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ピンチの時は大声で助けを呼ぼう!『未来』by湊かなえ

2020年01月11日 | 小説レビュー
『未来』by湊かなえ

~ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという…。
『告白』から10年。湊ワールドの集大成!待望の書き下ろし長編ミステリー!「BOOK」データベースより


さて、久しぶりの湊かなえさんの作品です。序盤の「未来の私から手紙が届く」という設定から、少し「いつもの湊かなえらしくないけど大丈夫か?」という不安もよぎりつつ、「この手紙の差出人がどういう展開なってくるのか?」という興味で読み進めました。

図書館で借りてきたので、本に帯はついてなかったのですが、あとからレビューを読むと『湊ワールドの集大成!』という見出しが付いていたようです。

湊かなえさんの作品は、『事件が起こる(自殺や殺人など)⇒関係者が順番に語っていく⇒徐々に真相が明らかになり⇒最後にどんでん返し』というパターンが多いです。

今回のパターンは、主人公の「章子」の日記というか手紙を中心に序盤から中盤まで進んでいきます。そして、その日記に登場する人物が順番に語っていくという展開で、章子に関連する人物たちが、そのときの状況を「こういう風に見ていたんや」、「こういうことやったんやね」と、徐々に真相が明らかになっていく過程で、物語がドンドン加速し、ページを捲る手が止まりません。

そしてクライマックスの父親の独白で全てが明らかになり、「はぁ~・・・。そうやったんやなぁ~」と、何とも言えない気持ちになりました。

『嫌ミスの女王』と言われている湊さんだけに、「これでもか!ほれ!まだまだいくで!」と畳み掛けるように、登場人物たちが「いじめ、児童虐待、性的虐待、無責任な大人、自殺、放火、殺人」という、とんでもない環境で登場人物たちが生きてきたことがわかります。

それだけに、読後感の爽やかさはないですが、ちょっとしたところで助け舟を出してくれる人がいたり、守ってくれる人がいたり、ホワっとなるシーンもありますし、少し強引に物語を終わらせた感はありますが、湊さんが伝えたかったメッセージとしては「とんでもない境遇にあったり、思いも寄らぬ大ピンチに陥った時は、一人で悩まずに、大きな声で助けを呼ぼうよ。きっと誰かが聞きつけて助けに来てくれるからね」という意味が込められていたように感じました。

物語の構成や独特の緊迫感、キャラクター設定などは、相変わらず抜群のセンスで、一気に読ませてくれます。
★★★☆3.5です。