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間延びなく読みきれる大作『君の名残を 上・下』by浅倉卓弥

2018年06月08日 | 小説レビュー
その日、彼らの時は歪んだ。
目覚めるとそこは戦乱の前夜だった―。
激動の平安末期を舞台に壮大なスケールで描く衝撃と慟哭の絵巻ここに登場。「BOOK」データベースより


『四日間の奇跡』を読んで、浅倉卓弥氏の作風が好きになりました。

上下巻で1,000頁以上にわたる大作で、読むのに2週間かかりました。

でも、とても読み応えのある作品でした。

誰もが知っている、源義経、源頼朝、木曾義仲、平清盛etc・・・。平安末期から鎌倉幕府の誕生までを描いてます。

そこに浅倉卓弥氏らしく、SF要素を盛り込み、現代に暮らす高校生が平安末期にタイムスリップして、巴御前、武蔵坊弁慶、北条義時となって、それぞれが歴史の重要な脇役を生き抜きます。

読み始めは「んで、どんな結末を迎えるのよ?」と、期待半分で読んでいましたが、途中からは、タイムスリップした高校生という設定を忘れるぐらい、ドップリと歴史小説の海に沈んでいきます。

浅倉卓弥氏の文章は、感情や情景の描写、そして台詞に無駄がなく、それでいて深く美しい世界観を持っています。

歴史を曲げられないことはわかっていても、「義仲頑張れ!」、「義経生き抜け!」、「頼朝ミスれっ!」と、思わずにいられないほど、感情移入してしまいます。

登場人物に味を持たすためのサイドストーリーも巧みで、しつこさや違和感はありません。

最後に、現世に戻ってからのエンディングが用意されていますが、これまた涙を誘う演出があり、読後感も爽やかで、「大作を読みきったぁ〜」という満足感とともに、頁を閉じました。

分厚い本に対して抵抗感がない方にはオススメします。

★★★☆3.5です。