蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

スポーツ国家アメリカ

2018年12月02日 | 本の感想
スポーツ国家アメリカ(鈴木透 中公新書)

野球、アメフト、バスケットボールといったアメリカで人気があるスポーツの成立と発展過程からアメリカの産業や社会とスポーツの関わりを解説した本。

アメリカで人気がある競技は、アメリカ以外ではあまり盛んではない。逆に世界中で普及しているスポーツがアメリカでの人気がイマイチであることの原因を、移民を中心とした多民族国家であること(特定の民族に人気があるような既存スポーツは受け入れ難い)は、興味深かった。(根拠は薄弱で著者の見解にすぎないようだが)

また、現在のアメリカでプロレスがとても人気があることも本書で知った。その中心はマクマーン家が支配するWWEで、そこではショーマンシップが重視され、デスマッチ形式や選手グループ間の確執をあおるような演出(マクマーン家内の家族間にも対立があるという設定になっているらしい)がされているという。現大統領もプロレス好きでその行動原理もどことなくプロレス風?でもある。

本書で最も読み応えがあるのは、著者自身の経験を記したあとがきである。本編は論文のようにカタい感じで味気ないのだが、あとがきはイキイキとして楽しい。(新書乱立の中でも岩波と並んで硬派路線を維持する)中公新書ということを意識したのかもしれないが、本編部分もあとがきのような調子で書いてもらえればよかったのになあ、と思った。
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明るい夜に出かけて

2018年12月02日 | 本の感想
明るい夜に出かけて(佐藤多佳子 新潮社)

主人公の富山は、対人接触恐怖症(女の子に触られるのがイヤ)?がつのって大学を休学してコンビニで夜中のバイトをして暮らしている。アルコ&ピースという芸人が出演するオールナイトニッポンを聞くのが生きがい。バイト先の先輩鹿沢、コンビニの客でアルコ&ピースの番組への投稿常連の女子高生:佐古田との関わりの中で次第に普通の人間関係の構築に慣れていく・・・という話。

私も大学時代に3年間くらいコンビニで深夜バイトをしていた。当時は深夜は一人だけの勤務で平日は1時過ぎるとほとんどお客さんは現れず、人嫌いには向いているバイトだったと思う。
主人公は、一緒に勤務する副店長や別のバイトが気になって仕方がないようで、人嫌いの特徴がよくとらえられているなあ、と思った。

オールナイトニッポンは、私の学生時代には、今と違って学生にとっての娯楽の中心にあったが、私が欠かさず聞いていたのは中島みゆきさんだけだった。といっても大抵途中で寝てしまうので録音しておくのだが、当時はラジカセにテープで録音の時代。実用的なテープの録音時間は90分(120分テープもあったがよくテープがからんでダメになってしまう)なので、一番の聴きどころだった。最後の中島さんのマジ語り?が録音されていなくてガックリ、なんてことよくがあった。

本書によると、今は深夜ラジオを聞きつつ、ツイッターでリスナー同士で盛り上がる、というのがよくある光景らしい。録音は音声ファイルをメモリに書き込むのだそうだ。
でも、こうした周辺の風景は変わっても、うまく世に馴染めない若者が深夜にバイトをしたりラジオを聴いたりする、というあたりにあまり変化はないのだなあ。。。

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