医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

インフルエンザワクチンの効果(VE)は65歳以上では9%

2015年10月09日 | 感染症
前回、「インフルエンザワクチンはあまり効いていない」で昨年のインフルエンザワクチンが有効であったかどうかの情報をほとんど聞いたことがないから、国や機関は情報を伝えてほしいとお伝えしました。実はこのような調査を行い正確なデータを出すのは難しいという点もあります。

以前、九州大学 廣田良夫先生は、「インフルエンザ疫学研究の原理と方法:特にワクチン有効性の評価との関連で」という論文の中で、以下のように述べています。

自然流行によるウイルス暴露を通じて行われる通常の研究は,以下に示すような問題を常に抱えている。
(1)流行期を的確に予測することが困難
(2)ワクチン株と流行株の抗原性の差
(3)インフルエンザの臨床診断が困難、そのため非インフルエンザによって生ずる結果の希釈
(4)自然感染により既に十分な抗体価を有する者の存在
(5)ワクチン接種で生じた集団免疫により非接種者が受ける間接的効果
(6)接種群と非接種群でのウイルス暴露機会の差
(7)接種者と非接種者との特性の差
(1)と(2)は研究の環境に関わる項目であり、(3)~(7)は研究のデザイン,結果及びその解釈に関わる項目である。特に(3)が疫学研究の妥当性に影響を与える最大の問題点である。また小学校を対象集団とする意義は(4)及び(6)の影響をある程度克服できるところにある。
(以上引用)


感染症のワクチンの効果を現す指標の代表的なものはVE(ワクチン・エフィカシー)で、以下のように計算されます。

VE(%)=(ARU−ARV)÷ARU×100
ARU=attack rate in unvaccinated=ワクチン非接種群における発病率
ARV=attack rate in vaccinated=ワクチン接種群における発病率

しかし、これは薬による治療の効果を現す「相対的効果」と同じで、
ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが50人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが25人
の場合は(50 – 25) ÷ 50 = 0.5で、50%と計算できますが、

ワクチン非接種群100人のうち、その感染症にかかったのが2人
ワクチン接種群100人のうち、その感染症にかかったのが1人
の場合も(2 – 1) ÷ 1 = 0.5で50%と計算されます。

下のケースの場合、あまり有用と感じることはできません。  と予習をしたところで、

国際医学情報センターが発表したデータをご紹介します。アメリカの調査ですので日本にそのまま当てはめることはできないという限界はあります。

MMWR62(7): 119-123
Interim Adjusted Estimates of Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness - United States, February 2013

2012年12月3日~2013年1月19日にU.S. Influenza Vaccine Effectiveness(Flu VE)ネットワークに登録された咳を伴う急性呼吸器疾患により医療機関を受診した2,697例(男1,582女1,115)を対象に、A型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対するワクチンの有効性(VE)を分析した。ここでは5ヵ所 [シアトル(ワシントン州)、マーシュフィールド(ウィスコンシン州)、アナーバーおよびデトロイト(ミシガン州)、ピッツバーグ(ペンシルバニア州)、テンプル(テキサス州)] のネットワークデータを使用した。2,697例のうちインフルエンザ陽性例(rRT-PCR法)は1,115例(41%)であり、うちワクチン接種例は367例(33%)、インフルエンザ陰性例(1,582例)では793例(50%)であり、全体での接種率は1,160/2,697例(43%)であった。男女別では男性:435/1,092例(40%)、女性:725/1,605例(45%)、年齢別では65歳以上の高齢者にて高かった(205/290例、71%)。インフルエンザAおよびB型ウイルスに対するVE(年齢、地域、人種/民族、健康状態および発症からネットワーク登録までの日数により補正)は全体で56%と算出され、A(H3N2)ウイルス感染例(n=546)におけるVEは47%(95%CI=35-58%)であり、年齢別では6ヵ月~17歳:58%、18~49歳:46%、50~64歳:50%、65歳以上:9%と65歳以上の高齢者にて有意に低値であった。B型ウイルス感染例(n=366)におけるVEは67%(95%CI=51-78%)であり、年齢による有意な相違は認めなかった。以上、インフルエンザA(H3N2)およびインフルエンザBに対するワクチンの有効性は65歳以上の高齢者にてA(H3N2)に対して低く、高齢者ではワクチン接種の有無にかかわらず抗ウイルス薬の投与が推奨される
(国際医学情報センターより引用)

65歳以上のVEはたった9%です。

ここに書いてあることを斜め後ろから解釈すると、健康な高齢者はインフルエンザワクチンの接種よりも、かかったかなと思ったら早めに診察・検査をして、可能性がありそうなら抗インフルエンザウイルス薬を早めに内服する方がいい、という事ですね。


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インフルエンザワクチンはあまり効いていない

2015年10月03日 | 感染症
10月になり、皆さんの自治体や職場でもインフルエンザワクチンの申し込みが始まったのではないでしょうか。

以前、将来のその時に達したとき、過去の情報が誤りであることが証明されることは多くあり、その情報を流した機関は責任をとるべき体制がないと、いいかげんな情報があふれかえるということを、従軍慰安婦に関する朝日新聞の誤った情報の件でお伝えしました。

従軍慰安婦

そこで私は、「そういえば昨年のインフルエンザワクチンが有効であったかどうかの情報をほとんどマスコミから聞いたことがなく、本当にインフルエンザワクチンが有効なのかよく分からない」と思い調べてみました。

私の2011年のブログでも、インフルエンザワクチンが有用という論文はそれほどないこともお伝えしています。

意外に効いていなかったインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンの有効性のデータはウイルスのタイプの選択などで刻々と変わりますので、できるだけ最近のデータを探すことにしました。また国が違っても事情が異なりますので参考になりません。調べてみたら素晴らしい日本の論文がありました。

Effects of vaccination and the new neuraminidase inhibitor, laninamivir, on influenza infection
PLoS One. 2014 Apr 3;9(4):e92601. doi: 10.1371/journal.pone.0092601
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究ではインフルエンザワクチンを接種したか、実際にインフルエンザになったかをアンケート用紙に答えるかたちで行われました。合計4,443人の回答が得られました。別の疾患でクリニックに来院した人にアンケートしていますので、一般の人口構成より罹患率が高いという研究の限界は仕方がありません。

対象は小学生以下、14歳~65歳、65歳以上の3群に分けて調査されました。2007年~2008年の冬、2008年~2009年の冬、2009年~2010年の冬、2010年~2011年の冬の結果が得られました。

上に示したのがその結果ですが、これらの4シーズンで、インフルエンザワクチンが効果があったのは、2010年~2011年の14歳~65歳の群だけでした。他のシーズン、他の年代ではインフルエンザワクチンは効果がありませんでした。

一番上に示されている、2007年~2008年の小学生以下の年代ではワクチン接種群ではインフルエンザにかかった率が35%、接種していない群ではその率が48%で、これは調査した人数が少ないため統計学的なパワーが足りないだけではないかという意見も聞こえてきそうですが、人数を増やして、意図的に差があったことを示そうとするのは間違いです。仮にこの群の人数を2倍にして私がカイ二乗検定で計算してもp=0.10で、それでも違いはありません。

新谷先生がここでも述べています
今日から使える 医療統計

興味深いのは、65歳以上の高齢者で、インフルエンザにかかる率が低いことです。高齢者の健常者はインフルエンザワクチンを接種する必要がないことがわかります。65歳以上の高齢者は昔、インフルエンザの治療薬がなかった頃、症状のあるなしにかかわらず何度もインフルエンザにかかって抗体をいっぱい持っているからとも考えられます。過去にインフルエンザにいっぱいかかっているから現在インフルエンザにかかりにくい、このことはインフルエンザにかかることが「悪」ではない事を示しています。インフルエンザにかかってなぜいけないのですか?この裏にはインフルエンザワクチンを売ろうとする国と製薬会社の陰謀が見え隠れします。

ただし、人工透析している方や、慢性呼吸器疾患など、基礎疾患にかかっている患者はワクチンで病状を軽くすることは大切ですから、混同しないようにする必要があります。

私は、インフルエンザワクチンは接種しません。

昨年のインフルエンザワクチンがどれだけ効いたのか、マスコミでその結果を聴くことはほとんどありませんね。それはインフルエンザワクチンはほとんど効いていないからかもしれませんね。

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いつまで休職するべきか、ノロウイルスによる感染性胃腸炎

2014年02月21日 | 感染症
以前、飲酒運転に関して、運転者側が自分で呼気のアルコール濃度を測定できるようになると、これまでの考えをガラリと変えなくてはならないある種のパラダイムシフトが起こることをお伝えしました。

最近、各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになり、私はある種のパラダイムシフトが起きていると感じています(平成24年4月から保険適応になりました。ごく最近のことなのです)。これは、インフルエンザの場合は飛沫感染で5日間ぐらいで他人への感染性がなくなるので起こりえなかった事態です。

ノロウイルスに関してはネットで検索すれば情報はたくさん得られますので、ここでは書きませんが、まず、今回の記事に関連していることだけを、復習してみます。

感染者のノロウイルスは糞便中に多く存在しますので、ノロウイルス感染症の検査は肛門に綿棒のようなものを入れて検体を採取するか直接便から検体を採取することで行われます。費用が保険適応になるのは次に該当する場合です。

1、3歳未満
2、65歳以上
3、抗ガン剤や免疫抑制剤を内服している患者
4、ガン患者
5、臓器移植後の患者


いずれも、ノロウイルス感染症が重症化しやすい患者が想定されています。これは正しい考え方だと思います。これ以外で検査を希望すると(ほとんどが職場の事情です)自費になるのですが、以下のサイトにあるように一番安いELISA法で2,100円です。これに初診料などが加算されて5,000円前後になるのだと思います。(このサイトは少し古いので検査に数日かかると記載されています)
http://www.shokukanken.com/kensa/1&fm=price

しかし、症状の治療も同時に行うとなると、検査が自費の場合は、日本では混合診療は認められていないので、治療費も自費になってしまいます。ノロウイルス感染と判明しても特効薬はなく治療法に変化は生じないですから、結局、検査が保険適応にならない患者は検査しないことが多いです(そうすると厚生労働省が発表している感染者の統計って、意味があるの?という疑問も生じます)。

さて、ノロウイルスによる感染性胃腸炎では症状消失後2~3日で復職するのが一般的ですが、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くし、乾燥した便のほんの一部でも空気中に舞い上がると感染源となるウイルスを含みますので、保育士や食品関係の仕事をなさっている方が「どれだけ休職するべきか」は非常に難しい問題です。以下のように「国立感染症研究所」も、「厚生労働省」も明確な言及をあえて避けています。なぜなら、患者の給与をも左右するかもしれないからです。
http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

そこで、新型インフルエンザに関して、給与について示された厚生労働省のサイトがあるので参考にしてみます。

(以下、厚生労働省のサイトから引用)
感染拡大防止の観点からは、感染又は感染の疑いがある場合には、保健所の要請等に従い外出を自粛することその他感染拡大防止に努めることが重要ですが、その際、欠勤中の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。
なお、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条
「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、使用者は休業期間中労働者に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。(※以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型インフルエンザの流行状況等に応じて保健所の要請等が変更される可能性がありますのでご留意ください。)

(1)労働者が新型インフルエンザに感染したため休業させる場合

新型インフルエンザに感染しており、医師等による指導により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。医師による指導等の範囲を超えて(外出自粛期間経過後など)休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。

(2)労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

新型インフルエンザかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱えば足りるものであり、病気休暇制度を活用すること等が考えられます。

一方、例えば熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。
(以上、厚生労働省のサイトから引用)

先日、私の外来に保育士が受診されました。症状は頻回の下痢と嘔吐で、家族が通う学校にノロウイルス感染症の生徒がいて、ほとんどの家族が一瞬にして同じ症状になったそうですので、自費で検査をするまでもなくノロウイルス感染症は間違いない状況でした。

私は患者から尋ねられました。「いつまで仕事を休まないといけないですか?」

しかし、上の厚生労働省の記載にあるように、私が「ノロウイルス感染症は、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くので、保育士のお仕事なら数週間、いや最低でも1週間休んだ方がいいですよ」などと言ってしまうと、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではなく、「医師等による指導により労働者が休業する場合」になってしまい、この保育士の給与が保証されなくなってしまいます。職場の利益のためにする行為が患者の不利益になってしまうのです。

各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになった。

特に保育士や食品関係の業種は、休職中の給与について労使間で十分に話し合って早急にルールを決める必要がある。


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インフル予防接種は一般の高齢者には有用性が低い、小児の接種は有用

2014年02月19日 | 感染症
以前、以下のような新聞記事がありましたので、それについてお伝えします。

かつて小学校などで行っていたインフルエンザワクチンの集団接種が、高齢者の死亡を半分以下に抑える効果があったとする分析が、米科学誌プロスワンに掲載された。著者らは日米両国の1978~2006年の人口統計を基に、インフルエンザによるとみられる死者の数を分析。日本の65歳以上の死者は、小学校などでの集団接種が行われていた94年まで10万人あたり6・8人だったが、95年以降は同14・5人に倍増した。小学生などの集団接種がない米国では、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも同16~18人でほとんど変化がなかった。集団接種による社会全体への感染予防効果が高齢者の感染を抑えたとみられる。結果として、小学校などで行っていた集団接種が65歳以上の死亡率を減少させ、年間約1000人の死亡を抑えていたと、著者らは推定している。
(読売新聞より引用)

そこで、論文の原版を読んでみました。

Influenza-Related Mortality Trends in Japanese and American Seniors: Evidence for the Indirect Mortality Benefits of Vaccinating Schoolchildren
PLoS ONE 6(11): e26282. doi:10.1371/journal.pone.0026282


PLoS ONEは掲載料を著者が支払い、掲載コストを負担する代わりに読者は無料で閲覧できる科学雑誌です。「真に意味のある論文は雑誌の序列は問わず、他の研究者に必要とされる」という理念のもとに、インパクトファクター度外視で運用されている雑誌です。というか、論文審査における却下率を下げて(全投稿論文の70%近くを受理する)運営コストを下げる目的もあると思います。自力で掲載できるので、最近は著者が話題作りをしたい場合にもよく選ばれます。

上の図の棒グラフはインフルエンザワクチンの接種数、青色の折れ線グラフは高齢者のインフルエンザによる死亡率です。日本で1994年に小学校などで行っていた集団接種が終わってから高齢者のインフルエンザによる死亡率が増え、その後任意で小児の接種が増えてきたら、高齢者の死亡率は減ってきたというものです。

一方、集団接種がないアメリカでは、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも高齢者のインフルエンザにようる死亡率はほとんど変化がありませんでした。

つまり、高齢者のインフルエンザによる死亡率は、高齢者のワクチン接種率よりも、子供のワクチン接種率に関係が深かった、ということです。

以前、意外に効いていなかったインフルエンザワクチンについてお伝えしました。
高齢者ではワクチン非接種者でもインフルエンザの発症率は高くなく、ワクチンを接種しても効果はなかったというものです。

この2つの結果を総合して考えると、一般の高齢者にはインフルエンザワクチンは必要ないのではないかと思えます。もちろん慢性呼吸器疾患などのリスクを持った高齢者には必要でしょうが、少なくとも、この2つの結果からは、助成金を交付して「一般の」高齢者のインフルエンザワクチンを推奨する有用性はないようです。

なぜ、こういうデータがあるのに、一般の高齢者への接種が助成金で行われているのか、政治家の票集めのためでなければよいのですが・・・

それともまた、ワクチンを生産している製薬会社との「あれ」ですか?

その助成金を小児の福祉に回した方が有用な気がします


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緑茶でうがいすると発熱を68%抑制

2012年03月29日 | 感染症
以前
水でのうがいは風邪を予防する、イソジンでは効果なしという結果をご紹介しました。

最近以下の記事がありましたので、その論文を実際に読んでみました。

緑茶うがいの風邪予防証明 浜松医大の研究グループ
緑茶によるうがいを続けた子どもは、うがいをしない子に比べて7割近くも風邪になる割合が少なかったとする研究成果を、浜松医科大健康社会医学講座の野田龍也助教(35)=公衆衛生学=らの研究グループが1月12日に疫学の国際専門誌「ジャーナル・オブ・エピデミオロジー」電子版に発表した。子どもに対する緑茶うがいの風邪予防効果を証明した研究は世界初という。野田助教らは福岡市の保育園の協力で大規模な疫学調査を行い、2~6歳の子ども約2万人を1日1回以上うがいする子としない子に分け、20日間で37・5度以上の発熱が何回あったか調べた。さまざまな別要因を除いて分析した結果、緑茶うがいをする子はうがいをしない子に比べ、風邪を引く割合が68%も少なかった。ほかにも水道水や食塩水でうがいをした子どもを調べたところ、水道水は30%、食塩水は50%と風邪を引く割合が低かったが、効果は緑茶が一番だった。野田助教は「はっきりしたメカニズムは分からない」とした上で「うがいには口の中の細菌を付着しにくくする効果があり、お茶に含まれるカテキン成分の殺菌作用がさらに効果を大きくさせているのでは」と分析。「これまで、子どもに対するうがいの効果を証明する研究成果がなく、予防効果に懐疑的な見方があった。今後は、緑茶うがいを安全で簡単にできる風邪予防法として普及させてよいのでは」としている。
(静岡新聞)


Gargling for oral hygiene and the development of fever in childhood: a population study in Japan.
J Epidemiol. 2012;22:45-9.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

福岡市の145の幼稚園・保育園の19595人の2~6歳の園児が対象となりました。それぞれにつき20日間、「発熱」、「病気による欠席」の有無とうがいの状態について調査されました。

結果は、右図で、model 1は年齢のみで補正した場合、model 2は年齢、幼稚園・保育園の規模、地域で補正した場合ですから、model 2を見ればよいと思います。うがいをしない場合の「発熱」と「病気による欠席」を1とすると、水道水で1日1回以上うがいした場合、発熱は0.7、すなわち30%減少しました。食塩水では統計学的に減少したとはいえず、緑茶で1日1回以上うがいした場合、発熱は0.32、すなわち68%減少しました。スポーツドリンクでは54%減少しました。このような年齢全体の解析では、病気による欠席は、どれでうがいしても減少しませんでした。

うがい全体を年齢別に解析すると、左図のように、4歳と5歳の園児では「病気による欠席」は、それぞれ32%、41%減少しました。

みなさん、水道水よりも緑茶でうがいすると効果が上がります。

私は、うがいした緑茶を、そのまま飲み込んだ場合はどうなんだろう?とくだらない疑問をいだいています。

この研究は、公の研究費で行われました。東京大学は東京電力からの研究費で研究していていましたが、この研究は緑茶製造会社など企業からの研究費でなされたものではありません。

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風邪は若い人ほど罹りやすい

2012年01月30日 | 感染症
1か月で診た患者400人、学会発表2回、論文提出3編と、多忙にしていたら5年ぶりに風邪に罹ってしまいました(発熱37.5℃)
5年ぶりって・・、けっこう歳です。その理由は?というわけで、、

風邪に関してはその名も「風邪」と題した有名なレビューがありますので、お伝えしたいと思います。

The common cold.
Lancet. 2003;361:51.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

上の図にあるように、一人が一冬に風邪にかかる回数は
1歳以下では平均6回
1歳~2歳では5.7回
3歳~4歳では4.7回
5歳~9歳では3.5回
10歳~14歳では2.9回
15歳~19歳では2.6回
20歳~24歳では2.9回
25歳~29歳では2.8回
30歳~39歳では2.5回
40歳~49歳では1.9回
50歳~59歳では1.8回
60歳以上では1.6回です。
生後早い時期はもちろんですが、20歳~24歳でピークをむかえて、その後は減少しています。高齢になるほど過去の免疫が蓄積されていくので、罹りにくくなっていることがわかります。
これは以前お伝えしたインフルエンザと同じ傾向です。

原因となるウイルスはそれほど多いわけではなく、この論文の中では頻度の高い順にその特徴が示されています。

ライノウイルス(30~50%)、普通感冒
コロナウイルス(10~15%)、普通感冒
インフルエンザウイルス(5~15%)、高リスク群の肺炎
RSウイルス(5%)、小児の肺炎と細気管支炎
パラインフルエンザウイルス(5%)、小児クループと下気道疾患
アデノウイルス(5%)、普通感冒と咽頭炎
エンテロウイルス(5%)、急性発熱と咽頭炎

病院で処方される総合感冒薬の代表的なものにはPL顆粒という薬があって、プラセボ二重盲検試験では鼻汁、鼻閉、咽頭痛、頭痛に対するNNT(患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数。つまり何人に一人がその薬の恩恵を受けるかという指標です)はそれぞれ5.5人、2.5人、5.6人、5.3人です。意外に効いていないようです。

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インフルワクチン有効性の証拠は不十分

2012年01月13日 | 感染症
先日、インフルエンザワクチンは効くことは効いてはいるのだけれど、意外に不十分であることをお伝えしました。

今月、どれぐらい不十分なのかという研究結果がランセットに発表されましたのでお伝えします。

Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and meta-analysis
Lancet Infect Dis. 201212:36.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

インフルエンザワクチンの有効性を調べたこれまでの研究の中で、精度が高いRT-PCR法かウイルス培養でインフルエンザだと確認している信頼性の高い31件の研究が総合的に解析されました。

12シーズンに渡る解析の結果、米国において7歳以下で弱毒性ワクチンを受けた小児ではインフルエンザの予防効果は83%と高かったのですが、米国で90%を占める不活化ワクチンを受けた健康成人全体では予防効果は59%と不十分でした。予防効果が証明されない研究もありました。

上の図のAは18歳~64歳の不活化ワクチンの調査結果です。左の方の数字を見ると、一番上の研究ではインフルエンザの罹患が接種522人のうち10人、非接種206人のうち16人ということがわかります。右の棒グラフは有効率が65%ぐらいであることを示しています。

上から2つめ、3つめ、6つめの研究では棒グラフが中心の縦の点線を挟んでいますから、インフルエンザワクチンの有効性は証明されていない事を示しています。一番下は総数です。

上の図のBは7歳以下の弱毒化ワクチンの調査結果です。Bの一番上の研究を見ると、インフルエンザの罹患は接種1070人のうち14人、非接種532人のうち94人と接種がかなり有効であることがわかります。ただしこれは、日本では使用されていない弱毒性ワクチンの場合です。

この論文の著者らは、「現在のワクチンより交叉防御効果が高く迅速に製造できるワクチンの開発が急務である。そのようなワクチンが開発されるまでは、現状では最善である現行のワクチンを使用する以外にない」と結論付けています。

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意外に効いていなかったインフルエンザワクチン

2011年12月30日 | 感染症
そろそろインフルエンザの季節ですが、最近「日本臨床内科医会会誌」で、昨シーズンのインフルエンザワクチンの有効性が16道府県の調査をまとめ発表されました。

「日本臨床内科医会会誌の目的は、会員の日常診療に直接役に立つ情報を簡潔にわかりやすく伝えることにあります。」と書かれてありますので、その結果をご紹介したいと思います。

「インフルエンザの流行状況とワクチン、抗インフルエンザ薬の有効性について」
日本臨床内科医会会誌 2011;26:408.
(インパクトファクター☆☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この調査は前向き調査ですから信頼性は高いといえます。インフルエンザに罹患したかどうかは迅速試験でA型またはB型インフルエンザ陽性と判明した場合とされました。全部で1,194人の発症が調査されました。調査対象人数は書かれていませんが、1,194人が2.7%ということですから、総計約44,222人と計算されます。

上の図は年齢別のインフルエンザの発症率ですが、統計学的にワクチンが有効であったのは50~59歳でした。その他の年齢層ではワクチン接種群と非接種群で発症率に差は認められませんでした。20~29歳あたりではあと少しの差で有効と判断されたのでしょうが、そういうことを言い出すと、0~9歳はワクチンを接種した方が発症率は高くなってしまうと言わざるを得なくなるので、あくまでも統計学的にちゃんと差が出たところだけで結論するべきです。

ワクチンの有効性はH3N2やB型が多かった小児では認められず、H1N1主体の成人の一部では有効であったと考察されています。

このように、そのシーズンのワクチンの有効性は、どの型のウイルスを標的にしてワクチンを製造するかに左右されます。少なくとも昨シーズンはあまり効果がなかったと言わざるを得ません。しかし逆に、この結果により今後もワクチン接種には期待しない方がよいと言えるわけではありません。

接種群と非接種群で発症率にあまり差がなかった理由の1つとして、私が個人的に推測することは、これまで感染症によくかかった子ども(体が弱いなどと表現されたりもしています)が「体が丈夫な」子どもよりも多く予防接種を受けたのではないかというバイアス(偏り)です。なぜなら、インフルエンザの予防接種は国民全員が強制的にうけるワクチンではなく、任意で受けているワクチンだからです。

私の息子のように、知恵熱、はしかなど一通りの感染症にはかかりました(顕性化した)が、その後その他の感染症が一度も顕性化したことのない「体が丈夫な」子どもは、最初からインフルエンザワクチンを接種していないのではないかということです。現に私の息子は今シーズンもインフルエンザにはかからないだろうという推測のもとに、数千円のワクチン代がもったいないためインフルエンザワクチンを接種していません。

従って、実はワクチンは有効で、体の弱い子どもたちが率先して接種を受け、接種を受けていない「体が丈夫な」子どもたちと同じぐらいの発症率まで改善されたという可能性が否定できないわけです。

あと、ワクチンの接種によってインフルエンザの症状が接種しない場合よりも軽く済んだという「有効性」はあるかもしれません。

国民は代金を支払ってワクチン接種を受けているわけですから、こういうことはしっかりと国民(ワクチン購入者です)に伝えられるべきです。

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16型/18型のヒトパピローマウイルスワクチンは妊娠を阻害しないし流産も増やさない

2010年12月31日 | 感染症
子宮頸がんワクチンで不妊になるという、これはもう科学ではなくて「デマ」というレベルなんですが、そんなことはないことが証明されています。

Risk of miscarriage with bivalent vaccine against human papillomavirus (HPV) types 16 and 18: pooled analysis of two randomised controlled trials
BMJ. 2010 Mar 2;340:c712. doi: 10.1136/bmj.c712

この研究では、15~25歳の健康な女性26,130人が調査対象とされました。これらの女性を子宮頸がんワクチンを接種する群13,075人と、A型肝炎ワクチンを接種する群13,055人に分けて最初の接種から4年間観察されました。

結果は、妊娠したのは子宮頸がんワクチンを接種する群で2,346人、A型肝炎ワクチンを接種する群で2,364人と差がなく、流産は子宮頸がんワクチンを接種する群で11.5%、A型肝炎ワクチンを接種する群で10.2%であり、統計学的解析で両群に差はありませんでした。

↓原文が無料で見られますから、興味のある方は読んでみて下さい。また、「デマ」を流す方への反論に使用して下さい。
http://www.bmj.com/content/340/bmj.c712.full.pdf

↓今月発売された岩田医師の著書の中にも書いてありますが、私たち科学者にはこういう「デマ」を一つ一つ根気よく修正する義務があります。
予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える (光文社新書)

以前から何度も繰り返していますが、予防接種には数10万人~数100万人に1人の割合で、重篤な副作用が発生します。国民全体として、副作用の人数よりワクチンの接種によって死亡を免れる人数が十分多いためにワクチン接種が行われているのであり、数人が副作用で重篤な状態になってしまうことは周知のことです。

ちなみに交通事故で死亡する確率は現在2万6千人分の1ですが(確実に死亡しています)、交通事故で死亡する確率が2万6千人分の1あるから「道路を歩くとか車を運転するなんてもってのほか」と言う人はいないと思います。

ここに、子宮頸がんワクチンは安全か?というアンケートがありますが、数10万人~数100万人に1人の割合で、重篤な副作用が発生するのですから、重篤な副作用が発生してしまった人からみれば「安全」ではなかったのはあたりまえのことです。要は「有効」であるかどうかです。
ここには以下のような極めて感情的な意見がめだちます。
「騙されるな!我が娘には絶対に受けさせません。」

一方で
「子宮頸がんの形成は十数年かかるのに対し、ワクチンの長期的効果と副作用は不明であるため」
「メディアしっかり国民に真実を伝えて。リアルタイムじゃなきゃ意味なし」
という情報を求めている意見もありますが、私のブログを見ていただければ少しは参考になるかと思います。


そこでアンケートです。
子宮頸がんワクチンは有効と思いますか?

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任意のワクチンに関する議論

2010年12月27日 | 感染症
先日、NHKで任意ワクチンについて支離滅裂な番組が放映されていました。

冒頭で、国や自治体の財政状態の悪化によって全員を補助することもできない状態の中で、任意ワクチンの値段が高すぎて子供に接種させてやることができない主婦を取材して、今後貧富の差で健康の格差がうまれてしまう可能性があることを伝え、任意ワクチン接種に賛成の意向を主張しながら、その一方で任意ワクチンを接種して麻痺になってしまった人を取材し、「そのような副作用を知っていたらワクチンなど接種しなかった」と言わせ、任意ワクチン接種に反対の立場もとっている。

「そのような副作用を知っていたらワクチンなど接種しなかった」、はたしてそうでしょうか。

ワクチンの重篤な副作用は数10万~数100万分の1で必ず発生します。国民全体として、副作用の人数よりワクチンの接種によって死亡を免れる人数が十分多いためにワクチン接種が行われているのであり、数人が副作用で重篤な状態になってしまうことは周知のことです。番組の中で取材されていたワクチンを接種して麻痺になってしまった人は、たとえ副作用を知っていたとしてもその可能性が数10万~数100万分の1であればワクチンを接種していたでしょう。つまり「そのような副作用を知っていたらワクチンなど接種しなかった」は、「あと知恵バイアス」なのです。

それなのに1970年代、ワクチンの接種で麻痺になってしまった人が国を訴え、裁判所が国の敗訴の判決を出したので、当時の厚生省は「ワクチンの接種によって死亡を免れる人」よりも「副作用で麻痺になる人」を重要視して、個人の裁量により責任を担っていただく方法に変えてしまったのです。国民全体を考えれば「ワクチンの接種によって死亡を免れる人」を増やす方がいいのは明らかです。

「副作用で麻痺になる人をなくす」は各論、「ワクチンの接種によって死亡を免れる人を増やす」は総論と言うこともできます。


↓現在、以前の世論の揺り返しとして、このようなサイトもあります。
「VPDを知って、子供を守ろう」
http://www.know-vpd.jp/

さて冒頭の、国や自治体の財政状態の悪化によって貧富の差で健康状態の差がうまれてしまう話に戻ります。それでは、取材されていたその主婦はワクチンの財源を確保するために「消費税」を福祉に使用する「福祉税」と限定しても、消費税15%への増税を受け入れるかというと、それにも「反対」するでしょう。結局現在の日本の財政状態では、どこで国民が我慢するかというだけのことなのです。

ともあれ、ワクチン接種によってその疾患が回避できた割合と各種副作用の割合を各ワクチンについて国民に詳細に伝えて、その上で接種を希望する国民にはある程度の公費を負担する方法がベストと考えられます。本ブログではそのような立場から以前よりワクチン接種の有用性と問題点をお伝えしてきました。

以前お伝えしたワクチン接種に関する記事を列挙します。

肺炎球菌ワクチンの有効性

小児に対するインフルエンザワクチンの有効性

高齢者に対するインフルエンザワクチンの有効性

インフルエンザワクチンの副作用による死亡率

小児科医は自分の子供のワクチンをどうしているか

16型/18型のヒトパピローマウイルスワクチン研究の評価項目

はしかワクチンの重要性

子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。接種者の大半が思春期の女子で、このワクチン特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。
(読売新聞より引用)

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↓アンケートを実施しています。ほかの人の意見がわかります。
任意の予防接種は有益と思いますか?
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風邪の対症療法

2010年12月13日 | 感染症
風邪の季節です。今回は風邪の対症療法についてのまとめです。

グレードA:強く勧める
グレードB:やったほうがよい
グレードC1:やってもよい
グレードC2:やらないほうがよい

1、鼻水、くしゃみに対して
抗ヒスタミン薬を短期間回数を限って使用し、長期使用を避ける。
(グレードC1)

2、咽頭痛に対して
うがい薬、トローチは症状の緩和に有効である。
(グレードA)

3、発熱に対して
発熱は生体防御の1つであり、薬剤の安易な使用をやめる。苦痛が強く、解熱させるメリットが薬剤の使用によるデメリットを上回る場合にのみ相対的適応とする。原則として屯用での使用が望ましい。小児にはアセトアミノフェンを用いる。
(グレードC1)

4、咳、痰に対して
咽頭痛、咽頭不快感を伴う咳に去痰薬を使う。
(グレードA)
咳を伴う痰に去痰薬、喘鳴や呼吸困難を伴う咳に気管支拡張薬を用いる。
(グレードB)
非麻薬性鎮咳薬を副作用に十分注意して用いる。
(グレードC1)
麻薬性鎮咳薬(リン酸コデイン、メテバニール、リン酸ジヒドロコデイン)を副作用に十分注意して用いる。
(グレードC2)

5、扁桃腫大に対して
高熱を伴ったり膿性分泌物が認められる場合には、細菌感染症の合併を考え。抗菌薬を投与する。
(グレードA)

小児の風邪症状に対するガイドラインに関して、ここに詳しく載っています。

やはり、抗菌薬も解熱剤も安易に使ってはいけないということです。
それから、このガイドラインでのうがい薬の使用の推奨は、症状の緩和という目的のようで、以前「風邪の予防には水でうがいを イソジンでは予防効果なし」でお伝えしたように、イソジンのうがい薬の風邪の予防効果はないようです。


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16型/18型のヒトパピローマウイルスワクチン研究の評価項目

2010年09月13日 | 感染症
以前、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンで子宮頸ガンが予防できるをお伝えしましたら、


「子宮頸癌を予防するかどうかのテストもしていないワクチンは、製薬業者のボロ儲け目当ての詐欺兼薬害です」とのコメントをいただきましたので、少し調べてみました。

通常、ヒトパピローマウイルの感染から前がん病変の進行まで数年、前ガン病変から子宮頸ガン発症までは十数年という年月がかかりますから、ワクチンの接種群と非接種群で子宮頸ガンの発症に違いがあるかを比較することには十数年かかります。

それに、そういった研究の遂行には、ガンになるまで何の処置も受けずに放置することへの倫理的問題があります。

そこで、2003年にWHOは専門家とオピニオン・リーダー(各国の政府省庁関係者)にヒトパピローマウイルスワクチンの有効性を評価するための代替評価項目のコンセンサスを求めました。

その結果、

(1)中等度以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)を子宮頸ガンの主要な代替評価項目にすべきということ
(2)発がん性ヒトパピローマウイルスの同型への持続感染(6ヵ月か12ヵ月)も前がん病変と子宮頸ガン発症の重要なリスクファクターであること

というコンセンサスが

Efficacy and other milestones for human papillomavirus vaccine introduction.
Vaccine 2004;23:569.

で発表されています。確かに倫理的問題によりワクチンがガンの発症を抑制するかの直接的な研究結果はありませんが、ゼチーアのように「効果がない」という研究結果はありません。

また、日本人の場合16型/18型のヒトパピローマウイルス感染率は高くないいう意見もありましたが、最近の日本の女性2,282人の調査で16型/18型ヒトパピローマウイルスの感染は子宮頚ガンの67%で原因となっていたという結果が報告されています。

Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer.
Cancer Science 2009;100:1312.

(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

安全性はA型肝炎ワクチンと同じです。ワクチンには100%安全ということはありませんが、インフルエンザワクチンの副作用による死亡率でお伝えしたように、ワクチン接種は「接種による有益性」と「副作用」を天秤にかけて考慮されるべきものです。

「ワクチンの副作用で10人が死亡したから全体への接種を中止したら、接種していれば防ぐことができた死亡が100人増えてしまった」場合、ワクチンは有効と考えるべきです。

要するに、「作為で10人死亡するのは許せないが、不作為で100人死亡するのは許せる」のが真か偽かということです。これは以前ご紹介した、「ハーバード白熱教室」の第1回目の講義でも取り上げられている課題です。

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はしかワクチンの重要性

2010年08月13日 | 感染症
(m3より改変引用)
はしか(麻疹(ましん))の予防接種率が伸び悩んでいる。国は接種率95%以上で人口100万人当たりの感染者が1人未満になる「排除」の状態を目指している。だが、09年度の接種率は1歳の定期接種では93・6%と目標に近いものの、13歳と18歳を対象にした追加接種では、それぞれ85・9%、77・0%にとどまった。幼少期のはしか感染には、難病発症の可能性があり、はしかの早期根絶には接種率の向上が鍵を握っている

国立感染症研究所によると、はしか患者は高校や大学で流行した07年に子どもだけで計3133人、08年は成人も含めて計1万1012人に上った。今年の患者数も8月4日現在計326人で、人口100万人当たり約2・7人と流行が続いている。

SSPEは特に学童期に発症することがある中枢神経疾患だ。一度感染したはしかウイルスが脳に潜伏後、SSPEウイルスに変異して数年後に発病。原因は不明で治療法はなく、ゆっくりと神経症状が進んで意識がなくなり、やがて死に至る。発生頻度は、はしか患者10万人に1人とされる。

はしかは接触や飛沫(ひまつ)、空気のいずれでも感染する。はしかウイルスの直径は100-250ナノメートル(ナノは10億分の1)で、飛沫核の状態で空中を飛び、それを吸い込むことで感染するため、マスクでの予防は難しい。唯一の予防方法は、ワクチン接種ではしかに対する免疫をつけておくことだ。

国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長によると、予防接種をしない人が増えると感染が広がる。はしかワクチンは通常、1回接種すれば95%以上の人に免疫ができる。毎年、95%程度の接種率を保てば、患者発生はほぼゼロに抑えられる。

岡部センター長は「はしか患者が20万-30万人いれば、そのうち数人がやがてSSPEを発病する。だが患者が1000人を切れば、この病で亡くなる人がいなくなることにつながる」と説明する。

沖縄では90、91年にはしかが流行した。原因は不明だが、高頻度でSSPEが発生している。SSPEを発症した康太郎さんもこの流行ではしかに感染した。母陽子さん(52)は「はしかの怖さを知らず、予防接種をしなかった姉から(接種前の)弟の康太郎に感染してしまった。いつも後悔している」と話す。
(以上、引用)


インフルエンザが飛沫感染であるのに対して、はしかは空気感染(通常のマスクで予防できない)であることが重要ポイントです。


麻疹ワクチン定期接種対象者 
第1期 1歳以上2歳未満
第2期 小学校入学前年度の1年間にあたる子ども
第3期 中学1年生に相当する年齢
第4期 高校3年生に相当する年齢
※第3、4期は08年度から5年間の期限付き措置
※定期接種期間中は無料。厚生労働省は2回接種することを勧めている


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16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンで子宮頸癌が予防できる

2010年07月23日 | 感染症
4年ほど前、子宮頚部ガンの原因ウイルスに対するワクチンで子宮頚部ガンの発症を減らすことができることをお伝えしました。

日本でも今年やっとこのワクチンが一般の医療機関で使用可能となり、女子中学生への接種が推奨されています。商品名はサーバリックスです。しかし約1%の自治体のみが公費で行っているだけで、ほとんどの場合は私費で接種しなければなりません。3回分(初回,初回から1カ月後,初回から6カ月後)で約4万円かかります。

この論文によると16型/18型ヒトパピローマウイルスの感染が4年間で、ワクチン接種群で0.9%、非接種群で14.8%と13.9%抑制できています。

その後、この報告よりもさらに大規模でしかもDNA解析を加えた研究結果が発表されています。
Efficacy of a prophylactic adjuvanted bivalent L1 virus-like-particle vaccine against infection with human papillomavirus types 16 and 18 in young women: an interim analysis of a phase III double-blind, randomised controlled trial.
Lancet. 2007;369:2161.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

この研究では15歳から25歳までの女性18,644例をランダム化し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンを受ける群(n=9,319)とA型肝炎ワクチンを受ける群 (n=9,325)に分け、試験の0カ月、1カ月、6カ月の時点でワクチンが投与されました。

使用された16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチンはHavrixワクチン(GlaxoSmithKline Biologicals社製)を基にした試験製剤でした。18,644例のうち、細胞診の結果が高度異形成であった88例と、結果を紛失した31例を除外し、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン接種群9,258例とA型肝炎ワクチン群9,267例が解析されました。

ワクチン投与をした対象には、試験採用時に発癌性ヒトパピローマウイルスに感染している者および細胞形態が低度異形成の異常を示した者も含まれました。子宮頚部の細胞診と生検では、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて14種類の発癌性ヒトパピローマウイルスについて分析されました。

追跡期間は14.8 ± 4.9カ月でした。結果は、16型ヒトパピローマウイルスまたは18型ヒトパピローマウイルスのDNAを伴う子宮頚部の異型性数は、16型/18型ヒトパピローマウイルスワクチン群が2例であったのに対し、対照群(A型肝炎ワクチン接種群)では21例でした。これら23例のうち14例(ワクチン群が2例と対照群が12例)では、発癌性ヒトパピローマウイルスの型が複数存在していました。

ヒトパピローマウイルスの16型/18型DNAを持つ子宮頚部の異型性に対するワクチンの有効性は90.4% (信頼区間は 53.4-99.3%、P<0.0001)でした。16型/18型ヒトパピローマウイルスの持続性感染に対する有効性は6カ月で80.4%、12カ月で75.9%でした。安全性は両群で統計学的に差がありませんでした。

論文の著者は「ヒトパピローマウイルス感染と子宮頚癌の高リスクには貧困が強く連関しており、ヒトパピローマウイルスワクチンのような高度に有効な介入手段を貧困生活者が利用できなければ、格段に格差が広がる可能性がある」とも述べています。


ワクチン接種によって、ヒトパピローマウイルス感染は4年間で13.9%予防され、そのウイルスによって子宮頚部の細胞がガン細胞に近づくのは1.2年で0.1%予防されるということです。子宮頸ガンの発現は数十年かかることが少なくないので、このような短期間では結論は出せませんが、仮に12年で(接種は繰り返す必要がないので期間の概念は費用の算出には不要です。あくまでも4万円です)1.0%の予防が可能なら、4万円÷1.0%=400万円で1人の罹患が予防できることになります。

現在、日本では1年間に女性約4,000人に1人が罹患し(0.025%:20年だと200人に1人ということです)、その4人に1人が死亡しています。

罹患者の4人に1人が死亡しているということは、400万円x4=1,600万円で子宮頚癌による死亡を予防できることになります。

これをコレステロールの治療の場合と比べてみましょう。

一般の「悪玉コレステロールが高い人」→心筋梗塞の発症率は6年間で2.7%→「悪玉コレステロールが高い人」は疾患と見なされる→1人の発症(死亡ではない)予防に3,000万円必要→悪玉コレステロールを改善させるのに健康保険が効く

「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」→子宮頚ガンの発症は6年間で0.15%→「ヒトパピローマウイルス感染リスク者」は健康保険で予防対象と見なされない→1人の子宮頚ガンによる死亡を予防するのに1,600万円でよい→ヒトパピローマウイルスワクチンには健康保険が効かない

一般の「ピロリ保菌者」→胃ガンの発症率は5~8年間で平均3%→「ピロリ保菌者」は疾患とみなされない→1人の発症予防に46万円でよい→しかし胃潰瘍か十二指腸潰瘍(先日、少しだけ適応が拡大されました)でないと保菌を改善させるのに健康保険が効かない

コレステロールの治療がいかに優遇されているかが一目瞭然です。



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国民は新型インフルエンザワクチンの在庫整理要員

2010年06月30日 | 感染症
先日、日本臨床内科医会から送られてきた患者への啓蒙活動用のポスターです。提供:グラクソ・スミスクライン株式会社だそうです。

私は、どうして今になってこんなポスターが送られてきたのか不思議でした。

「新型インフルエンザワクチンを接種したひとは約20%(2,400万人)で、国民の80%はまだ接種していないのが現状です。ワクチンを接種することであなた自身だけでなく、ご家族や友人など、周りの方に対しても新型インフルエンザの感染を防ぐことにつながります。」と書いてあります。

以前、お伝えしたように

基礎疾患のない子供はほとんど重症化しない。
学童の20%に不顕性感染(感染しても症状がなく、免疫を獲得した)が認められている。


40歳以上の者の新型インフルエンザの感染確率は驚くほど低い。
インフルエンザに罹患することは、罪悪ではない。むしろ次の感染を防ぐ。


のに、それでもなぜ新型インフルエンザワクチンを接種しなければいけないのでしょうか?理由がよくわかりません。そういえば、このポスターには「新型インフルエンザの感染を防ぐことにつながります」と書いてあるけれど、「有益である」とは書かれていません。うまくごまかしたものです。でも、ワクチンを接種してもインフルエンザにかかる人は沢山いますから(インフルエンザワクチンの小児への有効率は20~30%)、「新型インフルエンザの感染を防ぐことにつながります」というもの半分ウソです。

グラクソ・スミスクライン株式会社は、このように国民を騙すようなことをしてはいけません。そして日本臨床内科医会もそれを後押ししてはいけません。

しかし、逆に国民の20%しか接種していないということは、国民の判断が正しいということであり、頼もしく感じました。(新型インフルエンザワクチンに限ったことです。高齢者に肺炎などを併発させるこれまでのインフルエンザのワクチンは、高齢者はなるべく多くの人が接種したほうがいいです)

そういえば、最近こんな報道がありました。

輸入ワクチン853億円「無駄」に=ノバルティス社製も一部解約―新型インフル用
厚生労働省は6月28日、ノバルティス社(スイス)と輸入契約を結んだ新型インフルエンザ用ワクチン2500万回分のうち、未納入の約838万回分(約107億円)を解約することで同社と合意した。ただし既に製品化されているため、違約金約92億円を同社に支払う。使われる見込みがなく、余剰となった輸入ワクチンへの支出額は、英グラクソ・スミスクライン社(GSK)製と合わせ約853億円となる。

ノバルティス社製ワクチンは、約1660万回分(約214億円)が納入済みだが、実際に使われたのは2465回分。すべて30日までに使用期限を迎えるため、同省は廃棄を決める一方、未納入の分について解約交渉を進めていた。

輸入ワクチンをめぐっては、GSKとも交渉したが、5032万回分(約547億円)は解約できなかった。同社製ワクチンもほとんど使用されておらず、今後需要が増す見込みも少ないとみられることから、両社に支払った計約853億円は結果的に「無駄」になる。
(時事通信より引用)

それで私は、この時期にこのポスターが突然送られてきた理由がわかりました。

厚生労働省が日本臨床内科医会にこのようにしろと通達を出して、グラクソ・スミスクライン株式会社がそれに一役買ったわけですね。


グラクソ・スミスクライン株式会社(厚生労働省も?)は、国民を新型インフルエンザワクチンの在庫整理要員としか見ていないようです。

一部の製薬会社は、儲けるためなら平気で国民をだましますから注意が必要です。

今回の場合はむしろ厚生労働省の過失のほうが大きいかな。


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