「ガスター10」のコマーシャルに「使用上の注意をよく読んでお使いください」という文句がありますね。
ガスターはH2ブロッカーといって胃酸の分泌を抑える薬で、胃潰瘍の多くは過剰に分泌された胃酸が胃粘膜を攻撃することにより発症しますので、胃潰瘍の治療に用いられています。またプロトンポンプ・インヒビター(PPI)と呼ばれる薬剤はH2ブロッカーよりもさらに強力な胃酸分泌抑制作用があり、同様の目的で使用されています。
さて、「使用上の注意をよく読んでお使いください」というただし書きは、胃の痛みの原因が胃潰瘍ではなく食道ガンや胃ガンの場合、医者にかかって胃カメラをする前にこの薬を個人的に購入して内服し、一時的に痛みがなくなったり表面が治癒したように見えることで食道ガンや胃ガンの発見が遅れる、あるいはガンを見落とすかもしれないという注意でもあります。
本当にそうなのでしょうか。、今回は胃の痛みがある場合、胃カメラを施行する前に胃酸分泌抑制剤で胃痛を治すと食道ガンや胃ガンの発見が遅れて寿命が短くなるのかを大規模な調査で示した論文をご紹介します。
The risk of missed gastroesophageal cancer diagnoses in users and nonusers of antisecretory medication.
Gastroenterology. 2005;129:1179.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
1993年から2002年までデンマークで41,577人(平均年齢56歳)に69,674回の胃カメラが施行され全員が調査対象となりました。
なんらかの症状があり最初に施行された胃カメラで461人が食道ガン(220人)あるいは胃ガン(241人)と診断されました。
ガンと診断されなかった方はその後平均4.1年間(0年~10年)引き続き調査されました。調査期間に52人がさらに食道ガン(26人)あるいは胃ガン(26人)と診断されました。
1年間で食道ガンや胃ガンになる確率は10万人あたり45人で、男性であるほど高齢であるほど確率は高くなりました。年齢別にみると50歳以下では7人、50~69歳では63人、70歳以上では103人、男性57人、女性34人でした。
さて、初回の胃カメラでガンと診断されなかった27,368人のうち9,390人は初回の胃カメラの6カ月前までにH2ブロッカーやプロトンポンプ・インヒビター(PPI)が処方されていました。
これらの群と処方されていなかった群を比較したところ、胃カメラの前に処方されていた群では1年間で食道ガンや胃ガンになる確率は10万人あたり46人、処方されていなかった群で44人と差は認められませんでした。この結果は両群間の年齢や男性の割合の違いを考慮して補正したあとでも同様でした。また、H2ブロッカーとプロトンポンプ・インヒビターを分けて解析しても差は認められませんでした。
つまり、「胃の痛みがある場合など、胃カメラを施行する前に胃酸分泌抑制剤で胃痛を治しても食道ガンや胃ガンの発見が遅れることはない」ということです。
いいかえれば、胃酸分泌抑制剤で治癒したようにみえるガンの表面を胃カメラが見落とすことはないし、潰瘍のように治るものは治り、ガンの場合は胃酸分泌抑制剤を内服しても痛みなどのサインは消えず最終的には診断に至るということです。
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ガスターはH2ブロッカーといって胃酸の分泌を抑える薬で、胃潰瘍の多くは過剰に分泌された胃酸が胃粘膜を攻撃することにより発症しますので、胃潰瘍の治療に用いられています。またプロトンポンプ・インヒビター(PPI)と呼ばれる薬剤はH2ブロッカーよりもさらに強力な胃酸分泌抑制作用があり、同様の目的で使用されています。
さて、「使用上の注意をよく読んでお使いください」というただし書きは、胃の痛みの原因が胃潰瘍ではなく食道ガンや胃ガンの場合、医者にかかって胃カメラをする前にこの薬を個人的に購入して内服し、一時的に痛みがなくなったり表面が治癒したように見えることで食道ガンや胃ガンの発見が遅れる、あるいはガンを見落とすかもしれないという注意でもあります。
本当にそうなのでしょうか。、今回は胃の痛みがある場合、胃カメラを施行する前に胃酸分泌抑制剤で胃痛を治すと食道ガンや胃ガンの発見が遅れて寿命が短くなるのかを大規模な調査で示した論文をご紹介します。
The risk of missed gastroesophageal cancer diagnoses in users and nonusers of antisecretory medication.
Gastroenterology. 2005;129:1179.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
1993年から2002年までデンマークで41,577人(平均年齢56歳)に69,674回の胃カメラが施行され全員が調査対象となりました。
なんらかの症状があり最初に施行された胃カメラで461人が食道ガン(220人)あるいは胃ガン(241人)と診断されました。
ガンと診断されなかった方はその後平均4.1年間(0年~10年)引き続き調査されました。調査期間に52人がさらに食道ガン(26人)あるいは胃ガン(26人)と診断されました。
1年間で食道ガンや胃ガンになる確率は10万人あたり45人で、男性であるほど高齢であるほど確率は高くなりました。年齢別にみると50歳以下では7人、50~69歳では63人、70歳以上では103人、男性57人、女性34人でした。
さて、初回の胃カメラでガンと診断されなかった27,368人のうち9,390人は初回の胃カメラの6カ月前までにH2ブロッカーやプロトンポンプ・インヒビター(PPI)が処方されていました。
これらの群と処方されていなかった群を比較したところ、胃カメラの前に処方されていた群では1年間で食道ガンや胃ガンになる確率は10万人あたり46人、処方されていなかった群で44人と差は認められませんでした。この結果は両群間の年齢や男性の割合の違いを考慮して補正したあとでも同様でした。また、H2ブロッカーとプロトンポンプ・インヒビターを分けて解析しても差は認められませんでした。
つまり、「胃の痛みがある場合など、胃カメラを施行する前に胃酸分泌抑制剤で胃痛を治しても食道ガンや胃ガンの発見が遅れることはない」ということです。
いいかえれば、胃酸分泌抑制剤で治癒したようにみえるガンの表面を胃カメラが見落とすことはないし、潰瘍のように治るものは治り、ガンの場合は胃酸分泌抑制剤を内服しても痛みなどのサインは消えず最終的には診断に至るということです。
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