
学会で講演するために北海道に来ています。北海道は涼しくていいですね。
先日、以下のような報道がありました。
「全国民の中で、所得の低い人がどのくらいの割合でいるかを示す「相対的貧困率」が2010年調査で16・0%と、前回(07年調査)より0・3ポイント悪化し、過去最高となったことが、厚生労働省が12日公表した「国民生活基礎調査」でわかった。同省は、所得の低い非正規労働者や、高齢者の増加が要因とみている。今回の調査で「貧困」とされたのは、09年の年間所得が112万円未満の人たち。国民の6~7人に1人が貧困状態であることを示している。1986年調査の貧困率は12・0%で、年々悪化傾向にある。経済協力開発機構(OECD)の00年代半ばの調査では、加盟30か国の平均は10・6%だった。」
(読売新聞より引用)
相対的貧困率ってどうやって算出するのだろうと疑問になり調べてみました。ある国の国民の年間所得が全人口の中央値(平均値ではありません)の半分(今年は112万円)に満たない人の割合だそうです。
日頃から論文の執筆や他人の論文の審査をしていると、適切な統計解析が行われているかとか、結論がその研究の結果のみから導き出されているのかとかが気になって仕方がないのですが、貧困率の算出方法がわかると、またもやこういう指数でものを言っている人たちは「アホなのではないのだろうか」と思うのです。
相対的貧困率はその国が貧困かどうか「なんとなくぼんやり」とはわかるけれど、貧困を知るための指標になど全くならないことがわかります。この算出方法だと、日本国民の収入の中央値の人以上の収入が上昇すれば貧困率が上昇するという現象も起こりえます。他人の収入が上昇すればそれ以下のある分布帯の人々の収入が変わらないのに貧困率は上昇することもありえるのです。
例えば、政府が零細企業の従業員を保護するような政策を施行したとか、たまたま中国でネジを作っている会社が粗悪な鉄鉱石でそれを作ってしまって製造中止になり日本への輸入量が減少し、日本はそのネジを零細企業が作って従業員の給料が上がったとか、例はいくらでも考えられます。
本来、科学論文で繰り広げられる論理では、「Xだから、結果A」の場合、「Yの場合も結果A」であると、結果Aは常に原因Xの指標になり得るとはかぎりません。原因Yも影響している可能性を否定出来ないからです。それに、評価するものの指標を、同じ母集団の同じパラメーターを基準にして計算するなんて、アホすぎます。医学論文でいうなら、「Validation set」と「Testing set」は異なる母集団でなければなりません。
例えば、熊谷、京都、多治見などは最高気温の常連ですが、そこで「暑い指数」を算定するのに、暑い都市を上から順に並べて、下から4分の1に入る都市の気温を基準に熊谷、京都、多治見の気温が何倍か、などと算出しているようなものです。その年の夏が暑ければ、日本でそれほど暑くない都市でも例年よりは暑いでしょう。
これはあえていえば、分布の尖度を表しているにすぎません。貧困率というより、格差指数と呼ぶべき指標です。日本は貧困率5.3%のデンマークより貧困ですか?
「相対的」というのは本来、例えば、(米10キロの値段+じゃがいも10kgの値段+小学校の1か月の給食費+ガソリン100Lの値段+・・・・)X12で計算される値段以下の収入の人の割合とか、評価するものの指標の基準とするのは違う母集団のパラメーターでないと意味はありません。
相対的貧困率なんて、「相対的」と名付けるのも恥ずかしいような指標です。そして、もうお気づきかと思いますが、こんな算出方法の指標を使って国同士を比較できるはずもありません。この「相対的貧困率」は理系の者ではなく、やはり文系の者が考え出した指標なのだろうなと、こんな人たちがこんな指標で国を動かしていていいのだろうかと、かなり心配になった次第です。
IPアドレスからみて、このブログは各省庁の方々もご覧になっていると思いますが、もう少し頭の良い指標を考え出して下さい。お願いします。
なるほど~と思われた方、こちらもぽちっと「ブログランキング」応援よろしくお願いいたします!
先日、以下のような報道がありました。
「全国民の中で、所得の低い人がどのくらいの割合でいるかを示す「相対的貧困率」が2010年調査で16・0%と、前回(07年調査)より0・3ポイント悪化し、過去最高となったことが、厚生労働省が12日公表した「国民生活基礎調査」でわかった。同省は、所得の低い非正規労働者や、高齢者の増加が要因とみている。今回の調査で「貧困」とされたのは、09年の年間所得が112万円未満の人たち。国民の6~7人に1人が貧困状態であることを示している。1986年調査の貧困率は12・0%で、年々悪化傾向にある。経済協力開発機構(OECD)の00年代半ばの調査では、加盟30か国の平均は10・6%だった。」
(読売新聞より引用)
相対的貧困率ってどうやって算出するのだろうと疑問になり調べてみました。ある国の国民の年間所得が全人口の中央値(平均値ではありません)の半分(今年は112万円)に満たない人の割合だそうです。
日頃から論文の執筆や他人の論文の審査をしていると、適切な統計解析が行われているかとか、結論がその研究の結果のみから導き出されているのかとかが気になって仕方がないのですが、貧困率の算出方法がわかると、またもやこういう指数でものを言っている人たちは「アホなのではないのだろうか」と思うのです。
相対的貧困率はその国が貧困かどうか「なんとなくぼんやり」とはわかるけれど、貧困を知るための指標になど全くならないことがわかります。この算出方法だと、日本国民の収入の中央値の人以上の収入が上昇すれば貧困率が上昇するという現象も起こりえます。他人の収入が上昇すればそれ以下のある分布帯の人々の収入が変わらないのに貧困率は上昇することもありえるのです。
例えば、政府が零細企業の従業員を保護するような政策を施行したとか、たまたま中国でネジを作っている会社が粗悪な鉄鉱石でそれを作ってしまって製造中止になり日本への輸入量が減少し、日本はそのネジを零細企業が作って従業員の給料が上がったとか、例はいくらでも考えられます。
本来、科学論文で繰り広げられる論理では、「Xだから、結果A」の場合、「Yの場合も結果A」であると、結果Aは常に原因Xの指標になり得るとはかぎりません。原因Yも影響している可能性を否定出来ないからです。それに、評価するものの指標を、同じ母集団の同じパラメーターを基準にして計算するなんて、アホすぎます。医学論文でいうなら、「Validation set」と「Testing set」は異なる母集団でなければなりません。
例えば、熊谷、京都、多治見などは最高気温の常連ですが、そこで「暑い指数」を算定するのに、暑い都市を上から順に並べて、下から4分の1に入る都市の気温を基準に熊谷、京都、多治見の気温が何倍か、などと算出しているようなものです。その年の夏が暑ければ、日本でそれほど暑くない都市でも例年よりは暑いでしょう。
これはあえていえば、分布の尖度を表しているにすぎません。貧困率というより、格差指数と呼ぶべき指標です。日本は貧困率5.3%のデンマークより貧困ですか?
「相対的」というのは本来、例えば、(米10キロの値段+じゃがいも10kgの値段+小学校の1か月の給食費+ガソリン100Lの値段+・・・・)X12で計算される値段以下の収入の人の割合とか、評価するものの指標の基準とするのは違う母集団のパラメーターでないと意味はありません。
相対的貧困率なんて、「相対的」と名付けるのも恥ずかしいような指標です。そして、もうお気づきかと思いますが、こんな算出方法の指標を使って国同士を比較できるはずもありません。この「相対的貧困率」は理系の者ではなく、やはり文系の者が考え出した指標なのだろうなと、こんな人たちがこんな指標で国を動かしていていいのだろうかと、かなり心配になった次第です。
IPアドレスからみて、このブログは各省庁の方々もご覧になっていると思いますが、もう少し頭の良い指標を考え出して下さい。お願いします。
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ジニ係数を使用した
所得再分配調査等を 提示してますよね
そちらの方が よっぽどまともな
統計かと 存じます