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最低限を超えれば幸せが『ソバニイルヨ』by喜多川泰

2020年01月15日 | 小説レビュー
ソバニイルヨby喜多川泰


~勉強が嫌いで、周囲の目ばかりを気にして日々過ごしている隼人。
さらに、些細な出来事がきっかけで、仲の良かった友達との関係がもつれ、孤立することになってしまった。
ある日、自分の部屋に帰ると、そこには見慣れぬ大きな物体が。
それは、長期間不在になる父親が残していったロボット・ユージだった―。「BOOK」データベースより

筆者の喜多川泰さんという作家さんは、これまで25冊ほど出版されているのですが、なんと!どの本も評価が★★★★4つ以上!ビビるのが★★★★★5つもあるんですよね!その★5つの名作が、この『ソバニイルヨ』です。

この驚異の作家さん『喜多川泰』氏は、
1970年生まれ、愛媛県西条市出身。2005年「賢者の書」でデビュー。
その独自の世界観は読む人の心に温かい明かりを灯すと定評がある。
神奈川県横浜市と大和市で学習塾「聡明舎」を経営。
一講師として教壇に立ち、「勉強」を通して、人生との向き合い方を若者たちに伝えている。
全国で講演活動も行っている。

という方です。

さて、本作ですが、読まなくても内容は大体わかりますよね?

想像すると「少しひねくれた少年のもとに、一体のロボットがやってきて、ぶつかり合いながらも、次第に心を開いていく少年。ロボットとの友情が深まり、力を合わせて困難を克服し、二人の絆を確かめ合ったあたりで、ロボットとの永遠の別れ・・・涙・・・そして、ロボットが残してくれた思いを胸に、少年は大きく羽ばたいていく」

まぁ、あらすじはこんな感じです。少し強引な感じもしますし、エンディングも、もう一ひねり欲しかったと思いますが、あくまでそれは小説としての評価です。

しかし、内容は素晴らしい!そこらの『自己啓発本』より、小説形式になっているので、大変読みやすく、心にスゥーっと染み込んでいきます。

特に心に残ったフレーズがあります。(文中の言葉を要約・改変しますね。)

『時間の使い方は、消費、浪費、投資に分類できる』
 人間は1年生きると、みんな平等に50万分をもらっている。
 時間は貯められないから、その都度使い切っていくしかない。
 そして、その使い方は、「消費」・「浪費」・「投資」に分類できる。
 自分の欲求を優先させると、「消費」と「浪費」ですべて費やしてしまう。
 それでは将来得られるものが無くなってしまうから、「投資」の時間をしっかり持つことが大事。
 「投資が大事だ」とわかったときに、だからどうすると考えるか。
 勉強しないと将来困るということかというと、そういうことではない。 
 投資をしないと、将来得られるものが無くなってしまうということ。
 『勉強』=『投資』ではない。
 世の中のほとんどの人が小中高と十二年間も朝から夕方まで学校に通って『勉強』する。
 勉強している時間がすべて投資になるのなら、ほとんどの人が、将来手にするものが素晴らしいものになる。
 しかし、みんな同じ時間だけ『勉強』したにもかかわらず、将来手にするものがまったく違う。
 つまり勉強をしていたその時間が、浪費になっていた人もいれば、投資になっていた人もいるということ。
 だから同じ勉強(仕事)をするなら、『投資』になるようなやり方をした方がいい。

『最低限を超えないと損』
 やらなければいけない(勉強、仕事、練習の)最低限を超えたとき、
 必ず、それをしなければ得られない楽しさがある。
 必要最低限を超えているときが投資の時間になっていることは間違いなく、
 そんな時間は気分がいいはず。
 誰かに「やりなさい」と強制された訳ではなく、
 言われる前に自分の意志で勉強(仕事)をしているのだ。
 その違いは驚くほどほど大きい。

『周りに期待ばかりしない』
 今日一日、誰かに頼らないで、いい一日にすると决める。
 自分の一日の幸せは、誰かに頼って作り出すものではなく、
 自分で作り出すものだということを知ること。
 周りに対して無意識のうちに、自分に対して『こうして欲しい』と期待している。
 周りの人々が、自分の望み通りの行動をとってくれて初めて、
 いい一日になるってコトは、自分の一日が、いい一日になるかならないかが、
 自分の働きかけではなく、周囲の人によって決まっている。
 だから最初から期待しないこと。勝手に期待しても、その期待とは無関係に他人は動く。
 期待しなければ裏切られないし、失望もイライラもなくなる。

上記のような内容が、主人公とロボットの会話の中で交わされます。それがスッと入ってくるんですね。
毎日の時間の使い方や、周囲との関係性、自分の心がけなど、いろいろと考えさせられました。

2時間もあれば十分に読みきれますし、リアルの中学生、そして高校生、大学生には、必ず読んでもらいたい作品です。とは言いながら、40代後半の私が読んでも「この言葉は胸に刻んで日々を過ごしたいね」と思うフレーズが沢山出てきます。

タメになって、心が穏やかになり、周りに対して優しくなれる物語ですが、涙がこぼれるというところまではいきません。
★★★☆3.5です。