医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

睡眠時無呼吸症候群の治療に使用する装置は効果が認められなかった

2015年09月03日 | 循環器
学会で発表するためにロンドンに来ています。膨大な執筆の仕事でしばらくブログの更新を中断していましたが、これを機会に再会したいと思います。

さて、以前もお伝えしていますが、国際学会では世界で最初に大規模な研究の結果が発表されるレイト・ブレイキング・セッションがあります。今回も、昨日世界で初めて明らかになった結果をお伝えします。

睡眠時無呼吸症候群という、寝ている間にいびきがひどくなって喉がつまり息がしばらく止まってしまう疾患があります。睡眠時無呼吸症候群は心不全や心筋梗塞の原因になるので、睡眠時無呼吸症候群を治療するために、睡眠時にマスクを装着して呼吸が止まっている時間がなくなるようにする装置があります。それがAutomated Servo-ventilatorという装置ですが、それではそれを装着すれば心不全による死亡などを減らせるかという研究です。

心臓の駆出率という心臓の動きが正常ではなく(EF<45%)、坂道を登ったときなどの息切れなどの心不全の症状が中等度以上(NYHA IIIとIV)の患者1,325人が、その装置をしようする群と使用しない群にランダムに分けられ、その後5年間の死亡、心不全や心筋梗塞による死亡が比較されました。

結果は、両群で差はありませんでした。心臓の駆出率という心臓の動きが正常ではなく(EF<45%)、坂道を登ったときなどの息切れなどの心不全の症状が中等度以上(NYHA IIIとIV)の人でこの装置を使用している人は一度主治医と相談する必要が出てきました。

例えれば、エンジンのピストンの摩擦を軽減するエンジンオイルがあって、素晴らしいですよといって販売されていたけれど、よく調べてみたら、車の馬力も燃費も向上していなかった、という感じです。

Automated Servo-ventilatorという装置を販売している会社の株はこの発表によって下がりました(そうでなくても、今は経済環境によっても株が下がっていますが)。

この結果はこの論文で発表と同日に掲載されました。興味のある方はこちらをどうぞ。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26323938

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コメント (3)
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