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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

おとり捜査官-1 触覚 

2009年05月04日 | 本の感想
おとり捜査官-1 触覚 (山田正紀 朝日文庫)

1996年に出版された本の再文庫化。

著者の本はそれなりに読んでいるが、ミステリに関しては最近ほとんど読んだ事がなく、昔読んだ時も印象はイマイチだった(ただし、「謀殺のチェスゲーム」(ミステリといえるか微妙だが)は抜群に面白かった)。
「宝石泥棒」をはじめとするSF作品は、掛け値なしに一級品ばかりなので、どうしてもそれと比べてしまうせいかもしれない。

それなのに、本書を手にとったのは、朝日新聞の書評でベタ褒めにされていたから。身内のデキレースかと思いつつも読んでみた。

山手線駅構内で連続殺人事件が起きる。痴漢常習犯がエスカレートした犯行かと思われるが、捜査に行き詰った警察は、美貌のおとり捜査官を発生が予測させる電車にのせるという手段をとる。

私が書いた筋を読むとそれだけで読む気がうせるかもしれない。しかし、後半にいたって二転三転する犯人像、意外な結末(だが、後から考えるとちゃんと伏線がある)で、ミステリとして大変すぐれた作品となっている。

もともとは、官能系というか、エッチな要素を入れるよう注文があったらしく(原題は「女囮捜査官 触姦」)、そういう場面があるし、文章もなんとなくソレ向きな感じになっているのが惜しまれるほどの出来である。
解説によると、5巻まであるシリーズは巻が進むほどに興趣を増し、大団円に到って初めてシリーズ全体のテーマが明らかになるらしい。とても楽しみだ。

約12年の時を経てこういう本が文庫で出版される(しかも再文庫化)というのは、日本の出版文化の奥深さを感じる。(少々オーバーでした)


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