「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

画竜点睛を欠く?『海辺のカフカ 上・下』by村上春樹

2006年01月14日 | 小説レビュー
『海辺のカフカ 上・下』by村上春樹

~「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。
家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。 「BOOK」データベースより


一気に読みましたねぇ! 感想を率直に言えば、上巻の圧倒的な勢いに引き込まれ、「どんなエンディングが!!?」と期待しながら下巻に入りましたが、何となく尻すぼみな感じを受けました。

 ナカタさんは、とっても魅力的でしたし、佐伯さんもとっても魅力的でした。 この二人は、「物語の謎を解明する重要参考人!?」 まさにキーパーソンだったと思います。 しかし、この二人が、ほぼ同時に死んでしまったことで、「ん?」という疑問が残ったままで、(まぁそれはそれで良かったのかも知れませんが)読み終えた後の爽快感は得られませんでした。 少し残念です。

 読み始めてすぐに「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と重なりましたが、やっぱり「世界の・・」の方が、僕には良かったですね。 物語を大きく広げて、最後にキッチリと収束していくやり方が、抜群でした。

 カフカは、同じ時間軸で、現実に起こっている二つの出来事が、交互に展開していき、エンディングに向けて、どのようにリンクさせ、「おおっ!」という瞬間まで持っていくのか?とても興味がありました。

 登場人物は、みんな大好きです。
 「大島さん」、「ホシノ青年」、「ジョニーウォーカー氏(結果的にカフカの父ですが)」、「カーネルサンダーズ氏」、みんな、最高に素敵ですね。 「カワムラさん」は、本当に可哀相でした(ToT)
 
 春樹氏は、魅力的な人物を書くのが、とっても上手です!

 そんな見事な演出によって、物語が綴られ、クライマックスを迎えた時、ナカタさんの身体から「謎の蛇のような物体」がニョロニョロと這い出してきたところで、パンパンに膨らんでいた僕の心は「シュ~~~~」と音を立ててしぼんでしまいましたねぇ。誠に残念です。

「画竜点睛を欠く」って感じでしょうか?

★★★☆3.5です。

 そんな「カフカ」ですが、アメリカでは大変な評判らしいですよ

>「インディペンデント、スペクテーター、ニューヨーク・オブザーバー、
>ワシントン・ポスト(「あなたの猫に読み聞かせて」という推奨の言葉がある)
>でも評価され、米の書評誌カーカス・レヴューズに至っては、
>「まさにノーベル賞にふさわしい傑作」と絶賛している。」

 とのことです。

 そして、ニューヨークタイムズ紙が選ぶ、2005年度の「今年の10冊」に選ばれたようです。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする