエゴ近くの海岸に暮らす主人公は、サーフィンに人生のほとんどを捧げながらも、時々私立探偵をしている。放火事件の重要証人であるストリッパーが失踪し、事件の担当弁護士から証人さがしを依頼される・・・という話。

ミステリとしても十分面白いのだけれど、サーフィンとそれを生活の中心にしている人達の魅力を語ることが本書のテーマになっている。

夜明けから海にのりだし、うまい朝食をいきつけの店で食べ、昼間はちょっと仕事して、夜は仲間とビールを飲む・・・そんな夢のような生活を送りながらも、いろいろな制約を課されることを嫌ってプロにはならず、それゆえ経済的には余裕がなく、かつてサーフィンの聖人のようにあがめられていた人も最後は無一文で惨めに死んでいったことを知っていて、将来に漠然とした不安を抱いている・・・というのが、本書で描かれる典型的なサーファーの姿だろうか。

軟弱そうな主人公が、いったん事件に巻き込まれると、カチカチのハードボイルドに変身して美しい女の子と難事件にいどみ、絶体絶命かと思われた危機を乗り越えて大団円を迎える、というパターンは毎度おなじみのウインズロウ節なんだけれど、面白いんだよね。

本書は新シリーズの第一弾とのことで、次の翻訳が早くも待ち遠しい。
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ヒアアフター

2012年02月11日 | 映画の感想
ヒアアフター

津波にのまれて臨死体験をしたフランス人の女性キャスター、
双子の兄を亡くし麻薬中毒の母とも離別させられたイギリス人の少年、
死者と対話できる特別な能力を持っているが、それを行使することによって人間関係が壊れることを繰り返した苦い経験から、その能力を発揮することを避けているアメリカの青年。この3人がロンドンのブックフェアで偶然接触し・・・という話。

ストーリーとしては平板で、オカルトといっても観客を怖がらせるような仕掛けもなく、淡々と映画は進むのだけれど、なぜか飽きないというか、目が離せないと感じさせてしまう静かな緊迫感みたいなものがあった。

あやしげとも言える題材をとりあげた地味な脚本でも、それなりに出来の良い映画に仕上げてしまう監督(イーストウッド)の力には感心するしかない。

マット・デイモン(霊媒師役)は、演技していると思えないほど役にぴったりハマっていた。
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