医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

CT検査施行率が15年間で3倍になっている

2012年09月02日 | 
久しぶりの医療情報です。そういえば最近、「雑感」ばかりでした。申し訳ありませんでした。

Use of Diagnostic Imaging Studies and Associated Radiation Exposure for Patients Enrolled in Large Integrated Health Care Systems, 1996-2010
JAMA. 2012;307:2400
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

1996年から2010年までに、CT検査とそれによる被ばくがどれだけ増えたかが調査された結果が今年6月に発表されています。

CT検査による被ばくは、CT検査を受けた患者の上位1%では上左図のように生涯被ばく量が100ミリ・シーベルトぐらいに達しています。これは被ばくにより健康被害が出ると考えられる値です。右上図は上位10%の患者の被ばく量ですが、約20ミリ・シーベルトぐらいに達しています。折れ線が5つあるのは全米の5箇所で調査された結果という意味だそうです。

下左図が示しているのは、各年齢別のCT検査の件数です。1つの棒は1996年から2010年での10年単位を表しています。単位は1000人当たりの件数です。75~84歳の場合、1996年には1000人当たり200件だったのが、2010年には500件に増えています。この年齢の患者の2人に1人がCT検査を受けたということを意味します。

年齢が低いとさすがに被ばくのことが考慮され、件数は低いです。

この論文の著者たちは、その原因として、
1、画像装置の進歩
2、訴訟に対する防御的行為
3、患者の希望
を挙げています。

確かに1996年頃は、1件のCT検査に30分ぐらいかかり、緊急でCT検査をオーダーしようとすると放射線技師の先生方から嫌がられたものですが、今では5分で簡単に撮れてしまいます。

そして、もう一つの訴訟を避けるという意味ですが、教師であった親が自分の子供の監督不行届を特別に恥と考え、医者の責任だと転嫁しようとした「割りばし事件」

総論 vs 各論では議論ができない

のようなことに巻き込まれたくないという医者の考えがあります。私自身もこの理由でのCT検査の施行率はかなり増えました。たとえ最終的には裁判で勝訴しても、裁判に費やされる時間の浪費分は戻ってこないからです。

原発事故で、「子供には10ミリ・シーベルトでなくて1ミリ・シーベルトでなければいけないんです」

子供の被ばくは年間1mSv以下でなければならない あいまいな根拠

とえ~~んと泣いてしまった東大の教授の行為は非科学的ですが、CT検査はそれよりも桁違いの被ばくであることは、意外と知られていません。

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コメント (3)
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