蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

硝子のハンマー

2012年02月05日 | 本の感想
硝子のハンマー(貴志祐介 角川文庫)

ビルの高層階で上場間近の会社の社長が社長室で殺される。
社長室前の廊下の監視ビデオには誰も写っておらず、窓ははめ殺し。唯一出入りができた隣室にいた専務が逮捕される。
専務の弁護士は密室殺人のトリックを解明して裁判を有利に運ぼうと、防犯コンサルタントの男を雇うが・・・という話。

凝ったトリックには感心したし、弁護士、防犯コンサルタント、犯人ともキャラが立っていて、前半は弁護士らによるトリックの考察、後半は犯人による倒述形式の種明かしという構成も斬新(私が知らないだけで他にもあるんだろうとは思うが、今までこのような構成を読んだ事がなかったので新鮮に感じられた)。

若干弱いのは犯人の動機かなあ・・・殺人まで至るほどの動機とはどうしても思えない。ただ、これは相対的なもので、他がすべてレベルが高いのでそう見えてしまうが、他のミステリと比べれば、十分な説明がされている。

貴志さんは寡作とまでは言えないが、人気の割には著作数が少ないように思う。しかし、「黒い家」「青い炎」「新世界から」(←これは未読だが)など、そのいずれもが異なるジャンルでありながら、どれも高いレベルを保っているのはとても立派だと思う。名前の通り、こころざしが高いというところだろうか。
コメント
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