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王とは将とは!『項羽と劉邦 上・中・下』by司馬遼太郎

2018年08月17日 | 小説レビュー
〜紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。
しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。

叔父・項梁の戦死後、反乱軍の全権を握った項羽は、鉅鹿の戦いで章邯将軍の率いる秦の主力軍を破った。
一方、別働隊の劉邦は、そのすきに先んじて関中に入り函谷関を閉ざしてしまう。
これに激怒した項羽は、一気に関中になだれこみ、劉邦を鴻門に呼びつけて殺そうとするが…。
勇猛無比で行く所敵なしの項羽。戦べただがその仁徳で将に恵まれた劉邦。いずれが天下を制するか。

楚漢の天下争いは勝負がつかない。圧倒的な項羽軍の前に、穀倉のある山にのぼってこれと対峙する劉邦軍。
やがて和議成って故郷に帰る項羽軍を劉邦は追撃し垓下に囲む。
ある夜、包囲軍の中から楚の国の歌が湧き上がるのを聞いた項羽は、楚人はことごとく漢に降伏したかと嘆き、天が我を滅ぼしたことを知る。
あらゆる人物の典型を描出しながら、絢爛たる史記の世界を甦らせた歴史大作。「BOOKデータベース」より


まぁ〜、上・中・下巻を完読するのに、かなりの時間を要しました(^_^;)

最後には項羽が敗れ劉邦が漢王朝を打ち立てることはわかっている中で、最後までキッチリ読ませてくれる司馬遼太郎氏の筆力は流石ですね!

現代社会の中でも、様々な組織には、上に立ち統率する人があり、それを支える参謀がおり、先頭を切って走り回る兵卒があり・・・と、それぞれの役割を果たしています。

もちろん、僕もそのような組織の中で生きる一人であるので、作中に出てくる登場人物に自分を例えてみたりして、「ふむふむ、なるほど。上席にモノを言う時には、こういうところに気を付けたらエエのね」と、いろいろ気付かされます。

巻末に、筆者のあとがきと、解説があるのですが、これを読むと、中国の壮大で永い歴史や、中国の人々の文化・思想の変遷などをうかがい知ることが出来ます。

さらに、中国から多分に影響を受け、その後、島国であった為に、独自の民族性を高め、文化を創造していくことが出来た、日本の歴史の源流を知ることが出来ます。

自らの武勇を誇りとし、唯我独尊の項羽と、自らは弱者であり、そのことを自覚している為に、周囲の意見をよく取り入れた劉邦・・・、全く違うタイプの王が、それぞれ覇権をかけて対峙し、幾度も死闘を繰り広げます。

項羽が最期の時を迎えることを覚悟する「垓下(がいか)の戦い」では、有名な四面楚歌や、虞美人が登場し、悲しくも壮絶なクライマックスへと向かいます。

劉邦が天下を取るので、もちろん「勝てば官軍」の理論からいえば、劉邦の立身出世物語で「良かった良かった」となるのですが、僕は三國志でも「曹操」が好きですし、この物語でも「項羽」を応援してしまいました。

いずれしても、歴史好きなら必ず読んで欲しい物語です。

★★★☆3.5です。