医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

新型コロナウイルス検出試薬キット

2020年04月19日 | 感染症
先週13日、ヤマト科学株式会社から新型コロナウイルスのIgM抗体、IgG抗体を1滴の血液から検出するキット(写真左上)が発売されました。(20人分5万円)

ヤマト科学株式会社

しかし、国立感染症研究所がこの表を公表しているように、IgMとIgGの両方検査しても、発症から9日経過した段階で、この検査の感度は52.4%です。半数の人は新型コロナウイルスに感染していても、感染していないと判定されてしまいます。これがさらに厄介な問題を引き起こします。感染していないと判定された人が、非感染として人と接触し、さらに感染を広げてしまうのです。この表は感染者87検体の結果で、非感染者のデータがないので陽性的中率が計算できませんが、仮に陽性的中率も症状発症から9日目で約50%とするとまったく使い物にならないことになります。

現在のような感染急性期にはあまり有用ではないようです。
1年後に過去の感染があったかどうかIgG抗体をチェックするには有用です。

国立感染症研究所

さて、20日島津製作所からIgM抗体、IgG抗体を検出するのではなくRNAを直接検出するキット(写真右上)が発売されます。(100人分22万5千円)

島津製作所
でも、別にサーマルサイクラー(数百万円)が必要です。

(追記)
このキットの25検体での陽性一致率、陰性一致率は100%だそうです。

https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV-17-20200318.pdf

しかし私たちは、例えば私の研究分野で25例での論文を提出すると査読者から「症例数が少ないのでなんともいえない」とコメントをもらいますが、今後現場で使用されるのですから、今後の数百例での正確性はどうか、検証すればいいと思います。

さて、私は2014年2月21日に、いつまで休職するべきか、ノロウイルスによる感染性胃腸炎でノロウイルスの検査が保険適用されるのは3歳未満や65歳以上、その他重症化のリスクファクターのあるだけであることをお伝えしました。新型コロナウイルスに関しても同じ概念が考慮されるべきです。

新型コロナウイルス感染重症化のリスクファクターを私なりにまとめました。
1、喫煙者(パーセント肺活量80%未満 or 1秒率70%未満を含む)
2、50歳以上
3、糖尿病でコントロールが悪いHbA1c 7.0%以上
4、高血圧症でコントロールが悪い家庭血圧135/85mmHg以上
5、心エコー検査で左室駆出率45%以下
です。


新型コロナウイルス感染の特徴がある程度分かってきた現在だからという前提ですが、49歳以下の者は99.95%重症化・死亡しないのですから、上記リスクファクターの家族と同居していない発熱や咳などの症状がある者は自宅安静することで、PCR検査に保険適応はないようにするのです。

私なりのシナリオをご紹介します。
さて、そのコストですが、上記の検査キットの値段から1人分の原価は2,500円ほどと計算できます。現在、サイトメガロウイルスの測定料は8,500円で、そこに判定料や診察料が加算されます。これは需要と供給が安定した値段ですし、新型コロナウイルスの検査には防護ガウン、マスク、特別な部屋の用意、その清掃、人件費などさまざまなコストがかかりますから、1人2万円ぐらいが妥当と考えられます。そこに判定料や診察料が加算されリスクファクターのあるかたは健康保険が適応されます。しかし、49歳未満でリスクファクターのない者でどうしても検査したい方は自費で合計3万円ほど支払って下さい。
と、こんな感じです。

韓国のように陽性者が外出禁止などのルールを破った場合、GPS追跡があり、罰則があり、軽症者を収容する場所が十分確保されているならPCR検査をスクリーニング検査として有効かもしれませんが、日本ではなかなか難しいです。

今後、アビガンを早期に投与すれば、凄く状態が改善するということであれば(インフルエンザ患者に抗インフルエンザ薬を投与すると発熱が36時間短縮するぐらいの効果ではだめです)早期のPCR検査は有用かもしれませんが、現在は特別の治療法がないわけですから、検査による偽陰性の発生の可能性は、現場に著しい混乱をもたらします。

一方で、IgG検査で不顕性感染を含めた感染の既往をチェックして陽性の人の経済活動を再開するのは大賛成です。なぜなら偽陰性が社会に不利益を及ぼさないからです。

「日本という一国が死亡しようとしているのに、90歳の人命を尊重している場合ではない」

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新型コロナ対策は「交通事故で死ぬ人がいるから全国で車が禁止される」フェーズになってきた

2020年04月14日 | 感染症
                    日本経済新聞より引用

このブログは15年前の開設当時から、「誤解と批判を恐れない、斜め後ろからみた医療情報」です。
さて4月13日、厚生労働省は遂に新型コロナウイルス感染の日本国内だけでの年代別の死亡率を発表しました。

以下、日本経済新聞より引用
厚生労働省は13日、新型コロナウイルスの年代別の感染者数と死亡者数を初めて公表した。死亡率は70代から平均を上回り、80~90代が平均の6倍を超えた。一方、感染者数は50代が1200人と最多で、20~40代の若い世代も同水準だった。
厚労省は4月12日午後6時時点の感染者の状況をまとめた。
7121人の感染者のうち、死亡が確認されたのは1.43%にあたる102人。年代別で死亡率が最も高かったのは80代の9.57%で、90代以上の9.17%、70代の5.7%が続いた。それより若い世代では、60代は1.11%、50代は0.5%、40代は0.17%と年代が低くなると死亡率も下がった。30代以下(39歳以下)に死亡者はいないが、20代を除いて各世代に1~5人、集中治療室(ICU)に入るなどの重症者がいた。感染者数は50代が最多の1200人。20~40代は1128~1199人とほぼ同水準だった。
以上、日本経済新聞より引用
80~90代死亡率、平均の6倍超 新型コロナで厚労省

まとめますと、

30代以下(39歳以下)に死亡者はいない
20代以下(29歳以下)に重症化する人はいない
死亡者の95%は60歳以上である。


マスゴミは「40歳代以下でも死亡することがある」と扇動していますが、20歳の人が死亡しているのではなく、この広い日本全国で40歳~49歳が2人死亡したのです。データのこういうミスリードを専門用語で「スピン」といいます。

1ヶ月前ならともかく、新型コロナウイルス感染の特徴がかなり明らかになってきた現在、「39歳以下で死亡する人はいない」のだから、私はやはり経済とのバランスが重要であると思います。新型コロナウイルスを撲滅することは不可能であり、ゆっくりと蔓延させて免疫をつけることが今後の方針として正しいと思います。

今後、29歳以下の人が死亡するケースもあるでしょうが、それは個人の免疫力の問題であり、その人は新型コロナウイルス感染で死亡せずとも、インフルエンザ脳炎であるとか他の疾患で死亡します。マスゴミはそれを大げさに報道してはいけない。

先日「ミヤネ屋」の宮根誠司キャスター(私は思考能力が低いのに世の中を扇動する人が大嫌いです)が、「政府の対応は遅い。政府は人の命より経済を優先している」というようなことを言っていましたが、彼は誤解しています。それなら、交通事故で死ぬ人がいるので、宮根はタクシーや車に乗ってはいけないことになり、言っていることとやっていることが矛盾している。

それに釣られて、愛知医科大大学院の三鴨教授も「8割が軽症ということに私もずっと前から『危ない』と叫んできました。2割の方は重症化するわけです。非軽症例が2割いるというのは極めて重要な事実だと思います。8割の人は酸素もいらないです。でも、残り2割の人は酸素がいる。運が悪いと人工呼吸器までいるという状態なんですね。しかも、これになるまで数時間でなってしまう。それくらい怖い病気でかかってはいけない病気なんです」と扇動してしまっている。

この発言は「年齢別」という概念を考慮していませんね。

「新型コロナウイルス感染で死亡するのは労働人口を過ぎた高齢者(特に喫煙者)に、従来の運命より少し早めに天国からお迎えが来たのであり、日本経済が死んでしまったら、日本国民全員が死んでしまう」のです。

1ヶ月、2ヶ月の経済封鎖は致し方ないかもしれませんが、その効果が現れた、あるいは効果がないと判明したら、極端な経済封鎖は解除すべきです。もちろんこれは日本国内が限定されている場合ですので、国際便の再開、外国人旅行客の受け入れ等は1年後など、もっと先にした方がいいと思います。

批判を恐れず単刀直入に言うと、「日本という一国が死亡しようとしているのに、90歳の人命を尊重している場合ではない」のです。

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岐阜大学病院の医師3人が高級ナイトクラブで感染

2020年04月04日 | 感染症
本日2020年4月4日、岐阜大学医学部付属病院の医師3人が、クラスターとなった高級ナイトクラブで感染していたことが判明し、大学病院は2週間の外来診療を停止することを発表しました。

NHKニュース

岐阜新聞Web

NHKの「世界はほしいモノであふれている」も不謹慎ですが、日本全体が「3つの密」を自粛している中、医師自身が高級ナイトクラブで感染とは、不謹慎ではないですか?

患者や家族から感染するのはやむを得ませんが、ナイトクラブって・・・

大学病院が2週間休診とは、新型コロナウイルス感染の件で本邦初の不祥事です。

吉田和宏病院長は「地域医療を支える大学病院で感染が確認され、申し訳なく思っている。医師の回復を待って事情を聞き、指導したい」と言っているそうですが、どうやって指導するの?「もうナイトクラブに行っちゃダメだよ」って指導するの?

また、この吉田和宏病院長は「医師でさえも感染してしまう。コロナウイルスは恐ろしい」と支離滅裂な言い訳をしていましたが、医師であるということとナイトクラブに行くことの間には何の関係もありません。この吉田という人間も、自らのプライド故にストレートに謝ることができない「自己愛性人格障害」ではないだろうかと疑ってしまいます。普通の感覚なら、素直に謝って「医師でさえも感染してしまう。コロナウイルスは恐ろしい」と言わない方が良いことは瞬時に理解できるはずです。

岐阜大学医学部付属病院の指導力って、大丈夫ですか?

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新型コロナウイルス感染で世界が苦しんでいるのにNHKは・・・

2020年04月02日 | 感染症
今日もとても忙しい一日でした。

これだけ新型コロナウイルス感染で世界は、マスクがない、病室がない、ワクチンがないと苦しんでいるのに、NHKはそのニュースの後に脳天気にも「世界はほしいモノであふれている」という番組を流している。この番組、自粛してはどうでしょうか?

嫌悪感で気持ちが沈んでしまいます。

そしてこの2人、誰か知りませんがイメージ、大丈夫でしょうか?

NHKってやはりアホですね。

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新型コロナウイルス感染を年齢別致死率から考察する

2020年03月20日 | 感染症
新型コロナウイルス感染に関して、徐々にデータが蓄積されてきました。

上の図は3月17日に厚生労働省から発表された【厚労科研】新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第1版)から引用したもので、新型コロナウイルス感染の年齢別の致死率です。

これを見ると、50歳以下の者にとって、新型コロナウイルス感染は必要以上に恐れるものではないことがわかります。

逆に、60歳以上の者にとっては、もう少し生きたいなら、注意を要した方が良いことがわかります。

だからこそ、全ての疑い患者にPCR検査して、軽症患者のために医院・病院の医療資源が枯渇し、重症患者が入院・治療できなくなってしまうことの方が、今後起きてくる深刻な問題です。陽性でも自宅待機(他人に感染させないことは重要です)で軽快する軽症患者数をどうこういっても今後は意義がありません(他人に感染させないことは重要です)。

以前、70歳代の男性がクルーズ船から下船後に、政府から2週間の自宅待機を要請されたことに対してSNSに「せっかく神戸製鋼のラグビーの試合を観戦しに行こうと思っていたのに」と政府を批判して、皆から批判を受けました。

また昨日、ノルウェーへの観光旅行から帰国した60歳代女性が、発熱があるにもかかわらず空港の検疫で申告せず帰宅し新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになり、埼玉県から「これ限りにしてほしいものです」と苦言を受けました。

60歳以上の者は新型コロナウイルス感染による致死率が高いにもかかわらず、60歳以上の一部の者が言いたい放題・やりたい放題です。

有名なマキャベリズムを説いたマキャベリは著書君主論 (岩波文庫)の第25章「運命は人事においてどれほどの力をもつのか、またどのようにしてこれに逆らうべきか」(183ページ)の中に、「あらゆる人間の予測を超えて、日毎に、変転する大事態が見られたり、いまも見られつつある、私たちの時世にあって、このような意見はますます信じられやすいものとなってきた。・・・・以下省略」と、「君主論」は500年前に書かれたにもかかわらず現代を予見していて、大変興味深いことを書いています。

このマキャベリはきっと、「60歳以上の者が言いたい放題・やりたい放題やって、致死率の高い自らの命を落としてしまえば、国家という観点からみれば、これらの者にこれ以上年金を支払う必要がなくなり有益である」と思っていることでしょう。

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新型コロナウイルス感染を「簡易生命表」で考察してみる

2020年03月18日 | 感染症
九州大学で開発された感染者トラッキング・マップです。私が紹介してアクセス数が増え、繋がりにくいかもしれません。

感染者トラッキング・マップ

3月11日にプライマリケア連合学会は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き」を発表しました。誰でもダウンロードできますので参考にして下さい。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き」

その8ページ目を見ますと、新型コロナウイルス感染の致死率がリスクファクター別に示されています。
高齢者(80歳以上) 14.8%
循環器疾患 10.5%
糖尿病 7.3%
慢性呼吸器疾患 6.3%
高血圧 6.0%
悪性腫瘍 5.6%
健康成人 0.9%

新型コロナウイルス感染では高齢者(80歳以上)の致死率が14.8%であり、これが新型コロナウイルス感染の全体の死亡率を高めています。健康成人で致死率は0.9%とありますが、ここには喫煙者も含まれており、私は個人的には「喫煙」も新型コロナウイルス感染の死亡のリスクファクターだと思っています。

さて、新型コロナウイルス感染について、野党や朝日やTBSは非常に低い論理性で連日日本政府を批判しています。その中に、政府は意図的にPCR検査数を制限することによって、対策の不備を隠そうとしているという主張があります。

私は今回、新型コロナウイルス感染を「簡易生命表」から再考しました。上の図は平成30年の簡易生命表です。

高齢者(80歳)では、毎年の死亡率は4.56%です。高齢者(80歳)では新型コロナウイルス感染に罹患しなくても、別の疾患で毎年4.56%の人が順番に命を落としています。

これは、高齢者(80歳)では、死亡するときにそれが新型コロナウイルス感染だったというだけであり、高齢者には常に他の疾患で死亡するリスクがあると解釈できます。

以前の記事の繰り返しになりますが、日本の死亡率は各国と比較しても妥当性があり、日本はPCR検査数に制限があるからといって、それにより不利益を被っているわけではありません。

むしろ全ての疑い患者にPCR検査して、軽症患者のために医院・病院の医療資源が枯渇し、重症患者が入院・治療できなくなってしまうことの方が、今後起きてくる深刻な問題です。陽性でも自宅待機(他人に感染させないことは重要です)で軽快する軽症患者数をどうこういっても今後は意義がありません(他人に感染させないことは重要です)。高齢者には天与の寿命があるのです。

付け足しですが、以前ビートたけしが「毎年2万人が自殺で死んでいるのだから、新型コロナウイルスだけでなく、自殺にも同じだけ注意を注いだらどうか」とコメントしていました。またあるテレビお抱えの医者は「誤嚥性肺炎で死亡している高齢者の方が圧倒的に多いのだから、新型コロナウイルスのみでそれほど騒ぐのはどうかと思う」とコメントしていました。

しかし、これらのコメントは的を射ていません。

自殺や誤嚥性肺炎は最終的には「自分」の作為によって死亡します。もちろん周りの環境の因子もあります。ところが、新型コロナウイルスは最終的には「他人」からうつされるという「他人」の作為によって死亡すると考えられてしまうのです。

誰しも、「他人」の作為で死んでしまうのは嫌でしょう。この時期、3月上旬にニューヨークに観光旅行に行って男性が感染したという報道があったとき、誰もが、「なんて不謹慎なんだ!」と腹立たしく思うのです。そして「新型コロナウイルスをうつしてやる!」と言っていた男性が死亡したら、「ざまあみろ」と思うのです。それは「そういう他人の行為で自分にうつされたくない」という感情が働くからです。

それはさておき、今日も野党や朝日やTBSは非常に低い論理性で日本政府を批判しています。やれやれ。この先どうなるのでしょう。

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新型コロナウイルス感染を「あと知恵バイアス」で考察してみる

2020年03月17日 | 感染症
新型コロナウイルス感染について、野党や朝日やTBSは非常に低い論理性で日本政府を批判しています。

政府が小中高校を臨時休校にしたことに関して、TBS土曜日の膳場貴子などは30分以上を費やして、現場が混乱して困っていると放送していますが、この人たちやはり頭が悪いのでしょう。それでは小中高校を臨時休校にしないで、小中高校で集団感染が発生した場合、膳場貴子は責任がとれますか?という話です。ことの後で物事を批判するのは簡単です。

人は誰でも間違える―より安全な医療システムを目指して

ここに、「あと知恵バイアス」の例が書かれています。
1964年、米国キングスマン・トランジット社の所有する小型船シラス号が強い風に流され別の船に衝突し二隻の船が開閉式の橋の動きを止めました。天候が悪い日には橋は開いていなければなりませんでしたが、その日に限って係員が定時より早く帰宅してしまい、この事態に対応できませんでした。橋は破壊され、水が堰き止められて氾濫した川の水が町全体を水浸しにしました。

この事故をもとにして1995年に興味深い研究が行われました。ある被験者のグループにはこの事故の経過が知らされましたが町の損害は知らされませんでした。別の被験者のグループには事故の経過と甚大な損害の詳細が知らされました。

結果、損害を知らされないグループでは76%の人が川の氾濫が起きても特に安全策をとるほどではなかっただろうから責任をとるべき人はいないと答えましたが、一方、損害を知らされたグループでは57%の人が川の氾濫の可能性は大きかったのだから、そのための予防措置をとらなかった人は過失罪に問われるべきだと答えました。

事故の経緯は同じですが、損害を知ることで事故の評価が変わったのです。

ヒトの脳には、このようなとんでもない思考のバイアス(偏り)が存在します。

ことが起こった後で、「その後」という特権的な位置から過去を安易に語ることはスポーツゲームの翌日の解説者にありがちな「翌日の予言者」として知られています。研究論文としても報告されています。

Fischhoff B, et al. "I knew it would happen": Remembered probabilities of once-future things.
Organizational Behavior and Human Performance 1975;13:1-16.

現在、小中高校を臨時休校により集団感染は発生していません。小中高校を臨時休校にしなくても集団感染は発生しなかったかもしれませんが、そんなことは神でもなければ誰にもわからないのです。

低い論理性で日本政府を批判し続ける、野党や朝日やTBS。腐った人間の集団です。

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精神・人格異常(その24)上昌広の場合

2020年03月16日 | 感染症
新型コロナウイルス感染について、野党や朝日やTBSは非常に低い論理性で日本政府を批判しています。
私は以前もこのような記事を書きました。

報道を捏造する朝日新聞とNHK

私が留学していた時、その大学の同じクラスの中に朝日新聞から留学している者がいましたが、世界各国から留学生が集まるクラスの中で「日本は小さい国」とばかり言っていたので、私は「日本は小さくない。彼は面積のことも誤認している。日本の国土の面積も世界で順に並べれば上から3分の1だし、人口もしかり。経済規模に関して言えば、全く小さいとは言えない」と反論し他国の留学生からも同意を得ました。私はあの時、「朝日新聞というのは日本のことが嫌いな者ばかりが集まっている集団なのか」と感じたものでした。

野党や朝日やTBSのコメントの中に、「政府は意図的にPCR検査数を制限することによって、対策の不備を隠そうとしている」という主張があります。
上昌広のコメントが誤りであったことが明らかになってきた現在、上昌広の件をレビューしてみます。

以下、AERA dotより引用
「PCR検査の体制整備の遅れは、すべて感染研に問題がある」
こう厳しく指摘するのは医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師だ。そしてこう続ける。
「驚くことに、日本の新型コロナウイルス肺炎による致死率は、上海、北京に比べはるかに高い。なぜかと言うと、それはこれまでPCR検査を広く行ってこなかったからです」
たしかに、お隣の韓国は、今回の新型コロナ騒ぎで1日当たり5千~1万4千人のペースで検査し、2月末時点で計約7万8千人の検査を終えたという。
日本では、一日に約3800件の検査ができるとされていたが、2月18日から23日までに行った検査は計約5700件だったと、衆院予算委員会で報告された。保健所が医師の検査依頼を拒んだ事例が、少なくとも計30件あったことも日本医師会の調査で明らかになった。
検査体制の見直しを求める声におされてか、政府は、それまでは法律に基づき、保健所が認めないと実施できなかったPCR検査に、3月6日から健康保険を適用し、民間の検査会社などでも実施できるようにした。
しかし、なぜこの時期まで、検査の幅を広げなかったのだろうか。それについて上医師はこう述べる。
「それは、感染研の目的が感染者の治療ではなく、研究にあるからです」
今回の新型コロナ対策では、感染研に9.8億円の予算が付けられている。本来なら、それを使って感染者の広がりを知るためのサンプル調査をしたり、民間にPCR検査を依頼したりしてもよかったはず。それらをしなかったのは、すべては自分たちの研究のためで、PCR検査のデータを独占したかったから、との見方も出ている。
実際、政府の新型コロナ対策を担う専門家会議のメンバーには、座長を始め、感染研に関係する人物がいる。PCR検査を民間まで広げることには消極的だったことがうかがえる。(本誌取材班)
※週刊朝日  2020年3月20日号
以上、AERA dotより引用

この人、先見の明もなく、野党とつるんで政府批判したかっただけですよね。
私は以前から主張していますが、このように発言が将来誤りであったと判明した人にはなんらかのペナルティーが必要だと思います。

的確でない意見が拡散されると、「真実性」「公共性」「公益性」が損なわれてしまうのです。

3月16日までの新型コロナウイルス感染による各国の死亡率をまとめてみました。数値は刻々と増加していますが、死亡率は日々変わるものではありません。
     死亡数/陽性判明数=死亡率
日本   24/814=2.9%
韓国   72/8086=0.9%
アメリカ 43/2034=2.1%
フランス 79/3661=2.1%
イラン  514/11364=4.5%  
世界全体 5706/152040=3.7%
イタリア 1226/17660=6.9% ←これでも塩野七生先生は、イタリアから日本を批判しますか?
日本人へ 国家と歴史篇 (文春新書)

日本の死亡率は各国と比較しても妥当性のあることがわかります。つまり日本はPCR検査数に制限があるからといって、それにより不利益を被っているわけではないことがわかります。

個人的な意見としては死亡者の平均年齢±標準偏差か、中央値(25~75%区間)も発表してほしいものです。死亡者がほとんど70歳以上ならば(ほとんど70歳以上でしょう)、若者は必要以上に恐れることはないのです。

むしろ全ての疑い患者にPCR検査して、軽症患者のために医院・病院の医療資源が枯渇し、重症患者が入院・治療できなくなってしまうことの方が、今後起きてくる深刻な問題です。陽性でも自宅待機(他人に感染させないことは重要です)で軽快する軽症患者数をどうこういっても今後は意義がありません(他人に感染させないことは重要です)。

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新型コロナウイルス感染を魚の油EPA製剤エパデールの研究での「死亡」から再考する

2020年03月09日 | 感染症
新型コロナウイルス感染について、野党や朝日やTBSは非常に低い論理性で日本政府を批判しています。その中に、政府は意図的にPCR検査数を制限することによって、対策の不備を隠そうとしているという主張があります。

そこで私は、新型コロナウイルス感染を魚の油EPA製剤エパデールの研究での「死亡」から再考しました。

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.
Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)


魚の油 EPAの製剤エパデールの研究では、悪玉コレステロールが高くスタチンという悪玉コレステロール低下薬で治療されている患者18645人が、スタチン単独の内服と、スタチン+エパデール内服群に分けられ、その後約4.6年間の「突然死、致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、風船治療やステント治療やバイパス術が必要となった」数が比較されました。

結果は、上の図にあるように、「突然死、致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、風船治療やステント治療やバイパス術が必要となった」は、スタチン単独の内服群では3.5%であったのに対して、スタチン+エパデール内服群では2.8%と効果があったと結論づけています。

しかし、論文を詳しく読んでみますと、原文では「The occurrence of coronary death or myocardial infarction was not significantly lower in the EPA group than in controls. The frequency of fetal or non-fatal myocardial infarction was not significantly reduced. In the EPA group, however, that of non-fatal coronary events (including non-fatal myocardial infarction, unstable angina, and events of angioplasty, stenting, or coronary artery bypass grafting) was significantly lower in the EPA group than in controls.」と書かれています。

すなわち、「不安定狭心症、風船治療やステント治療やバイパス術が必要となった」のはスタチン+エパデール内服群で低かったが、「突然死、致死性心筋梗塞」では差がなかったということです。効果があったのは「不安定狭心症」に対してのみです。

ところが、「突然死、致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、風船治療やステント治療やバイパス術が必要となった」全体で効果があったごとくに宣伝されています。

「不安定狭心症」という定義は医者が患者の症状をいつからととらえるかで、そうであるかそうでないのか容易に変更できますので、研究の評価項目に加えると、その研究の信頼性を著しく損なうことになります。

その反面、「死亡」は医者がどうにも操作できるものではありませんし、状況を的確に反映する有用な指標であるといえます。

3月9日午前中までの新型コロナウイルス感染による各国の死亡率をまとめてみました。数値は刻々と増加していますが、死亡率は日々変わるものではありません。
     死亡数/陽性判明数=死亡率
日本   9/498=1.8%(クルーズ船を除く、クルーズ船を含めても、当然同じ死亡率です)
韓国   51/7382=0.6%
アメリカ 22/500=4.4%
フランス 19/1126=1.6%
イタリア 366/7375=4.9%
イラン  194/6566=2.9%  
個人的な意見としては死亡者の平均年齢±標準偏差か、中央値(25~75%区間)も発表してほしいものです。

日本の死亡率は各国と比較しても妥当性のあることがわかります。つまり日本はPCR検査数に制限があるからといって、それにより不利益を被っているわけではないことがわかります。

むしろ全ての疑い患者にPCR検査して、軽症患者のために医院・病院の医療資源が枯渇し、重症患者が入院・治療できなくなってしまうことの方が、今後起きてくる深刻な問題です。陽性でも自宅待機(他人に感染させないことは重要です)で軽快する軽症患者数をどうこういっても今後は意義がありません(他人に感染させないことは重要です)。

「TAKARA」という企業が新型コロナウイルスを診断できる簡易キットを開発したそうですが、そのキットの感度・特異度を検証するのに厚生労働省から新型コロナウイルスの検体を分けてもらいないそうです。その理由は「まだ治療法がない現在、新型コロナウイルスと診断できた軽症の患者が医療機関に押し寄せ医療崩壊を招くのを防ぐため」だそうです。厚生労働省は珍しく正しいことを言っています。

インフルエンザのように、特有の診断法が確立されたならば新型コロナウイルスの簡易診断キットは有用になります。

土曜日は膳場貴子、日曜日は関口宏、平日は小川彩佳と星浩、この人たち、脳みそが新型コロナウイルスでおかしくなっています。
TBSの情報操作と政府批判には非常にうんざりしています。

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インフルエンザワクチンはほとんど効いていないというデータ

2019年12月12日 | 感染症
上の図は日本臨床内科医会会誌の今月号に載っていた図です。
「インフルエンザワクチンの有効性と安全性」
日本臨床内科医会会誌 2019;34:14
(インパクトファクター☆☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)←この表示、久しぶりです。

過去10シーズンについてインフルエンザワクチンを接種した人と接種しなかった人のインフルエンザの罹患率を年齢別に示したものです。

ご覧いただくとわかるように、昨シーズンはインフルエンザワクチンは9歳以下と30歳~39歳の人しかインフルエンザの発症を抑制していません。全体を平均して図の説明では、全年齢で「一定」の効果がみられたと書かれていますが、統計学的にはp=0.0512は差がないということですから、この説明は誤りです。この説明を書いた人は統計学を誤解していると思います。9歳以下と30歳~39歳の人では効果がみられたと書けば正しかったと思います。30歳~39歳の人は働き盛りなので職場や通勤交通機関などで不特定多数の人と接する機会が多く、これらの人には有効であったと想像できます。

この年齢でない私はこれらのデータを以前から知っていますので、私はインフルエンザワクチンを接種していません。

インフルエンザワクチンを接種すれば症状が軽くなるという話もききますが、私は半信半疑です。以下にその理由を述べます。

(その1)
私たちは医学研究をする前に、「こういう理由から私たちはこの仮説をたてた。この仮説を検証するためにこの研究を行った」と論文を書くことが多いです。皆さんも冷静に考えてみて下さい。インフルエンザワクチンの場合の私個人の「仮説」は、「まだウイルス量が少ない発症さえも抑制できないのに、発症して体内で何万倍にも増殖したウイルス量状態である症状を軽くすることなどできるのだろうか」ということです。

(その2)
この医学研究を行う場合(既に行われていますが)同一人物で2種類の人生など比較できませんから、接種群と非接種群に分けて両群の平均を比較するのですが、それが本当に個別の人々にあてはまるのだろうか、ということです。少し難しい話なので分かりやすい例を挙げます。ある若者は将来社長になりたくて東北大学に入ろうか九州大学に入ろうか迷っていました。調べたら人数で補正した社長数は九州大学出身者の方が多かったので(例えばの話なので本当かどうかわかりません)その若者は九州大学に入学しました。その若者にはその方がよかったかどうかなどという証明はほとんど不可能ということです。
その若者自身には東北大学の方が合っていたかもしれません。会社数自体が北日本よりも西日本に多いのかもしれませんし(例えばの話なので本当かどうかわかりません)、社長をめざす若者が過去のデータを見て九州大学を選んでその結果社長をめざす人が九州大学に多く社長が多くなったのかもしれません(例えばの話なので本当かどうかわかりません)。
このように医学研究でいうところの「交絡因子」が沢山あります。ワクチンを接種する人の方が健康に配慮する人が多いので罹患しても早く対処したのかもしれません。

(その3)
百歩譲ってインフルエンザワクチンに症状を軽くする効果があったとしても、今では、タミフルやイナビルなどの抗インフルエンザウイルス薬が登場し、早期に内服すれば発熱などの症状は約36時間短くなるのですから、万が一罹患したら早めに内服を始めれば、ワクチンの存在意義はないのでは?ということです。でも本来は健康な成人の場合、耐性の問題から抗インフルエンザ薬など使用しない方がよいです(仕事の都合でどうしても、という場合は仕方がないですが)。
この件に関しては以前ここで書きました。

インフルエンザワクチンの効果は65歳以上では9%

結論
インフルエンザワクチンは9歳以下と30歳~39歳の人以外には効果はほとんどありません。9歳以下と30歳~39歳の人には有効ですから接種して下さい。図から判断すると10歳~19歳もお勧めです。


私は以前、別の観点の説明を書きました。

意外と効いていなかったインフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンはあまり効いていない

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今シーズンのインフルエンザワクチンは流行株と抗原性が違うかも(その2)

2018年01月29日 | 感染症
インフルエンザが猛威をふるっていますね。

以前、こんな情報も書きました。
今シーズンのインフルエンザワクチンは流行株と抗原性が違うかも

さて、上の図は国立感染症研究所のホームページから引用した図です。

今シーズンのインフルエンザは昨年のインフルエンザの型とはかなり違うようです。

昨シーズンはA型が主で、年明けからB型の流行が始まっていましたが、今シーズンはB型が年が明ける前から流行しています。A型もH3型ではなくてH1型が主流です。

今シーズンはA型とB型が半々です。A型に感染した人ももう一度B型に感染する可能性があります。今シーズンのインフルエンザ、なかなかしぶといです。


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今シーズンのインフルエンザワクチンは流行株と抗原性が違うかも

2018年01月25日 | 感染症
インフルエンザが猛威をふるっていますね。

以前、こんな情報も書きました。
インフルエンザの流行は3~4歳児から始まる

さて、上の図は国立感染症研究所のホームページから引用した図です。

右は昨シーズン(2016-2017)のインフルエンザワクチンの抗原性と実際に流行したウイルスの抗原性が合致していた場合です。
左は両者の抗原性の間に相違があった場合です。

昨シーズンはA型インフルエンザのH1N1pdm09の場合はワクチンに効果があったのですが、A型インフルエンザH3N2の場合は効果がなかったということを示しています。

今シーズンの比較解析はまだですが、今年はどうもインフルエンザワクチンの抗原性と実際に流行したウイルスの抗原性がかなり異なっているような気がしますが、どうでしょうか。

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2回目の肺炎球菌ワクチンの効果を示す根拠が弱すぎる~~

2017年11月26日 | 感染症
肺炎球菌には 93 種類の血清型があり、平成26年10月からの定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、そのうちの23種類の血清型に効果があります。高齢者に対する定期接種は平成26年10月1日から開始されています

厚生労働省のサイト

この肺炎球菌ワクチンですが、最初の接種から5年以内に再接種すると、接種部位の腫脹や硬結などの副作用が強く出ると考えられるため禁止されていました。しかし、最近もうそろそろ最初の接種から5年間が経過して、2回目の接種時期になってきている人をちらほら見かけるようになりました。

そこで、2回目の肺炎球菌ワクチンの効果はどうなのかという問題がクローズアップされてきます。ところが調べてみると、臨床的に2回目の接種が肺炎球菌肺炎を減らすというデータはありません。

「2回目の接種で初回接種と同等の抗体応答が誘導される」というデータだけがあって、「従って初回接種と同程度の感染予防効果が期待される」と「期待」だけされている状態であることは事実です。それが示されているのが日本では下の2編の論文です。

Sustained functional serotype-specific antibody after primary and secondary vaccinations with a pneumococcal polysaccharide vaccine in elderly patients with chronic lung disease.Vaccine. 2014;32(10):1181-6.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

Revaccination with 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in the Japanese elderly is well tolerated and elicits immune responses.Vaccine. 2016;34(33):3875-81. :
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

下の論文は8名の著者のうち4人がこのワクチンを発売しているMDS社の社員、3人がMerck社の社員です。自分たちは社員だと利益相反を表せばその論文は正義であると証明されたわけではありません。

肺炎球菌ワクチン再接種問題対策委員会の皆さんもMDS社からロビー活動されていませんでしたか??

この2編の論文の結果を受けて、「一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題対策委員会」は「23価肺炎球菌ワクチンの再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないが、症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮してもよい」と発表しています。

実に控えめなコメントです。

以前私は、以下の記事を書きました。
肺炎球菌ワクチンは65歳~75歳では効いていない

1回目の接種でさえ、有効な患者は限定されるのに、2回目のこのエビデンスの弱さを考慮すると
「症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮」って・・重症の慢性肺疾患の患者や重症疾患の寝たきり患者などに効果が限定されるのではないでしょうか。

私は最近、2回目のワクチン接種はどうなのかと患者から尋ねられると、重症患者以外には「臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないですよ~」と答えるようにしています。

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肺炎球菌ワクチンは65歳~75歳では効いていない

2015年11月26日 | 感染症
黄色で囲んであるのが、ワクチンの接種が効果があった群です。


以前、「インフルエンザワクチンはあまり効いていない」をお伝えしたところ、「AF冠者」様から、「行政が後押しして高額の負担までしてくれている「肺炎ワクチン」の効果は如何なものでしょうか。自己負担も4,000円を超えるので考えています。」とコメントをいただきましたので調べてみました。ちょうど今月号の日本内科学会雑誌の特集も「内科医に求められる肺炎球菌ワクチン・ストラテジー」でもありますし・・


これまで何度もお伝えしているように、日本では人種も環境も海外とは異なるのですから、ある程度の人数を調べた医学研究があるのなら、欧米人の結果よりも日本人の結果を優先しなければなりません。

調べてみると、日本のランダム大規模研究が2つだけありました。1つめは、
Effectiveness of pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumonia and cost analysis for the elderly who receive seasonal influenza vaccine in Japan
Vaccine. 2010 Oct 8;28(43):7063-9.


65歳以上の786人の日本人を肺炎球菌ワクチンを接種する群と接種しない群にランダムに分けて、その後2年間の肺炎の発症率や死亡率が調べられました。

結果は、上の図にありますように、効果があったのは75歳以上の群の1年目(接種後2年目は両群で差はありませんでした。すなわちワクチンの効果はありませんでした)、慢性の肺疾患の患者の1年目(接種後2年目は両群で差はありませんでした。すなわちワクチンの効果はありませんでした)、自分の足で歩けない人の1年目と2年目でした。研究対象全体や、75歳未満や、慢性の腎臓疾患患者、以前に肺炎に罹患した人などでは肺炎球菌ワクチンの効果はありませんでした。

つまり、現在65歳以上で国から推奨されている肺炎球菌ワクチンですが、65歳~75歳で、ご自分の脚で歩ける人には効果がないということです。そういう方々は75歳になったら接種すればいいし、慢性の肺疾患がある方は65歳からでも接種すれば最初の1年は効果があるということです。


2つめは、
Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial
BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004. doi: 10.1136/bmj.c1004.



1006人の日本人の老人ホーム入居者が肺炎球菌ワクチンを接種する群と接種しない群にランダムに分けて、その後2年間の肺炎の発症率や死亡率が調べられました。

結果は、ワクチン接種群で肺炎球菌による肺炎の発症率は2.8%、非接種群で7.3%で接種した方が肺炎球菌による肺炎の発症は減りました。肺炎の死亡率も、接種群で20.6%、非接種群で25.0%と、接種した方が肺炎による死亡率は減りました。この研究の結果、老人ホームに入居している高齢者は年齢に関係なく、ワクチンを接種したほうがいいです。

さて、老人ホームに入居しておらず自分の脚で歩けて慢性の肺疾患にかかっていない65歳~75歳の方は、肺炎球菌ワクチンを接種しても金の無駄使いということです。なぜ、厚生労働省はこういうデータを国民に伝えず、ただ闇雲に65歳以上になったら必要だと勧めているのでしょうか?


今月号の日本内科学会雑誌の特集「内科医に求められる肺炎球菌ワクチン・ストラテジー」でも、いくら探しても日本人のデータはこの2つからしかありません。「2014年10月からは65歳以上の高齢者(ハイリスク患者は60歳以上)を対象に予防接種法上のB類疾患用ワクチンとしての定期接種がはじまったが、この背景にも関係諸学会からの厚生労働省への要望がある」と書かれています。日本の研究結果からは、それは75歳以上の高齢者(ハイリスク患者は65歳以上)への修正が必要であろうと思います。

今月号で成人に対する肺炎球菌ワクチンの原稿を書いている8人のうち4人が肺炎球菌ワクチンを販売しているファイザーから、2人がMDSから講演料や寄付金をもらったとCOIを(conflict of interest:利害関係)公表しています。

ファイザーやMSDが諸学会へロビー活動をして、諸学会は厚生労働省にそれを要望したということでしょう。効果のない対象者までワクチンの対象になってしまっています。この構造のままでは日本の医療は正しくなりません。


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私はインフルエンザワクチンを接種しない

2015年11月17日 | 感染症
昨年は私の職場の職員はインフルエンザワクチンの接種が強制でした。私は昨年、学会出張で指定日に接種できなかったのですが、学会から帰るとわざわざ電話がかかってきて、前回接種しなかった者のために再度接種の機会を与えるので必ず接種するよう求められました。指定日に接種しなかったことに罪悪感をもたされるほどの言われようでした。

ところが今年、ワクチンの接種を希望するかという書類が来ました。あれ?強制でないの?希望しなかったら接種しなくてもいいの?昨年あれほど強制していたのに?やはりワクチンが効くというエビデンスに限界が生じているのではないの?という感じです。

私の2011年のブログでも、インフルエンザワクチンが有用という論文はそれほどないこともお伝えしています。

意外に効いていなかったインフルエンザワクチン

「インフルエンザワクチンの効果(VE)は65歳以上では9%」

インフルエンザワクチンはあまり効いていないということもお伝えしました。


さて、現在のYahooの上の方、検索ワードを入力するところのすぐ下をご覧下さい。「インフルエンザ対策、ワクチンの2つの効果とは?」とありますね。これをクリックして下の方にスクロールしてください。

インフルエンザワクチンの効果について、「インフルエンザワクチンは、65歳以上の健常な高齢者については 約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があった」と書いてあります。そのすぐ下の「参考:平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」をクリックすると、資料の4ページ目に研究内容が記載されています。

病院、老人保健施設、特別養護老人ホームなどに入院、入所している人が対象です。あれ?「病院に入院している人」が健常な高齢者ですか?「インフルエンザワクチンは、65歳以上の健常な高齢者については 約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があった」という標榜と内容が違います。

そして、あれ~~?平成11年の結果ですか?今は平成27年ですよ。もっと新しいエビデンスはないのですか?それとも最近は効いていないので公表できないのですか?と。

それに、1997/98、1998/99、1999/2000の3シーズンで調査を実施しているのに、結果が示されているのは、「有効性の正確な解析が可能となる条件を満たした1998/99シーズン」だけですが、残りの1997/98、1999/2000は正確でなかったのですか?本当は効果がなかったから載せられないのではないですか?「正確でない」って、研究のデザインは綿密に練られたのではないですか?それでは正確でなくてもいいので結果を教えていただけませんか?。

というように、数々の疑問が湧きませんか?

上の方の右端を見ると、このブログに載せたように「ファイザー」の文字があります。禁煙補助剤の宣伝です。そういえばファイザーもインフルエンザワクチンではないけれど「肺炎球菌ワクチン」を売っていますね。最近テレビの宣伝でも見た方がいると思います。

私のように65歳未満で健康にバリバリ仕事をしている者に、本当にインフルエンザワクチンが必要なのか?怪しいです。日本の資金がなんだかんだと騙されて全部海外に持っていかれている印象です。

この宣伝って、乳児・高齢者以外の健康な者にも、危機感を煽ってワクチンを接種させようとしている印象です。

私は、昨年のように職場から強制されないのであれば、インフルエンザワクチンは接種しません。

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