蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

うらおもて人生録

2022年09月19日 | 本の感想
うらおもて人生録(色川武大 新潮文庫)

劣等生?向けの人生指南書。
本書は、著者の幼少期から戦後のばくち打ち、編集者を経て作家になるくらいまでの経験をもとに、若者にアドバイスする、という形を取っている。その経歴やちょっとしたエピソード(例えば、ばくち打ち時代に唐辛子中毒になった、とか)を見ると、「麻雀放浪記」のかなりの部分が実話なのでは?と思えてくる。

以下は、本書に書かれた主なアドバイス

勝ちすぎは良くない、すぐ反動が来てしまう。9勝6敗をめざすべき

好調時もそうでない時も自分のフォーム、セオリーを崩さないことが重要。不調時はフォームやセオリーを保てているかを買う人すべき

先行して、すこしづつリードを広げる戦いをめざす、リードが広がったら余計なことはしない

一病息災というように、弱点を自覚し他人に迷惑をかけないようならその弱点を育てていくのがよい
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野鼠戦線

2022年09月07日 | 本の感想
野鼠戦線(景山民夫 徳間文庫)

昭和19年、中国桂林付近で打通作戦に参加していた陸軍の第13軍の輜重兵だった左文字少尉は、米軍航空基地の攻撃を命じられる。その命令をした直属の上官が戦死したのをよいことに?軍本体は転進したのに、現地に5人だけの小隊でとどまる。米軍基地からかっぱらった備品などを農民に売って食料調達し、自給自足の持久体制?を構築してアメリカ軍を悩ましていた・・・という話。

文庫は1999年初版。押入れの奥にあったのを見つけて昔読んで面白かったのを思い出し、再読した。

再読すると、記憶にあるほどは面白くないことが多いのだが、本書は今でもエンタテインメントとして十分通用しそうなほど面白かった。

もちろん、現実はこんなに上手くいかないのだろうが、負け戦の中にあっても眼前の敵を翻弄し、平和的かつ経済合理的?に十分な食糧を現地調達して奮戦?する左文字小隊はまるで戦争をエンジョイ(もちろん作り話の中での話)しているかのようで、爽快感があった。
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サバカン

2022年09月07日 | 映画の感想
サバカン

作家の久田(草彅剛)は、家庭生活は離婚により破綻し、作家業も順調とはいえない。サバの缶詰を見つめているうち、1986年15歳の頃のことを思いだす。長崎県長与(金沢監督の故郷とのこと。海が見える長与駅ホームの風景が素敵)で、同級生の竹本とイルカがいるというブーメラン島を目指す小さな冒険に挑むが・・・という話。

正直に言うと、主役の2人の子役の人の演技はあんまり魅力的には見えなかった。

一方、久田の父母役の竹原ピストル、尾野真千子のやり取りがとてもよかった。
謎の果樹園主?役の岩松了もいい雰囲気だった。

夏休み物語につきものの、きれいなお姉さん(由香)役は茅島みずき、その彼氏(金村)役は八村倫太郎なのだが、金村が乗って現れるのが軽トラというのも、いい味だしてた。
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さかなのこ

2022年09月05日 | 映画の感想
さかなのこ

ミー坊(のん)は、幼児のときから魚の絵を描くのがうまかった。と、いうか魚類一般に異常な興味を示して細かな点まで絵に写し取るのがうまかった。そんな個性を母ミチコ(井川遥)を最大限に尊重しようとしたが、常識人?の夫とはソリが合わなかった。やがて底辺校?の高校に入学したミー坊はなぜか男性用の学ラン(すごく似合っている)を着て、地場を仕切る不良高校生?たちとの交流を深めるが・・・という、「さかな君」をモデルにした話。

珍しく映画館に行ったのは監督が沖田さんだったから。「子供はわかってあげない」を観に行かなかったことを(DVDを観てから)公開したため。

(沖田監督の作品は良いと)そう思い込んでしまっているせいなのだろうけど、本作もしみじみと良かった。
型にはまらないミー坊の育児方針をめぐって別居しているミー坊の父母、ミー坊が学ランを着ている理由、進路どうするの?と三者面談で尋ねる担任教師に超然とした応えを返す母、ミー坊に振り回されるけど友情をトワに忘れない不良高校生たち、そんなシーンのどれもが愛おしく思えてしまう。

でも、幼なじみのモモコ(夏帆)が突然子連れでミー坊の(魚を飼育するための水槽で狭っ苦しい)アパートに押しかけて来て3人で川の字で眠るシーンが一番良かった。なぜ良いのか理由は不明だけど。


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自由研究には向かない殺人

2022年09月04日 | 本の感想
自由研究には向かない殺人(ホリー・ジャクソン)

ピッパは高三生。ピッパの住む町リトル・キルトンで5年前に起きた同じ高校の女子学生:アンディの失踪事件は、犯人と目された同級生の男子高校生:サルが自殺したことで未解決となっていた。サルが犯人とは思えないピッパは事件を自由研究の対象にして関係者へのインタビュウを始める・・・という話。

自家用車を乗り回し、飲酒やドラッグが当然のパーティ(カラミティ・パーティ)への参加を親が公認?しているアメリカの高校生は、しかし一方で学校の課題や大学進学の準備(統一試験?もあるけど、どちらかというとエッセイや面接の準備の方が重要みたい)などの予定で手帳がビッシリみたいな面もあるようだ。そして(これは日本も同じだろうが)SNSなどのデジタルツールが欠かせないものになっていて、事件解決のカギは「いかに関係者のサイトのパスワードを知るか?」だったりする。

保有者の日常のほぼすべてが記録されているともいえるデジタル機器は、現実の犯罪捜査においても決定的な証拠になりそうで、捜査機関がグーグルなどに開示請求したくなるもも無理はない。というか犯人候補のサイトのセキュリティを突破できるならミステリが成立しなくなっちゃう。

前中盤の、犯人候補をあげては消していく部分がやや冗長な感じだが、ピッパの飼い犬が(調査をやめろという犯人の脅迫により)姿を消すあたりからテンポがよくなって、犯人の意外性は十分だし、謎解きのプロセスの二重構造も面白かった。

ただ、(探偵役の宿命?かもしれないが)ピップのキャラは出来すぎだよなあ。成績優秀で品行方正、家族や友人への思いやりも十分あり、脅迫にも屈しない鋼のメンタルを持つ・・・弱味のなさが欠点かも。
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