笑い三年、泣き三月。(木内昇 文春文庫)
戦後間もない頃、万歳師の善造は一流芸人になることを夢見て上京する。上野で戦災孤児の武雄と知り合い、ストリップ劇場のはしりのミリオン座にもぐりこんで話芸をすることになる。善造と武雄は踊り子の自称令嬢のふう子の家で暮らすことになるが・・・という話。
本書は、笑いを追求する芸人の姿を通じて、演芸の本質を描くことを主題としていると思う。
一方で、厳しい父親から抑圧的に育てられた上、空襲で家族が亡くなったのは自分の責任と思い込んでいる武雄が、名前の通りに根っからの善人である善造を仮の父とし、とにかくやさしく穏やかなふう子を仮の母として暮らすうち、人間らしい感情の起伏を取り戻していくプロセスを描いた家族小説でもあり、私は後者の側面の方により強く惹かれた。
戦後の食糧難を実感させてくれる箇所も多かった。
珍しく白米が手に入ると、皆、目の色が変わるとか、卵かけごはんを一口食べた武雄がそのうまさに気絶しそうになるとか、食糧や栄養不足の切実感、その裏返しとしてごちそう?が手に入った時の喜び・・・食糧も娯楽もあふれんばかりの現代にあっては、決して感じることができない底抜けの歓喜・・・がリアルに伝わってきた。
戦後間もない頃、万歳師の善造は一流芸人になることを夢見て上京する。上野で戦災孤児の武雄と知り合い、ストリップ劇場のはしりのミリオン座にもぐりこんで話芸をすることになる。善造と武雄は踊り子の自称令嬢のふう子の家で暮らすことになるが・・・という話。
本書は、笑いを追求する芸人の姿を通じて、演芸の本質を描くことを主題としていると思う。
一方で、厳しい父親から抑圧的に育てられた上、空襲で家族が亡くなったのは自分の責任と思い込んでいる武雄が、名前の通りに根っからの善人である善造を仮の父とし、とにかくやさしく穏やかなふう子を仮の母として暮らすうち、人間らしい感情の起伏を取り戻していくプロセスを描いた家族小説でもあり、私は後者の側面の方により強く惹かれた。
戦後の食糧難を実感させてくれる箇所も多かった。
珍しく白米が手に入ると、皆、目の色が変わるとか、卵かけごはんを一口食べた武雄がそのうまさに気絶しそうになるとか、食糧や栄養不足の切実感、その裏返しとしてごちそう?が手に入った時の喜び・・・食糧も娯楽もあふれんばかりの現代にあっては、決して感じることができない底抜けの歓喜・・・がリアルに伝わってきた。