医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

小児期の全身麻酔で学習障害リスクの可能性がある

2009年08月07日 | 小児科
二編の医学雑誌の原稿書き、二編の医学論文の提出、三編の医学論文の審査のために更新が遅れていました。

ところで、論文の審査をしていると、「よくもこんな論理回路で医者をやっているなぁ」という論文を時々見かけます。セカンドオーサーの先生も同類のことがありますので、ラストオーサーの上司の先生は、ちゃんとチェックしてあげて下さいね。(でも、ラストオーサーは論文の内容をあまり知らないかもしれませんね)




麻酔薬は幼若動物の脳に異常をもたらすことが、複数の研究で示されています。
ヒトではどうかという研究の結果がこのほど発表されました。

Early exposure to anesthesia and learning disabilities in a population-based birth cohort.
Anesthesiology. 2009;110:703
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)


対象は1976年~1982年にミネソタ州で生まれた5,357人で、4歳までの全身麻酔の詳細と学習障害の有無が後ろ向きに調査されました。

593人が4歳までに1回以上全身麻酔を受けていました。母親の出産年齢、小児の性別、出生児体重によって補正した後の解析では、1回の全身麻酔では学習障害に影響はありませんでしたが、2回全身麻酔を受けた小児(100人)では1.59倍の学習障害のリスク、3回以上全身麻酔を受けた小児(44人)では2.60倍の学習障害のリスクが認められました。

また、学習障害のリスクは、麻酔時間の合計とも関連がありました。

使用されていた麻酔薬は、亜酸化窒素とハロタン(商品名:フローセン、武田薬品)でした。

著者らは、麻酔薬そのものが学習障害に影響を与えているのか、手術自体が精神的に影響しているのか、小児期に手術を受けなければならない小児は、もともとなんらかのリスクを抱えているのかは明らかでないが、迅速な徹底解明が必要だと述べています。


科学的な事実の解明は「なんか変だな?」という疑問から始まるのですから、こういう前置き的な研究はとても重要です。

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コメント (2)
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